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第一部 終章 あなたの隣で。
ep4
しおりを挟むそれから数ヶ月後。スーヴィエラはここ一ヶ月ほど待ち遠しく思っていた結婚式の当日を迎えていた。
リアラが気合いを入れてスーヴィエラのマッサージを行い、スーヴィエラはピカピカに磨き上げられていた。
そしてウェディングドレスに着替え、髪も綺麗に整えてシリウスが待つ式場に足を踏み入れる。
シリウスが黒いタキシードを纏って先に待っていた。
彼の綺麗に整えた銀髪がいつも以上にセクシーで、スーヴィエラの鼓動が跳ね上がる。
優雅に微笑んだシリウスと、彼の家族である女王メロウ、そしてその妹である(と、顔写真だけ見せてもらって知っている)サラ夫妻、そしてメロウの子供たちとその伴侶たち、そして使用人たちの見つめる中をスーヴィエラはリアラのエスコートで歩いた。
さすがに男性恐怖症気味なスーヴィエラのエスコートはシリウスが出来ないため、仕方がなく男装をしたリアラが胸を張って堂々とエスコートする。
リアラの方がなぜか目立っている気がしたが、シリウスの視線はちゃんとスーヴィエラだけを見ていてくれるので、彼女はジワリとほおが熱を帯びるのを感じていた。
シリウスの横にたどり着くと、スーヴィエラはシリウスと目を合わせ、ベール越しに彼の薄氷色の瞳を見つめる。
スーヴィエラの大好きなその瞳は彼女を愛おしそうに見つめ、視線に熱がこもる。
甘い雰囲気を醸し出している二人に司祭がコホンと咳払いした。
二人は慌てて前を向いたが、厳粛な雰囲気に戻っても、スーヴィエラもシリウスも、口の端が緩んでいた。
「新郎、シリウス・ローティクト・ルルカディア。汝は新婦スーヴィエラをただ一人の伴侶として愛すると誓うか?」
司祭の問い掛けにシリウスはハッキリと答えた。
「誓います」
「よろしい。次いで、新婦、スーヴィエラ・ルクファード。汝は新郎シリウス・ローティクト・ルルカディアをただ一人の伴侶として愛すると誓うか?」
スーヴィエラもハッキリと答えた。
「誓います」
司祭が大きく頷いた。
「それではこれをもって、この結婚は女神の認めた契りであると承認する。神のご加護のあらんことを!」
司祭の体が倍以上に膨らみ、風船のように膨らんで空中に浮かんだ。
そして、次の瞬間、その体が弾けてブワッと雪のように冷たい薔薇の花が舞い踊る。
ふと、先ほどの司祭が指輪の乗ったトレーを持って下手側からやってきた。
シリウスが小さく微笑む。
「クロニカの仕業か…」
小声で呟いたシリウスに、司祭が頷いて小声で返す。
「お嬢様から精一杯の祝福です。お受け取りください」
「もちろん」
シリウスが司祭のトレーから自分側にある小さめの指輪を手に取ると、スーヴィエラの手を取った。
「愛しているよ、スー」
シリウスがそう囁いてスーヴィエラの薬指に指輪を嵌めた。
婚約指輪よりもずっと質素なデザインだったが、スーヴィエラは燃えるようなアクアマリンの輝きを見ながら、その指輪が好きになっていた。
スーヴィエラはそっと囁き返す。
「シリウス様みたいです」
「もう、君は俺の女だ…ってこと」
悪戯っぼく笑って呟いたシリウスにスーヴィエラは、ほおの火照りを感じながら残った指輪を手に取り、シリウスの手を取る。
「大好きです」
侍女長に頼んでオーダーして貰った指輪は、スーヴィエラのアップルグリーンの瞳と同じエメラルドが輝く指輪だ。こちらもシンプルだが、天使のような翼で抱かれた宝石というデザインはスーヴィエラの天龍を参考にして、シリウスにつけて欲しいと願いながらオーダーした。
その指輪を嵌めると、シリウスが滅多にスーヴィエラの前で浮かべたことのない、嬉しさでほおを上気させた顔をした。
「あぁ…スー…」
シリウスが甘い笑みを浮かべる。
スーヴィエラのベールがゆっくりとあげられ、鐘の音が鳴り響く中、二人は見つめ合い、微笑み合いながらどちらともなく唇を重ねた。
どこからか聞いたこともない澄んだ声が響き渡る。
『青と、我が末裔に祝福を! 末永き幸せを!』
そして、クロニカの霜雪が生み出したのとは違う天使のような羽がゆっくりと二人を祝福するようにユラユラ降り注ぐ中で、二人は幸せそうに顔を綻ばせた。
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