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第五十一話 「ウルフ一郎さんとサングラスの秘密」

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こんにちは、春間真莉亜です。
今日も満月荘に、おじゃまします。
ガチャッ。
 
「おじゃましま―す。」
 
すると、黒い天パの男の人が、飛び出して来た。
 
「真莉亜、道華!」
 
どうしたの、ジュンブライト。そんなにあわてて。
 
「ウルフ一郎のサングラス、知らないか!?」
 
ウルフ一郎さんのサングラスぅ~?知らないよ、そんなもん。
 
「ひょっとして、なくしたの!?」
 
「・・・・・・あぁ。」
 
「え~!?」
 
「真莉亜ちゅわ~ん!」
 
うわっ!なんか、飛び出して来た!
 
「ウルフ一郎さん!」
 
「俺様のサングラス、知らな~い?」
 
し、知らないよぉ~。それに、離れてください。苦しいですから。
 
「あ、ごめん。」
 
ウルフ一郎さんは、私から離れた。
ボコ―ン!
 
「こうら!俺の真莉亜に、気安くだきつくなっ!」
 
「は、はい。すみませ~ん。」
 
ウルフ一郎さんの頭の上には、たんこぶがついている。
 
「ジュンブライト!ウルフ一郎さんをなぐったらだめ!」
 
「そ、そんなぁ~。お前、いつからそいつの味方になったんだよぉ~!」
 
いやいや、そ―ゆ―意味ではないって。
 
「ところで、いつなくしたんですか、サングラス。」
 
「さっきだ!俺様、昼寝をして、目が覚めたら、サングラスがなくなってたんだよぉ!」
 
本当だ。トレードマークの黒いサングラスがない。
 
「一緒に、探してくれる?」
 
もっちろん!探しますとも!
 
「やったぁ~!さっすが真莉亜ちゃん、俺様の命の恩人だぁ~♡」
 
はいはい。
で、結局、サングラスは見つからず。
 
「紅葉、見つかったぁ~?」
 
「いいえ、どこにもないわぁ。」
 
「これか?」
 
「それはゴーグル。」
 
「じゃあ、これは?」
 
「それはルクトさんの老眼鏡。」
 
ルクトさん、老眼鏡をかけてるんだぁ。
すると、ウルフ一郎さんが、ジュンブライトとギロさんのコメカミをぐりぐりし始めた。
 
「てめぇら、ちゃ―んと真剣に探せっ。」
 
「す、すみません・・・・・・。」
 
「ウルフ一郎、なかなか見つからないよ。」
 
「そ、そんなぁ~。」
 
「もう、あきらめましょう。これだけ探しても、見つからないですし。
 
「あたしが新しいサングラスを買ってやるよ。昨日、もらった給料で。」
 
「いやだいやだぁ~!そのサングラスは、俺様の大切なもんなんだぁ~!」
 
ウルフ一郎さんったら。子供のように、足をじたばたさせている。
 
「ったく、仕方ね。一人で探してくださーい。」
 
ちょっ、ジュンブライト!その言い方、よくないでしょう!
 
「だってぇ、探しても、見つからないし。」
 
「そうそう。」
 
「紅茶をつくりましょう。」
 
「買い物に行きましょう。」
 
「紅葉ぁ~。勉強しよう!」
 
「えぇ。」
 
「さあてと、新しい薬をつくらないと!」
 
ちょっ・・・・・・みんなぁ~。
ったく、たまには空気を読みなさいよぉ。
ウルフ一郎さん、とても困ってるじゃなーい。
ん?まてよ?
私はあることに気付いた。
ウルフ一郎さんって、なんであのサングラスを大切そうにしてるんだろ。
なんか、意味でもあるのかなぁ~?
 
「ウルフ一郎さ―ん。」
 
私がウルフ一郎さんのところに駆けつけると、ウルフ一郎さんは、私の方を振り返った。
 
「真莉亜ちゅわん・・・・・・。」
 
私は、ウルフ一郎さんのとなりにすわった。
 
「そんなに大事なんですか、あのサングラス。」
 
私が聞くと、ウルフ一郎さんはスッと立ち上がった。
 
「あったりめぇだぁ!あのサングラスは、俺様の命でもあり、新年の象徴でもあるんだぞぉ~!」
 
ふーん。
 
「・・・・・・で、なんでそんなに大事にしているんですか?前にも言ってましたよね。「あれがないと、生きて行けない。」って。一体、どういう意味なんですか?教えてください。」
 
私が聞くと、ウルフ一郎さんは真剣な顔で、無言で私のとなりにすわった。
 
「・・・・・・実はあれ、元々は、俺様の父ちゃんのものだったんだ。」
 
ウルフ一郎さんのお父さんのサングラスだったんですか!?
 
「あぁ。けど、父ちゃんは、俺様が8歳のころ、あの世に逝ったんだ。」
 
そうだったんですか・・・・・・。
 
「あのころを、思い出すなぁ。」
 
ウルフ一郎さんは、時が流れるように、過去にあったことを話し始めた。
 
 

 
 
-28年前ー
 
 
「うぇ~ん、うぇ~ん!」
 
「おい、お前ら!またうちの子を泣かしてくれたなぁ!」
 
「ああん?俺様達は、なにも悪くねぇぞ。なぁ、ウルフ次郎、ウルフ三郎。」
 
「そうッス!兄貴はなにも悪くないッス!」
 
「悪くないッス!」
 
「うそつけ!お前らになぐられたって言ってんだ!さぁ、うちの子に謝るんだっ!」
 
いやだねーだ!行くぞ!ウルフ次郎、ウルフ三郎!
 
「はいっ!」
 
俺様達は、パッと逃げた。
 
「あぁ!まて、コラァ!」
 
ひぃぃぃぃぃぃ!なんで追いかけて来るんだよぉ!
 
「まてぇ~!」
 
うわぁぁぁぁぁぁ!距離がだんだん、縮んでく~!
 
「はぁ、はぁ。もう、無理ですぅ~。」
 
こうらウルフ次郎!止まるなっ。
 
「うちの子に謝れ~!」
 
「ウルフ一郎兄貴!もうすぐつかまりそうですっ!」
 
ちっ、もうここで終わりか・・・・・・。
と、思ったその時。
ブルブルブルブル。
ん?バイクの音が、だんだん、近づいてくるぞぉ~。
ま、まさか!
 
「よぉ、ウルフ一郎、ウルフ次郎、ウルフ三郎。ここで会うなんて、思わなかったぜぇ。」
 
「父ちゃん!」
 
俺様達は、父ちゃんに飛びついた。
俺様達の父ちゃん、ウルフ太郎。
黒いオオカミで、黒いサングラスをかけていて、口にたばこをくわえていて、服装は白いインナーと、ズボンを着ている、俺様の自慢の父ちゃんなんだっ☆
 
「おい、ウルフ太郎!」
 
あ、さっきのおっさん。
 
「なんだなんだ。そんなに怒って。」
 
「お前の息子達が、またうちの子をいじめたんだよぉ!」
 
おっさんが、俺様達の方を指さすと、俺様達は、サッと父ちゃんの背後に隠れた。
ポリポリポリ。
 
「ふ―ん。・・・・・・で?」
 
「聞いてんのかおい!」
 
「あぁ。聞いてた。」
 
父ちゃんが、手で丸めたものを、おっさんに向かって、飛ばした。
 
「は、鼻クソを人の顔に飛ばすなぁ~!」
 
「・・・・・・別に。」
 
「反省する気、ねぇだろ!」
 
「まぁ、とにかく帰れ。ガキ達のことは、俺がちゃんと叱ってやっから。」
 
「ちっ、わかったよ!この、クソオオカミ親子が!帰るぞ!」
 
「う、うん・・・・・・。」
 
おっさんは、子供の手をぎゅっとひっぱって、帰っちゃった。
 
「ちっ、だから、子供のケンカには、親がつっこむなって言うんだよ。行くぞ、お前ら。」
 
「うん!」
 
父ちゃんは、俺様達を乗せて、バイクを動かした。
 
 

 
家に帰ると、俺様達は、母ちゃんから頭をなぐられた。
 
「あんた達!何度言ったらわかるんだい!ともだちをいじめたら、だめだよっ!」
 
はい・・・・・・すみません・・・・・・。
 
「今度したら、承知しないからなっ!」
 
「はい・・・・・・。」
 
「ほら、あんたからも、なにか言ってあげてくれないかい。」
 
「ん~。この姉ちゃん、ナイスバディーな体だぜぇ~♡」
 
ボコッ!
母ちゃんは、父ちゃんの頭をなぐった。
父ちゃんの頭の上に大きなたんこぶがついた。
 
「話聞いてんのかい!」
 
「はい、すみません・・・・・・。」
 
「ったく、これだから、男は困るんだよ。いいかい?お前達。今日から外出は禁止だよ。」
 
「え~?」
 
「え~?じゃないよ。お友達をいじめた罰だよ。あんた達を外に出すと、いっつも、いじめるから。」
 
そ、そんなぁ~。
 
「まぁ、まぁ。そんなに厳しく叱らなくても、いいじゃねぇのか?家の周りで遊ばせたらどうだい。」
 
「で、でも・・・・・・。」
 
「気にすんな。家の周り以外、遊んだらだめだぞ。わかったか?」
 
「うんっ!わかった!」
 
「よ―し、それでいい!」
 
父ちゃんは、ニッと笑った。
 
「あ、あんた!少しは厳しくしないと・・・・・・。」
 
「さ―てと、小便、したくなった。」
 
父ちゃんはそう言って、部屋を出た。
 
「ちっ、これだから、うちの主人は困るんだよ。」
 
母ちゃんはそう言って、洗濯物を持って、部屋を出た。
 
「よーし、お前らぁ!サッカーするぞぉ~!」
 
「オー!」
 
 

 
 
 
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