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第一章:朝、目が覚めたらお姫様一行の保護者になっていた俺。
第1話「俺、空の青さなら知っている」
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よう、俺はぬいぐるみのレオ。
もともとは人間なんだが、どういうわけか、朝、目が覚めたらぬいぐるみになっちまってたんだ。
それだけでも意味わかんねえっていうのに。
幼馴染がどこかのガキと勝手に俺の家で暮らしているわ、なぜか大して親しくなかった幼馴染が俺の嫁さんだったり、そいつのガキは俺のガキだったり、ますます状況は理解できないほうに進んでいった。
あげくの果てに、本当の俺だかもう一人の僕だかが、訳知り顔でくっちゃべったような内容の本を読ませられる始末。
しかも、家にいたら死ぬとかわけのわからない戯れ言を真に受けたアメリアのせいで、訳の分からない町に連れて来られた。
見てくれよ、あっちにいるのは冒険者。
そっちにいるのは冒険者。
冒険者だらけだ。
つまり、ケツの青くさいガキどもや、むさくるしいおっさんだらけってわけだ。
遠くの方に、女っ気のない冒険者狙いの夜の店がちらちら見えるが、昼間に行っても女なんか一人もいないだろう。
それに、金食い虫の女と遊べるだけの金は持ってねえし。
あーあ、どうせなら温泉街とかにすればいいのに……ホント、分かってねえよな。
まあ、アメリアのやつ顔だけはいいし、なんか随分と積極的になってることもあって俺も楽しませてもらってるから別に文句はねえけど……
……
…………
なんか違くね?
いや、まぁさっきも言ったようにアメリアは性格はともかく、顔だけは最高。
あのガキも、俺のガキだっていうんだったら、一緒に暮らすのはべつに構わない。
むしろ、放っておくほうがどうかしてる。
だけどな?
寝ている時は、寝相の悪いアメリアの身体に押しつぶされ、起きてる時は、ガキに連れまわされるうえに、時々よだれをかけられる。
寝る前のお楽しみだって、ぬいぐるみの身体じゃできることなんてないも同然。
え、俺って今……すっげえダサくね?
それにだ、こうやって一人でぶらぶら歩いてても、女どころか、男さえよって来ねえ。
まあ、出歩くたびに何かしら因縁付けられるのにはうんざりしてたから、男は別にいい。
だけど以前の俺なら、ちょっと町を歩くだけで若い女たちが放っておか……
「ねぇ、そこのあなた?
結構いい身体してるじゃない……ウチ、来る?」
お?
なんだよ、やっぱりでちゃう?
出ちゃってますか、俺の魅力……そう、フェロモンってやつが?
仕方ねえなぁ、あんまり気分じゃないし、アメリア程可愛くないけど、少しくらいなら付き合って…………へぷんっ!!!
「あ、ごめんなさい!
足をふんじゃったみたい!?
……って、何よこれ。
邪魔よっ!!!」
うぁぁぁあぁああああああ!!!!!
俺――飛んでる。
周りの物なんて何も見えない、目の前に広がるのは自由な空だけ。
ははっ、なんだこれ。
くるっと体をひねって下を見てみると、俺を蹴り飛ばした女が、ブサイクな男と安宿に入っていくのが見える。
もう一度くるっと体をひねる。
ああ、いい天気だな。
都会の喧騒を離れ、俺は今……自由になった。
そうか、俺が本当に欲しかったものはこれだったんだ。
今までの俺は何て浅はかだったんだろう。
あんなブサ男好きの女に引っかかりそうになるだなんて……ホント俺ってお馬鹿さん。
大丈夫。
たとえ、あんな女に邪魔だとかなんだとか言われても、俺は俺だ。
そうだ、俺は俺らしく生きればいい。
邪魔なぬいぐるみの俺、ぐっぱい。
邪魔じゃない人間の俺、おかえり。
俺は今、イケイケだったころの俺を、取り戻したんだ!
「ピタッ!」
……ピタッ?
なんだよ、せっかく気持ちよく浸ってたのに……って、うわぁぁぁああああぁあぁぁあああああ!!?!?!?!?!?
落ちてる!
俺、落ちちゃってるぅぅぅううううう!!!!
ぬいぐるみならともかく、生身でこの高さは間違いなく死ぬ!
だってこの町で一番高そうだった時計台が、こーんなちっちゃく見えるんだぞ!?
やばいやばいっ、どうする!?
どうすればいい……って、時計台がもう目の前に!?
ほぅ……でけえな、おい。
じゃねえよっ!
くそっ、せめて他のやつにぶつからない様に……って、くそっ、ちょうど真下に人がいるじゃねえか!?
俺一人ならともかく、無関係のやつをまきこんじまうなんて俺のプライドにかけて絶対にできねぇ。
「んなくそぉぉおぉぉぉおおおおおおおお!!!!
お前ぇええええっ、そこをどきやがれぇっ!!!
そこは俺の棺桶にするって、今きめたんだよぉぉぉぉぉぉおおおおおおおんんんあんぁああががあがあああああぁ!!!!!!」
俺は必死に体をよじり、下にいる奴らを巻き込まねえように、全力で落下地点をずらそうとする。
しかし、そいつらはこっちに気づいている感じなのに、何故か慌てた様子がない。
くそっ、最近のガキはこれだから。
危険ってものがまるでわかってねぇ。
この間もそうだった、歩きながら目薬さしてるやつがいた。
いや、目を大事にしたいのか、デスゲームしたいのかどっちなんだよ。
まぁ、巻き込んじまう側の俺が言えた義理じゃねえが、っと……うらぁ!!!!
渾身の力を籠めると、何とかちょびっとだけ落下点をずらせた。
ふぅ……なんとかこれで大丈夫そうだな。
運が良ければ生きてるだろ。
俺って運だけはいいしな。
まぁ、骨の2,3本はくれてやる。
さて、じゃあ……おやすみ。
「なんで空からぬいぐるみが?
ええと……よいしょっ!」
ぽふんっ!!!
……
…………
………………へ?
「やりました!
ぬいぐるみさん、大丈夫でしたか?」
もともとは人間なんだが、どういうわけか、朝、目が覚めたらぬいぐるみになっちまってたんだ。
それだけでも意味わかんねえっていうのに。
幼馴染がどこかのガキと勝手に俺の家で暮らしているわ、なぜか大して親しくなかった幼馴染が俺の嫁さんだったり、そいつのガキは俺のガキだったり、ますます状況は理解できないほうに進んでいった。
あげくの果てに、本当の俺だかもう一人の僕だかが、訳知り顔でくっちゃべったような内容の本を読ませられる始末。
しかも、家にいたら死ぬとかわけのわからない戯れ言を真に受けたアメリアのせいで、訳の分からない町に連れて来られた。
見てくれよ、あっちにいるのは冒険者。
そっちにいるのは冒険者。
冒険者だらけだ。
つまり、ケツの青くさいガキどもや、むさくるしいおっさんだらけってわけだ。
遠くの方に、女っ気のない冒険者狙いの夜の店がちらちら見えるが、昼間に行っても女なんか一人もいないだろう。
それに、金食い虫の女と遊べるだけの金は持ってねえし。
あーあ、どうせなら温泉街とかにすればいいのに……ホント、分かってねえよな。
まあ、アメリアのやつ顔だけはいいし、なんか随分と積極的になってることもあって俺も楽しませてもらってるから別に文句はねえけど……
……
…………
なんか違くね?
いや、まぁさっきも言ったようにアメリアは性格はともかく、顔だけは最高。
あのガキも、俺のガキだっていうんだったら、一緒に暮らすのはべつに構わない。
むしろ、放っておくほうがどうかしてる。
だけどな?
寝ている時は、寝相の悪いアメリアの身体に押しつぶされ、起きてる時は、ガキに連れまわされるうえに、時々よだれをかけられる。
寝る前のお楽しみだって、ぬいぐるみの身体じゃできることなんてないも同然。
え、俺って今……すっげえダサくね?
それにだ、こうやって一人でぶらぶら歩いてても、女どころか、男さえよって来ねえ。
まあ、出歩くたびに何かしら因縁付けられるのにはうんざりしてたから、男は別にいい。
だけど以前の俺なら、ちょっと町を歩くだけで若い女たちが放っておか……
「ねぇ、そこのあなた?
結構いい身体してるじゃない……ウチ、来る?」
お?
なんだよ、やっぱりでちゃう?
出ちゃってますか、俺の魅力……そう、フェロモンってやつが?
仕方ねえなぁ、あんまり気分じゃないし、アメリア程可愛くないけど、少しくらいなら付き合って…………へぷんっ!!!
「あ、ごめんなさい!
足をふんじゃったみたい!?
……って、何よこれ。
邪魔よっ!!!」
うぁぁぁあぁああああああ!!!!!
俺――飛んでる。
周りの物なんて何も見えない、目の前に広がるのは自由な空だけ。
ははっ、なんだこれ。
くるっと体をひねって下を見てみると、俺を蹴り飛ばした女が、ブサイクな男と安宿に入っていくのが見える。
もう一度くるっと体をひねる。
ああ、いい天気だな。
都会の喧騒を離れ、俺は今……自由になった。
そうか、俺が本当に欲しかったものはこれだったんだ。
今までの俺は何て浅はかだったんだろう。
あんなブサ男好きの女に引っかかりそうになるだなんて……ホント俺ってお馬鹿さん。
大丈夫。
たとえ、あんな女に邪魔だとかなんだとか言われても、俺は俺だ。
そうだ、俺は俺らしく生きればいい。
邪魔なぬいぐるみの俺、ぐっぱい。
邪魔じゃない人間の俺、おかえり。
俺は今、イケイケだったころの俺を、取り戻したんだ!
「ピタッ!」
……ピタッ?
なんだよ、せっかく気持ちよく浸ってたのに……って、うわぁぁぁああああぁあぁぁあああああ!!?!?!?!?!?
落ちてる!
俺、落ちちゃってるぅぅぅううううう!!!!
ぬいぐるみならともかく、生身でこの高さは間違いなく死ぬ!
だってこの町で一番高そうだった時計台が、こーんなちっちゃく見えるんだぞ!?
やばいやばいっ、どうする!?
どうすればいい……って、時計台がもう目の前に!?
ほぅ……でけえな、おい。
じゃねえよっ!
くそっ、せめて他のやつにぶつからない様に……って、くそっ、ちょうど真下に人がいるじゃねえか!?
俺一人ならともかく、無関係のやつをまきこんじまうなんて俺のプライドにかけて絶対にできねぇ。
「んなくそぉぉおぉぉぉおおおおおおおお!!!!
お前ぇええええっ、そこをどきやがれぇっ!!!
そこは俺の棺桶にするって、今きめたんだよぉぉぉぉぉぉおおおおおおおんんんあんぁああががあがあああああぁ!!!!!!」
俺は必死に体をよじり、下にいる奴らを巻き込まねえように、全力で落下地点をずらそうとする。
しかし、そいつらはこっちに気づいている感じなのに、何故か慌てた様子がない。
くそっ、最近のガキはこれだから。
危険ってものがまるでわかってねぇ。
この間もそうだった、歩きながら目薬さしてるやつがいた。
いや、目を大事にしたいのか、デスゲームしたいのかどっちなんだよ。
まぁ、巻き込んじまう側の俺が言えた義理じゃねえが、っと……うらぁ!!!!
渾身の力を籠めると、何とかちょびっとだけ落下点をずらせた。
ふぅ……なんとかこれで大丈夫そうだな。
運が良ければ生きてるだろ。
俺って運だけはいいしな。
まぁ、骨の2,3本はくれてやる。
さて、じゃあ……おやすみ。
「なんで空からぬいぐるみが?
ええと……よいしょっ!」
ぽふんっ!!!
……
…………
………………へ?
「やりました!
ぬいぐるみさん、大丈夫でしたか?」
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