上 下
148 / 185

第五十三話 「ウルフ一郎さんの里帰り」

しおりを挟む
はぁ~。ジェラード、おいしかったなぁ~。
ぶどう味のジェラード、また食べた~い。
 
「はいっ、真莉亜ちゃん、これ!」
 
ウルフ一郎さんが私の前に出したのは、なんと、ジェラード食べ放題のチケット6枚!
 
「いいんですか、これ!」
 
「いいよ~♡君が食べたいと言うなら、いつでもあげるよ~ん♡」
 
何枚持ってるの、それ。
 
「へ―。食べ放題かぁ。」
 
「また食べたいですねっ。」
 
ジュンブライトとギロさんが、食べ放題のチケットをぱっと取った。
 
「て、てめぇら!」
 
「お母さん、あたしにもちょうだい!」
 
「あぁ!だめだよ!」
 
「この、クソガキィ~!」
 
「私も一枚、もらおうかしら。」
 
「あぁ!俺様があげた、チケットが・・・・・・。」
 
「チケットも―らいっ。」
 
クリスさんが、チケットをぱっと取った。
あーあ。チケット、たったの一枚だけになっちゃった・・・・・・。
 
「大丈夫だよ~ん♡まだまだあるから、好きなだけ、取っていいよ~ん♡」
 
ごめんなさい。一枚で充分なので。
 
「ガーン。」
 
ウルフ一郎さんは、腰をぬかして、地面に両手を置いて、がくっと落ちこんだ。
 
「さぁ、早く行こうぜ。モタモタしてると、日が暮れっちまう。」
 
「ウルフ一郎、案内してよ。」
 
すると、ウルフ一郎さんが、スッと立ち上がった。
 
「あぁ!案内するぜ!」
 
ウルフ一郎さんは、ニッと笑った。
私達は、ウルフ一郎さんの実家に向かった。
 
「ねぇ、まだぁ?」
 
「まだだ。」
 
「まだ着かないのぉ~?」
 
「まだって言ってんだろ―が。」
 
「きっつ~い。じいや、茶。」
 
「すみません。もう、これだけしかありません。」
 
「ぬわんだとぉ~!?茶、茶、茶!今すぐ出せ!」
 
ジュンブライト、わがまま言わないの。
 
「しりとり!り!」
 
「リリア。」
 
「なんで最初に私が?」
 
「つーいーたかっ!」
 
「まだっつってんだろ!」
 
「よし、着いたことにしよう!」
 
「だめ!」
 
「よし、着いたことにしよう!」
 
「だめ!」
 
「よし、もう少しで着くぞぉ。」
 
はぁ、はぁ。ようやく、着くんですね。
 
「お前んち、けっこう遠いんだな。」
 
「あったりめぇだぁ!こっから30分かかる。」
 
「本当ですねぇ。30分、かかってます。」
 
ルクトさんが、腕時計を見た。
そして、ウルフ一郎さんが立ち止まった。
 
「ここが、俺様の実家だ。お前ら、「じぇ!」とか、言うなよ。」
 
「わかった。「じぇ!」っとは言わねぇ・・・・・・え?」
 
どうしたの?急にかたまって。
 
「あ、あれを見ろ!」
 
ん?
私達が、ジュンブライトが指をさした方を見ると・・・・・・。
 
「じぇ!じぇ!じぇ!じぇ!じぇ!?」
 
「なんですか、こりゃあ―!」
 
和風のお屋敷で、お庭は広くて、大きな池があって、その池の中には、鯉が6匹いて、盆栽があって、大きな木があって、そして、蹲がある、とても大きな家!
 
「あはっ、まちがったかなぁ~?アハハハハハ。」
 
「ちょっとまったぁ!」
 
ウルフ一郎さんが、帰ろうとしているジュンブライトを引き止めた。
 
「な、なんだよぉ。」
 
「ここが、俺様の家だぁ!」
 
「そ、想像したより、ちがうし。」
 
「どんな想像、したんだよ。」
 
「オンボロ。」
 
「ビンボー。」
 
「ってめぇらぁ!」
 
ウルフ一郎さんは、二人のコメカミを、ぐりぐりし始めた。
 
「俺様の家に謝れ!」
 
「はい、すみません。」
 
ウルフ一郎さん、そのくらいでいいじゃないですか?
二人とも、とても謝ってるし。
 
「そうだねぇ~♡よ―し、ゆるしてやろ~う♡」
 
ゆるすの早っ。
 
「ところで、大きな家ねぇ。東京ドームの4個分もあるわ~。」
 
「アハハハハ。俺様が10歳の時、ビフォーアフターしたんだよ。ま、10万円かかったけど。」
 
10万も!?
 
「しかもビフォーアフター、しただとよ!」
 
「すごいですぅ~!」
 
あの二人、それくらいで目をキラキラさせちゃって。
 
「ビフォーアフター!ビフォーアフター!ビフォーアフター!ビフォーアフター!」
 
あらら。肩まで組んだよぉ。
そこまで喜ぶ必要、あるのか?
 
「うちには家政婦が7人いる。」
 
「か、家政婦さんもいるんですか!?」
 
「あぁ。掃除とか、皿洗いとか、なんでもしてくれている。料理は、俺様がしていたんだ。」
 
へぇー。
 
「な、なんという、俺んちに負けない、大金持ちなんだ。」
 
「王子の家では、メイドが76人いますからねぇ。」
 
多っ!
 
「さぁ、中に入ろう。」
 
私達は、ドアのところまで行った。
ピンポーン。
 
「母ちゃ―ん、俺様、帰って来たぞぉ~。」
 
ガラッ。
引き戸を勢い良く開けたのは、ウルフ次郎さんと、ウルフ三郎さんだった。
 
「兄貴!」
 
「よぉ、元気にしてたか?」
 
「はいっ!」
 
3兄弟、感動の再会です。
 
「お―い、母ちゃ―ん!ウルフ一郎兄貴が、帰って来たよぉ。」
 
黒い人影が、だんだん、こっちへ向かって来るのが見えた。
黒いオオカミさんで、おだんごヘアで、菊の着物を着ていて、真っ赤な口紅をたっぷりつけていて、ウルフ一郎さんと同じ、夜行性の目で、ちょっとこわそうな感じで、しわが生えていて、ちょっと失礼だけど、体格が太めの女の人。
この人が、ウルフ一郎さんのお母さん!?
 
「ん?なんだい。あんただけかと思ったよ。」
 
「あっ、こいつらはな、人間界に一緒に住んでいるやつらだよ!」
 
ど、どうもぉ~。春間真莉亜でーす。
 
「ん?」
 
ひぃぃぃぃぃぃ!に、にらまれたよぉ~!
 
「真莉亜ちゃん、大丈夫だよ。俺様の母ちゃん、見た目はこわいけど、中身は優しいんだよ。」
 
「見た目はこわい?」
 
ひぃぃぃぃぃ!やっぱり無理ですぅ~!
私はジュンブライトの背後に隠れた。
 
「ったく、お前、人は見た目で決めるもんじゃねぇ―って、母ちゃんから言われたろ?」
 
「こいつはジュンブライト。ヴァンパイア界の王子さ。ま、自分勝手でわがままで、超~ウゼーけどな、ガハハハハハハ!」
 
ボカッ!
 
「失礼だな、クソヤロー!」
 
「す、すみませ~ん。」
 
ウルフ一郎さんの頭の上には、大きなたんこぶがついている。
 
「で、こいつはバカ王子のしつじ、ルクト。こいつのつくる紅茶、すっごくおいしいんだぞぉ~。」
 
「どうも、初めまして。ルクトです。」
 
ルクトさんは、ウルフ一郎さんのお母さんの方に向かって、お辞儀をした。
 
「あら。よろしくね。あたしはウル代だよ。」
 
「で、こいつはマドレーヌ。ヴァンパイア界の王女で、バカ王子のいとこ。超能力ヴァンパイアなんだ。」
 
「よろしくお願いしまーす!マドレーヌですぅ~!」
 
「あら、かわいいねぇ。あめちゃんあげよう!」
 
ウル代さんは、マドレーヌちゃんにあめをあげた。
 
「アハッ、ありがとうございますぅ!」
 
マドレーヌちゃんは笑顔でお礼を言って、あめを取った。
 
「へぇ―。おめぇの母ちゃん、優しいんだなぁ。」
 
「あぁ。俺様の母ちゃんは、子供を見ると、あめをやるんだよ。」
 
「うわ、めんどくさっ。」
 
「さぁ、あんた達も、どうだい?」
 
「うわーい!ちょうだいちょうだい!」
 
子供達は、ウルフ一郎さんのところに走って行った。
 
「あめちゃん、何個持ってんだよ。」
 
「続いてはリリア。マドレーヌのしつじなんだ。」
 
「よろしく。」
 
「こいつはヴァンパイアキャットなんだ。」
 
「ヴァ、ヴァンパイアキャット!?」
 
お母さんも、猫が苦手なんですね。
 
「親子だもの。」
 
「次は久瀬紅葉。」
 
「よろしく。紅葉よ。」
 
「続いて、クリス。」
 
「ヤッホー!よろしく~!」
 
「こいつは猫娘なんだ。」
 
「ね、猫~!?」
 
あぁ。またウル代さん、おびえちゃって。
 
「続いて、アキとソラ。」
 
「ど―もぉ、アキで~す。」
 
「こ、こ、こ、こ、こ・・・・・・。」
 
ソラちゃん、がんばれ~!
 
「やっぱ無理~!」
 
あらら。ソラちゃんはウルフ一郎さんの背後に隠れちゃった。
 
「あ、こいつはソラだ。」
 
「へぇ―。かわいいねぇ~。どら、あめちゃんやろうか。」
 
「こいつら、もうあめちゃん、持ってるよ。」
 
「ところで、どっちが姉ちゃんで、どっちが妹なんだい?」
 
「ピンク色の髪の色がアキで、水色の方がソラ。」
 
「へぇ―。」
 
「で、こいつらはクリスの双子の妹で、猫娘なんだ。」
 
「ま、また猫かいっ!」
 
「続いて、ギロ。」
 
「よろしくお願いしますっ!ギロッス!」
 
ギロさん、ウルフ次郎さんと握手してる―っ!
 
「てめぇ!俺様は母ちゃんじゃねぇ―!」
 
「え・・・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁ!すみませんでした―っ!」
 
ギロさんは、あわててウルフ次郎さんの方に向かって、お辞儀をした。
 
「ギロはこー見えて、天然だけど、実は医者なんだ。で、ヴァンパイアキャット。」
 
「あんたの周り、猫が多いねぇ!」
 
「続いて、テレサ。」
 
「よろしく。」
 
「テレサは俺様達のお姉ちゃん的存在なんだ。」
 
「おねっ・・・・・・お姉ちゃん的存在だなんて、そんなの、ほめすぎるよぉ~。」
 
テレサさん、照れちゃって。
 
「続いて、道華。」
 
「よろしくー。」
 
「道華は真莉亜ちゃんと天パヤローの未来の子供なんだ。」
 
「えぇ!?未来の子供!?あんたの周りには、すごいやつがいっぱいいるねぇ~。」
 
「最後はネル。」
 
「よろしく。」
 
「ネル!?あの、桜吹雪の・・・・・・。」
 
「ネル様ぁ!?」
 
えっ!?
 
「ネル様ぁ!?」
 
「ああん?」
 
ウルフ三郎さんは、ネルさんの方に向かって走り、ネルさんの両手をぎゅっとにぎった。
えっ?えっ?どうなってんの、これ。
そして、ウルフ三郎さんは、真剣な顔で、ネルさんの顔を見た。
 
「俺様、あんたのファンなんですっ!」
 
「えぇ~!?」
 
「はぁ!?」
 
「おい!ウルフ三郎!そんなの、初耳だぞ!」
 
「すみませんっ、ウルフ一郎兄貴!ず―っと、秘密にしていたんです・・・・・・。俺様、あんたのファンクラブに入っていて、熱狂的なファンなんですっ!ポスターに、フィギィア、あんたのボイス付き目覚まし時計を持っていますっ!さらに、クッションまで持っていて、あんたのグッズをぜ~んぶ、部屋にかざっていますっ!」
 
「あ―!だから、お前の部屋に入ったらだめって、言ってたんだな。」
 
さすがはウルフ三郎さん、どこまでネルさんのことが好きなのやら。
すると、リリアさんが、ネルさんの肩をポンっとたたいた。
 
「よかったわね。熱狂的なファンがいて。」
 
「よ、よくない!」
 
ネルさんは、顔を真っ赤にした。
 
「照れてるネル様も、ステキだぁ~♡」
 
「き、気持ち悪い・・・・・・。」
 
「さ、早く家の中へお入り。ず~っと外にいると、かぜひくよ。」
 
ウル代さん、やっぱ優し~い。
 

                                ☆
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

処理中です...