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第五十一話 「ウルフ一郎さんとサングラスの秘密」

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う、う~ん。あれっ?ここはどこだ?
誰もいねぇ、工場みてぇだけど・・・・・・ん!?
か、体が動かねぇ!
一体、どうなってんだ!?
俺様が体を動かそうとしても体は全く、動かない。
う~ん、う~ん!だめだ、ビクともしない。
ん!?体を縄で縛られている!
そうか!こいつのせいで、体が全く、動かないんだ!
早くしねぇと、みんながまってる!
俺様は、縄をほどこうとした。
 
「やぁ坊や、逃げる気かい?」
 
!?
あの、きつねのおっさんは・・・・・・。
 
「さっきのおっさん!」
 
一体、何したんだ!
 
「なにって、君をゆうかいしたのさ。」
 
おっさんは、ニヤッと笑った。
家族のところへ返せ!
俺様が大きな声でさけぶと、おっさんは、俺様の方へ歩き始め、俺様のおでこに、銃を当てた。
!?
 
「だまってねぇと、殺すぞ。」
 
と、こわい顔で、俺様を見つめた。
誰か、助けに来てくれ!
と、そう思った、その時!
ブォーン、ブォーン!
ん!?あのバイクの音は!
 
「なんだなんだ?」
 
おっさんが、俺様のおでこに銃を当てるのをやめ、外の方をくるりと振り向いた。
ブォーン、ブォーン!
だんだん、近づいて来る。
 
「ええい!誰だ!クソバイクに乗っているのはぁ!」
 
おっさんがそう、大きな声で言うと、一台のバイクが入って来た。
あ、あれは!
 
「父ちゃん!」
 
う、うそだろ?父ちゃんが、助けに来るなんて・・・・・・。
 
「父ちゃん、危ない!やつは銃を持っている!」
 
ブォーン、ブォーン!
 
「ちっ、クソガキの親父が現れたかぁ。」
 
バイクはだんだん、おっさんとの距離を、縮んでゆく。
ブォーン、ブォーン!
 
「父ちゃーん!」
 
ドッ!
 
「うわぁ!」
 
おっさんがバイクにはねられて、その場でばたりとたおれ、そのまま気絶した。
そして、バイクは俺様の前でとまり、父ちゃんはヘルメットを外し、バイクに降り、俺様のところへ駆けつけた。
 
「父ちゃん!」
 
「ウルフ一郎!大丈夫か!?」
 
あぁ。大丈夫だ。
 
「今、縄をほどいてやるからな!」
 
父ちゃんが、ポケットの中から、ライターを取り出し、カチッとライターを押して、火を縄に付けた。
あ、あちっ・・・・・・。
 
「がまんしろ。」
 
う、うん。
そして、縄がほどいた。
うわぁ~。父ちゃん、ありがと―う!
俺様は、父ちゃんにだきついた。
 
「えへへへへ。どういたしまして。」
 
やっぱ父ちゃんは、俺様の世界一の父ちゃんだぁ!
 
「えへへへへ。そう言われると、照れるなぁ~。」
 
アハハハハ!
 
「さぁ、早く家に帰ろう。今日の晩飯は、みんなが大好きな、メンチカツだ・・・・・・。」
 
バァァァァァァン!
!?
父ちゃんは、そのまま後ろから、ゆっくりたおれた。
 
「父ちゃ―ん!」
 
俺様は、父ちゃんのところへ駆けつけた。
ピーポー、ピーポー。
パトカーの音が、遠くから聞こえてきた。
 
「や、やべ!」
 
おっさんは、工場の裏口から出て行った。
 
「父ちゃん、大丈夫か!?」
 
「あ、あぁ。大丈夫だ。」
 
胸から血が出ている・・・・・・。
 
「はぁ、はぁ。もう、終わりだな、俺は。」
 
バカなこと、言わないでよ!
俺様の目から、涙が出てきた。
 
「人はいずれ、死ぬ時もあるんだ。ウルフ一郎。」
 
父ちゃんは人間じゃねぇだろ!
なぁ、死なないでくれよぉ、父ちゃん!
 
「はぁ、はぁ。ウルフ一郎の花婿姿、見たかったなぁ。」
 
父ちゃん!バカなこと、言わないでくれよぉ!
 
「ウルフ一郎・・・・・・。」
 
父ちゃんは、俺様のほっぺを、左手でさわって、にこっとほほえんだ。
 
「母ちゃんとウルフ次郎とウルフ三郎のこと、よろしく頼むぞ・・・・・・。」
 
父ちゃんはそう言って、目をゆっくり閉じ、左手をゆっくり下ろした。
う・・・・・・うそだろ?俺様の父ちゃんが死ぬなんて・・・・・・。
あの父ちゃんが、ポックリ、逝っちまうなんて・・・・・・。
ポタポタポタポタ。
俺様の涙の雨が、床にたくさん落ちてゆく。
ゔ・・・・・・ゔ・・・・・・!
 
「父ちゃ―ん!」
 
俺様は、大きく泣きさけんだ。
俺様、本気で泣いたの、初めてだ・・・・・・。
目の前で、大切な人が死ぬなんて・・・・・・。
 
 

 
 
父ちゃんが亡くなって3日後。
俺様は、父ちゃんの遺影の前に立った。
遺影の横には、父ちゃんがかけていた、黒いサングラスがあった。
・・・・・・父ちゃん、俺様、決めたよ。
父ちゃんの分まで生きる。父ちゃんみてぇな男になるって。
だから、天国で見守ってくれよな。
俺様は、黒いサングラスをかけた。
新生・俺様の誕生だぁ!
 
 
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