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第三十八話 「ハチャメチャな美女と野獣!」
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花田中文芸会の練習は、体育館でします。
「潤様、まだ来ないのかしら。」
たぶん、もうすぐ来ると思いますけど。
(あいつら、時間はとっくに、すぎてっぞ―。)
「おくれてごめん!」
扉の方から、声がした。
振り向くと・・・・・・。
「キャ―ッ♡潤様ぁ~♡」
うわぁ!比奈多さん率いる、ジュンブライトファンクラブのみんなが、もうダッシュで、ジュンブライトのところに走って行ったよ!
ジュンブライトの周りは、いつの間に、女子軍団が取り囲んでいる。
「お元気でしたか?」
「ああ!元気にしてた!」
ジュンブライトは、うれしそう。
「今回は引き受けてくれて、ありがとうございますっ!」
比奈多さんはジュンブライトに向かって、おしぎをした。
「いいってことよ!困った時は、お互い様だぜっ!」
ジュンブライトは、ニッと笑った。
「キャ―ッ♡なんて優しい方なんでしょ―♡」
「ところで、一人で来たんですか?」
「あ・・・・・・・あぁ・・・・・・。」
「うわ!な、なんだ、この女子の大群!」
「ジュンブライト・・・・・・・じゃ―なかった。潤様、人間界・・・・・・いや、日本でも、モテモテですね。」
「ヤッホー!お姉ちゃ―ん、紅葉ぁ~、テレ・・・・・・じゃなかった、照美さーん、バカ女ぁ~!」
「ひ・・・・・・人がいっぱいいる・・・・・・。」
突然現れた四人を見て、女子達は、目を点にした。
「ま・・・・・・真莉亜様。これ、一体、どういうことかしら?」
すみません・・・・・・。この人達も、出たいと言ったので・・・・・・。
すると、比奈多さんは、がくっと落ちこんだ。
「そんな・・・・・・潤様一人かと、思ったのに・・・・・・。」
本当に、ごめんなさい。
「ちょっとごめんねぇ~。」
テレサさんが、ジュンブライトのうでを、がっしりつかんだ。
「え―っ?」
「白田先生、ずる―い!」
「潤様を、独り占めにしないでくださ―い!」
「独り占めにしないから。黒月さんと、話がしたいので。」
と、笑顔で言うと、ジュンブライトと一緒に、向こうに行った。
「なんでおそかったんだよ!」
「だってぇ、ネルが道に迷ったり、オオカミヤローと、どっちが正しい道なのか、けんかしたりして・・・・・・おくれっちまった。」
「てへぺろするなっ!いいかい?次、同じようなことがあったら、ケツを、まっかかにするよ!」
「そ、それだけは、やめて~。」
なにを話してるんだろ。あの二人。
「真莉亜ちゅわ~ん♡」
ウルフ一郎さん!
「俺様、君の王子様になるよ―ん♡」
「あら、真莉亜様のペット?」
「ちげーよ。プリンスでぇ~す♡」
「変なペット。」
「ぶんなぐるぞ、オラァ!」
ウルフ一郎さん、怒りをおさえて。
「比奈多様、あの方・・・・・・。」
なぎささんが、ネルさんの方を、指さした。
「あぁ。夏祭りで、お化け屋敷を、こわがっていた方ね。」
「きるぞ。」
ネルさん、それだけは、やめて。
「それと・・・・・・。」
比奈多さんは、不思議そうに、アキちゃんとソラちゃんの前にしゃがんだ。
「この子達、クリス様の妹?」
「うん。ピンクの髪がアキで、水色の髪がソラ。」
「よろしく~。」
「あ・・・・・あ・・・・・・。」
ソラちゃん、がんばれ―。
「・・・・・・ゔ・・・・・・ゔぅ・・・・・・。」
目が、泣きそうになってる・・・・・・ヤバイ!
「うわ~ん!」
とうとう、泣いちゃったよぉ。
「ごめんねぇ。この子、結構、人見知りが激しくて。」
「いいですわよ、気にしなくて。」
「ソラちゃん、先生と一緒にいろっか。」
テレサさんは、泣いているソラちゃんをだっこして、体育館のすみっこに行った。
「テレサ、ありがと―。」
クリスさんは、小さな声で、テレサさんに感謝した。
「いいんだよ。さ、劇の練習に、集中しな。」
「うん!」
「さぁ、助っ人が、四人増えたところで、練習を、始めましょう。」
「うわぁ~。この刀、かっこいい~!」
「だろ?」
「こうら!照明係!ちゃんとしなさいっ!」
比奈多さん、こわーい。
「で、潤様がもう、決まっているのでぇ、五人の役を決めましょう!」
「俺様、野獣・王子様役がいい!」
ウルフ一郎さんは、手をスッと挙げた。
「だめですわ。野獣・王子様役は、潤様で、決まりですもの。フィリップ役が、いいと思うわ。」
ウルフ一郎さんは、首をかしげた。
「フィリップぅ?それ、『ねむりの森の美女』じゃねぇか。」
「ちがいます。馬の方のフィリップです。」
「はぁ!?馬だとぉ~!?」
ウルフ一郎さん、うるさい。
「俺様、一応言っとくが、オオカミなんだぜ!?その俺様が、馬役なんて、やだぁ!」
「アハハハハハ~!オオカミヤロー、お前、馬役だってさ!ぴったりだぜ!」
ジュンブライトが、お腹をおさえて、笑っている。
「お前ら、俺様を動物扱いにするんじゃねぇ!あと、天パヤロー!笑うんじゃねぇ!」
ウルフ一郎さん、がんばってください。
「えっ?」
私、がんばっているウルフ一郎さんの姿、見たいな。
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!真莉亜ちゃんのリクエストに応えて、俺様、がんばるよ―ん♡」
「絶対な。」
「次は・・・・・・アキちゃんとソラちゃんね。二人はぁ、そこらへんの女の子。」
ぷっ!アキちゃんとソラちゃん、そこらへんの女の子だって!
「笑わないでよっ!あたし、ベル、やりたかった!」
「私、出たくな~い。」
「えっとぉ、あなたは・・・・・・。」
比奈多さんは、ネルさんを、頭から足まで見た。
「ガストンね。」
「男役かいっ!」
(ちくしょ―!ベル役、したかったぜ!)
「これで、役はそろいましたわ!早速、お着替えして、練習をしましょう!」
「着がえだとぉ!?めんどくせー!」
ジュンブライト!
「潤様♡私達が、潤様のお着替えを、お手伝いしま―す♡」
あんた達はどーせ、ジュンブライトの上半身を、見たいだけでしょ。
「さ、犬さんは、こっちへ。」
「オオカミだっ!このクソガキ、ロースにするぞ!」
「中学生に向かって、こわいこと、言うなや。」
「ソラ、行こう!」
「やだぁ~。」
ソラちゃん、本当に出ないみたい。
四人は、更衣室に連れられた。
早く、ジュンブライトの王子様姿が、見たいなっ。
ー30分後ー
「真莉亜~。」
・・・・・・誰?あの、長い茶髪の人。
白い服と、黒いズボンを着ていて、背が高い、イケメンさん・・・・・・あ!
「ジュンブライト!」
私は、ジュンブライトのところまで走った。
「ジュンブライトなの!?」
「ああ。これ、かつらだから。」
ジュンブライトって、髪を長くすると、なかなかかっこいいよ!
「・・・・・・そうか。」
うん!
「天パとロンゲ、どっちがいい?」
天パもいいけど、ロンゲの方が、かっこいいなっ。
「・・・・・・そうか。」
もう、照れないでよぉ。
「て、照れてねぇ!」
顔、真っ赤になってる。かわいい。
「それに・・・・・・真莉亜のベル姿、かっわい~♡」
王子様のイメージが、急に壊れました。
「写真、とろっ。」
ジュンブライトは、スマホを取り出した。
パシャッ、パシャッ、パシャッ!
ちょっとぉ。そんなにとらないでよぉ。
「いいじゃねぇか。」
よくありません。
(あんやろぉ~!ジュンブライト様と、あんなに仲良くやりやがってぇ!)
すると、比奈多さんが、黒いローブを着た、おばあさん姿で、やって来た。
「それじゃあ、早速、練習を始めましょう。」
「おい、俺は、どうすればいいんだ?」
「潤様は・・・・・・わたくしに、恋の魔法をかけられるのぉ~♡」
「うそつけ。どこにいればい―んだよ。」
「あそこの手作りの大きな扉の向こうにいてください。クリス様が、「いいよ。」って言うまで、開けないでくださいね。」
「わかった。」
ジュンブライトは、ステージに上がった。
「いいですわね?よ―い、スタート!」
「『昔、あるところに、王子様がいました。王子様は、とてもわがままで、自分勝手な性格でした。そんなある夜、一人のおばあさんが、お城にたずねてきました。』」
ガチャ・・・・・・。
ジュンブライト王子、登場!って、あれ?
「ジュンブライト様♡」
「わっ!くっつくなっ!てか、お前の出番じゃねぇだろ!」
「カット、カ―ット!」
比奈多さんが、びしっとクリスさんの方を指さした。
「あなた、気安く潤様のうでをくまないでくれる?」
「そこかいっ!」
「もう一回、最初っから!」
比奈多さんの怒鳴り声が、体育館じゅうに、響き渡った。
「『昔、あるところに、王子様がいました。王子様は、とてもわがままで、自分勝手な性格でした。そんなある夜、一人のおばあさんが、お城をたずねてきました。』」
ガチャ・・・・・・・。
ジュンブライトが現れたとたん、ライトがジュンブライトを照らし出した。
「お願いです。このバラを差しあげますから、温かい一夜のやどをお恵みください。」
さ、ジュンブライト!セリフ、言って!
「鬼斬り。」
バタン。
・・・・・・。
「ちゃんとしろ―っ!」
「へっ?なんか言ったか?」
セリフ、ちゃんと言って!
「忘れた。」
「あだ―っ!」
私達は、お笑い劇のように、コケた。
「アホかー、お前!」
「忘れたもんは、しょうがないだろ?」
自由すぎる、この男。
「潤様、台本をもう一回、読んで。」
「わかった。」
ジュンブライトは、台本を出して、なめるように読んだ。
「もう、覚えた。」
早っ!
「あいつ、テキトーすぎる。」
というわけで、ナレーションのところは、カットしまーす。
ガチャ・・・・・・。
「お願いです。このバラを差しあげますから、温かい一夜の宿をお恵みください。」
「ふん、バラなんていらないね!うすぎたないやつめ、失せろ!」
ジュンブライトは、ドアを強く、バタンと閉めた。
いいぞ、ジュンブライト!その調子!
「『王子がドアを閉めたあと、おばあさんは、美しい魔女の姿に変えました。』」
係の人達が、手作りのドアを運ぶと、ステージの軸から、比奈多さんが出て来た。
うわぁ~。比奈多さんの魔女姿、超~きれ―い。
ピンクのキラキラしたドレスを着ていて、黄金に輝くティアラをつけている。
「あなたは人を思いやる心がないでsね。罰として、この城全体に呪いをかけましょう。この呪いは、あなたの目の前に、心から愛し合える人が現れるまで、解きません。」
「う・・・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「『魔女の言う通り、城全体に呪いがかかりました。そして、王子はみにくい野獣の姿に変えられました。果たして、この野獣を愛する人は、現れるんでしょうか・・・・・・。』」
☆
ふぅ、練習、つかれたぁ。
「明後日は、本番だね。」
超~緊張するぅ~。
「俺、見に行きます。ちょうど、休暇日なんで。」
「おう!」
ギロさんが見に来るなら、がんばらなくちゃ。
「真莉亜ちゅわ~ん♡俺様の演技、どうだったーん?」
よかったですよ。
「ひゃ―っ♡ほーめらーれた―ん♡」
「俺は、俺は?」
ジュンブライトも、上手だったよ。
「うっひょ―♡」
「ちっ。」
ウルフ一郎さんが、ジュンブライトに舌打ちをした。
「なんだ。」
「いや、なんにもねぇ。」
ウルフ一郎さん、ほめられたのは、自分だけだと思ったみたい。
「ウルフ一郎は、何役なんだい?」
「フィリップよ。馬役なの。」
「ぷっ!」
ギロさんが、ほっぺたをふくらました。
「笑うなっ!」
「こいつ、「ヒヒーン。」ばっかりだったぞ。俺、思わず笑ってしまった。ガハハハハハ!」
「俺様を動物扱いすると、天パの先っちょ、ちょんぎるぞ。」
アキちゃんも、上手だったね。
「あんたにほめられる資格はない。」
「アキ!」
いいですよ、クリスさん。アキちゃん、照れてるだけなんで。
「か、勝手に決めつけないでよっ!」
顔、真っ赤になってるよぉ。
「ねぇ、ソラは出ないの?」
「うん・・・・・・恥ずかしいから。」
ソラちゃん、昔の私にそっくり。
「早く明後日にならないかなぁですぅ~。」
「アハハハハ。楽しみにしてろ、マドレーヌ。」
ジュンブライトが、マドレーヌちゃんの頭をなでた。
☆
「潤様、まだ来ないのかしら。」
たぶん、もうすぐ来ると思いますけど。
(あいつら、時間はとっくに、すぎてっぞ―。)
「おくれてごめん!」
扉の方から、声がした。
振り向くと・・・・・・。
「キャ―ッ♡潤様ぁ~♡」
うわぁ!比奈多さん率いる、ジュンブライトファンクラブのみんなが、もうダッシュで、ジュンブライトのところに走って行ったよ!
ジュンブライトの周りは、いつの間に、女子軍団が取り囲んでいる。
「お元気でしたか?」
「ああ!元気にしてた!」
ジュンブライトは、うれしそう。
「今回は引き受けてくれて、ありがとうございますっ!」
比奈多さんはジュンブライトに向かって、おしぎをした。
「いいってことよ!困った時は、お互い様だぜっ!」
ジュンブライトは、ニッと笑った。
「キャ―ッ♡なんて優しい方なんでしょ―♡」
「ところで、一人で来たんですか?」
「あ・・・・・・・あぁ・・・・・・。」
「うわ!な、なんだ、この女子の大群!」
「ジュンブライト・・・・・・・じゃ―なかった。潤様、人間界・・・・・・いや、日本でも、モテモテですね。」
「ヤッホー!お姉ちゃ―ん、紅葉ぁ~、テレ・・・・・・じゃなかった、照美さーん、バカ女ぁ~!」
「ひ・・・・・・人がいっぱいいる・・・・・・。」
突然現れた四人を見て、女子達は、目を点にした。
「ま・・・・・・真莉亜様。これ、一体、どういうことかしら?」
すみません・・・・・・。この人達も、出たいと言ったので・・・・・・。
すると、比奈多さんは、がくっと落ちこんだ。
「そんな・・・・・・潤様一人かと、思ったのに・・・・・・。」
本当に、ごめんなさい。
「ちょっとごめんねぇ~。」
テレサさんが、ジュンブライトのうでを、がっしりつかんだ。
「え―っ?」
「白田先生、ずる―い!」
「潤様を、独り占めにしないでくださ―い!」
「独り占めにしないから。黒月さんと、話がしたいので。」
と、笑顔で言うと、ジュンブライトと一緒に、向こうに行った。
「なんでおそかったんだよ!」
「だってぇ、ネルが道に迷ったり、オオカミヤローと、どっちが正しい道なのか、けんかしたりして・・・・・・おくれっちまった。」
「てへぺろするなっ!いいかい?次、同じようなことがあったら、ケツを、まっかかにするよ!」
「そ、それだけは、やめて~。」
なにを話してるんだろ。あの二人。
「真莉亜ちゅわ~ん♡」
ウルフ一郎さん!
「俺様、君の王子様になるよ―ん♡」
「あら、真莉亜様のペット?」
「ちげーよ。プリンスでぇ~す♡」
「変なペット。」
「ぶんなぐるぞ、オラァ!」
ウルフ一郎さん、怒りをおさえて。
「比奈多様、あの方・・・・・・。」
なぎささんが、ネルさんの方を、指さした。
「あぁ。夏祭りで、お化け屋敷を、こわがっていた方ね。」
「きるぞ。」
ネルさん、それだけは、やめて。
「それと・・・・・・。」
比奈多さんは、不思議そうに、アキちゃんとソラちゃんの前にしゃがんだ。
「この子達、クリス様の妹?」
「うん。ピンクの髪がアキで、水色の髪がソラ。」
「よろしく~。」
「あ・・・・・あ・・・・・・。」
ソラちゃん、がんばれ―。
「・・・・・・ゔ・・・・・・ゔぅ・・・・・・。」
目が、泣きそうになってる・・・・・・ヤバイ!
「うわ~ん!」
とうとう、泣いちゃったよぉ。
「ごめんねぇ。この子、結構、人見知りが激しくて。」
「いいですわよ、気にしなくて。」
「ソラちゃん、先生と一緒にいろっか。」
テレサさんは、泣いているソラちゃんをだっこして、体育館のすみっこに行った。
「テレサ、ありがと―。」
クリスさんは、小さな声で、テレサさんに感謝した。
「いいんだよ。さ、劇の練習に、集中しな。」
「うん!」
「さぁ、助っ人が、四人増えたところで、練習を、始めましょう。」
「うわぁ~。この刀、かっこいい~!」
「だろ?」
「こうら!照明係!ちゃんとしなさいっ!」
比奈多さん、こわーい。
「で、潤様がもう、決まっているのでぇ、五人の役を決めましょう!」
「俺様、野獣・王子様役がいい!」
ウルフ一郎さんは、手をスッと挙げた。
「だめですわ。野獣・王子様役は、潤様で、決まりですもの。フィリップ役が、いいと思うわ。」
ウルフ一郎さんは、首をかしげた。
「フィリップぅ?それ、『ねむりの森の美女』じゃねぇか。」
「ちがいます。馬の方のフィリップです。」
「はぁ!?馬だとぉ~!?」
ウルフ一郎さん、うるさい。
「俺様、一応言っとくが、オオカミなんだぜ!?その俺様が、馬役なんて、やだぁ!」
「アハハハハハ~!オオカミヤロー、お前、馬役だってさ!ぴったりだぜ!」
ジュンブライトが、お腹をおさえて、笑っている。
「お前ら、俺様を動物扱いにするんじゃねぇ!あと、天パヤロー!笑うんじゃねぇ!」
ウルフ一郎さん、がんばってください。
「えっ?」
私、がんばっているウルフ一郎さんの姿、見たいな。
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!真莉亜ちゃんのリクエストに応えて、俺様、がんばるよ―ん♡」
「絶対な。」
「次は・・・・・・アキちゃんとソラちゃんね。二人はぁ、そこらへんの女の子。」
ぷっ!アキちゃんとソラちゃん、そこらへんの女の子だって!
「笑わないでよっ!あたし、ベル、やりたかった!」
「私、出たくな~い。」
「えっとぉ、あなたは・・・・・・。」
比奈多さんは、ネルさんを、頭から足まで見た。
「ガストンね。」
「男役かいっ!」
(ちくしょ―!ベル役、したかったぜ!)
「これで、役はそろいましたわ!早速、お着替えして、練習をしましょう!」
「着がえだとぉ!?めんどくせー!」
ジュンブライト!
「潤様♡私達が、潤様のお着替えを、お手伝いしま―す♡」
あんた達はどーせ、ジュンブライトの上半身を、見たいだけでしょ。
「さ、犬さんは、こっちへ。」
「オオカミだっ!このクソガキ、ロースにするぞ!」
「中学生に向かって、こわいこと、言うなや。」
「ソラ、行こう!」
「やだぁ~。」
ソラちゃん、本当に出ないみたい。
四人は、更衣室に連れられた。
早く、ジュンブライトの王子様姿が、見たいなっ。
ー30分後ー
「真莉亜~。」
・・・・・・誰?あの、長い茶髪の人。
白い服と、黒いズボンを着ていて、背が高い、イケメンさん・・・・・・あ!
「ジュンブライト!」
私は、ジュンブライトのところまで走った。
「ジュンブライトなの!?」
「ああ。これ、かつらだから。」
ジュンブライトって、髪を長くすると、なかなかかっこいいよ!
「・・・・・・そうか。」
うん!
「天パとロンゲ、どっちがいい?」
天パもいいけど、ロンゲの方が、かっこいいなっ。
「・・・・・・そうか。」
もう、照れないでよぉ。
「て、照れてねぇ!」
顔、真っ赤になってる。かわいい。
「それに・・・・・・真莉亜のベル姿、かっわい~♡」
王子様のイメージが、急に壊れました。
「写真、とろっ。」
ジュンブライトは、スマホを取り出した。
パシャッ、パシャッ、パシャッ!
ちょっとぉ。そんなにとらないでよぉ。
「いいじゃねぇか。」
よくありません。
(あんやろぉ~!ジュンブライト様と、あんなに仲良くやりやがってぇ!)
すると、比奈多さんが、黒いローブを着た、おばあさん姿で、やって来た。
「それじゃあ、早速、練習を始めましょう。」
「おい、俺は、どうすればいいんだ?」
「潤様は・・・・・・わたくしに、恋の魔法をかけられるのぉ~♡」
「うそつけ。どこにいればい―んだよ。」
「あそこの手作りの大きな扉の向こうにいてください。クリス様が、「いいよ。」って言うまで、開けないでくださいね。」
「わかった。」
ジュンブライトは、ステージに上がった。
「いいですわね?よ―い、スタート!」
「『昔、あるところに、王子様がいました。王子様は、とてもわがままで、自分勝手な性格でした。そんなある夜、一人のおばあさんが、お城にたずねてきました。』」
ガチャ・・・・・・。
ジュンブライト王子、登場!って、あれ?
「ジュンブライト様♡」
「わっ!くっつくなっ!てか、お前の出番じゃねぇだろ!」
「カット、カ―ット!」
比奈多さんが、びしっとクリスさんの方を指さした。
「あなた、気安く潤様のうでをくまないでくれる?」
「そこかいっ!」
「もう一回、最初っから!」
比奈多さんの怒鳴り声が、体育館じゅうに、響き渡った。
「『昔、あるところに、王子様がいました。王子様は、とてもわがままで、自分勝手な性格でした。そんなある夜、一人のおばあさんが、お城をたずねてきました。』」
ガチャ・・・・・・・。
ジュンブライトが現れたとたん、ライトがジュンブライトを照らし出した。
「お願いです。このバラを差しあげますから、温かい一夜のやどをお恵みください。」
さ、ジュンブライト!セリフ、言って!
「鬼斬り。」
バタン。
・・・・・・。
「ちゃんとしろ―っ!」
「へっ?なんか言ったか?」
セリフ、ちゃんと言って!
「忘れた。」
「あだ―っ!」
私達は、お笑い劇のように、コケた。
「アホかー、お前!」
「忘れたもんは、しょうがないだろ?」
自由すぎる、この男。
「潤様、台本をもう一回、読んで。」
「わかった。」
ジュンブライトは、台本を出して、なめるように読んだ。
「もう、覚えた。」
早っ!
「あいつ、テキトーすぎる。」
というわけで、ナレーションのところは、カットしまーす。
ガチャ・・・・・・。
「お願いです。このバラを差しあげますから、温かい一夜の宿をお恵みください。」
「ふん、バラなんていらないね!うすぎたないやつめ、失せろ!」
ジュンブライトは、ドアを強く、バタンと閉めた。
いいぞ、ジュンブライト!その調子!
「『王子がドアを閉めたあと、おばあさんは、美しい魔女の姿に変えました。』」
係の人達が、手作りのドアを運ぶと、ステージの軸から、比奈多さんが出て来た。
うわぁ~。比奈多さんの魔女姿、超~きれ―い。
ピンクのキラキラしたドレスを着ていて、黄金に輝くティアラをつけている。
「あなたは人を思いやる心がないでsね。罰として、この城全体に呪いをかけましょう。この呪いは、あなたの目の前に、心から愛し合える人が現れるまで、解きません。」
「う・・・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「『魔女の言う通り、城全体に呪いがかかりました。そして、王子はみにくい野獣の姿に変えられました。果たして、この野獣を愛する人は、現れるんでしょうか・・・・・・。』」
☆
ふぅ、練習、つかれたぁ。
「明後日は、本番だね。」
超~緊張するぅ~。
「俺、見に行きます。ちょうど、休暇日なんで。」
「おう!」
ギロさんが見に来るなら、がんばらなくちゃ。
「真莉亜ちゅわ~ん♡俺様の演技、どうだったーん?」
よかったですよ。
「ひゃ―っ♡ほーめらーれた―ん♡」
「俺は、俺は?」
ジュンブライトも、上手だったよ。
「うっひょ―♡」
「ちっ。」
ウルフ一郎さんが、ジュンブライトに舌打ちをした。
「なんだ。」
「いや、なんにもねぇ。」
ウルフ一郎さん、ほめられたのは、自分だけだと思ったみたい。
「ウルフ一郎は、何役なんだい?」
「フィリップよ。馬役なの。」
「ぷっ!」
ギロさんが、ほっぺたをふくらました。
「笑うなっ!」
「こいつ、「ヒヒーン。」ばっかりだったぞ。俺、思わず笑ってしまった。ガハハハハハ!」
「俺様を動物扱いすると、天パの先っちょ、ちょんぎるぞ。」
アキちゃんも、上手だったね。
「あんたにほめられる資格はない。」
「アキ!」
いいですよ、クリスさん。アキちゃん、照れてるだけなんで。
「か、勝手に決めつけないでよっ!」
顔、真っ赤になってるよぉ。
「ねぇ、ソラは出ないの?」
「うん・・・・・・恥ずかしいから。」
ソラちゃん、昔の私にそっくり。
「早く明後日にならないかなぁですぅ~。」
「アハハハハ。楽しみにしてろ、マドレーヌ。」
ジュンブライトが、マドレーヌちゃんの頭をなでた。
☆
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