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第三十七話 「ヒアン様のプロポーズ」

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「兄さんはあれから、ずっとねてるの?」
 
「はい。」
 
「兄さん、大丈夫かなぁ?」
 
「さぁ。」
 
部屋の外から、リアンとルクトの声が聞こえてくる。
・・・・・・。
 
「『好きよ。大好きよ、あなた。愛してるわ。』」
 
俺の頭の中から、あいつの声が聞こえてくる。
 
「『・・・・・・あなたに、嫌われたくなかったから。』」
 
あいつ・・・・・・。
さっきから、俺、あいつのことしか考えてない。
なぜだろう?
こんな気持ち、初めてだ・・・・・・。
ま、まさか!俺、あいつのことが・・・・・・。
好きになった・・・・・・?
ドキッ、ドキッ、ドキッ。
やっぱり・・・・・・心臓の音が、はりさけそうに、鳴っている。
俺は最初から、あいつのことが、好きだったんだ!
なんで気付かなかったんだろ、俺!
そして、なんであの日・・・・・・。
 
「『・・・・・・お前を愛する資格は、まだない。』」
 
あんなことを言ったんだろ!
あの日、OKを言えば・・・・・・言えば!
あいつを幸せにしてやれたにちがいない!
・・・・・・俺は、ある決断をした。
 
 

 
 
俺は、医療室のドアの前に立っていた。
ひゃ―っ、ドキドキするなぁ。
がんばれ、ヒアン!自分で決めたことを、あいつ・・・・・・いや、レオンに言うんだ!
トントン。
 
「誰?」
 
「俺・・・・・・いや、私だ。」
 
「どうぞ。」
 
ガチャッ。
中に入ると、あいつがいた。
 
「もう、大丈夫なのか?」
 
「えぇ。」
 
レオンはうなずいた。
 
「ところで、お前に話したいことがある。」
 
「話したいこと?なにそれ。」
 
私は、ベッドに腰をかけた。
 
「レオン、私と、結婚してくれないか?」
 
「えっ・・・・・・。」
 
「私の人生を共に歩んでくれる人は、お前しかいない。レオン、結婚してくれ。」
 
「ぷっ。」
 
な、なにか、おかしいことでも、言ったか?
 
「いや、言葉遣いが、うまくなりましたね。」
 
ほ、ほめるなっ!
 
「それと、私のこと、初めて名前で呼んでくれた。」
 
で、返事は?
レオンは、にっこりほほえんだ。
 
「もっちろん、OKですわ!」
 
本当か!?やったぁ!
 
「これからよろしくね、あなた。」
 
「あぁ!」
 
私達は、だきあった。
 
 

 
 
1カ月後。
結婚式当日。
トントントン。
 
「レオン、準備はできたか?」
 
「えぇ。できたわよ。」
 
入ってもいいか?
 
「いいですわ。」
 
じゃあ、おじゃまする。
ガチャッ。
き・・・・・・きれいだなぁ。
白いレースのウェディングドレスを着ていて、真っ赤な口紅と、頭の上には、白いレールをつけている。
 
「もう、なにボ―としてるの?」
 
い、いや、なんでもないっ。
 
「王子・・・・・・いえ、大王様、もしかして、女王様の姿を見て、きれいだと思ったんじゃ・・・・・・。」
 
ルクト!人をからかうなっ!
 
「あなた!今日は特別な日なんだから、怒らないでくれる?」
 
す、すまん。
 
「うふふふふ。あなた。」
 
なんだ?急に立ち上がって。
 
「・・・・・・お姫様抱っこ、して。」
 
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお姫様抱っこだとぉ~!?
 
「『お』、何回言ってるの?」
 
よし!してやろうじゃないか!
 
「キャッ!」
 
ふっ、かわいいお姫様め。
 
「もう、からかわないでよぉ!」
 
レオンが、ぷぅと、ほっぺたをふくらました。
アハハハハハ。レオン・・・・・・。
 
「あなた・・・・・・。」
 
・・・・・・愛してるぞ。
 
「私も。愛してますわ、あなた。」
 
 

 
 
結婚式が行われた。
 
「王子―っ、おめでと―!」
 
「レオン様、おしあわせに―!」
 
ひゃ―っ、緊張するなぁ。
 
「あんなにわがままだった王子が、大王になるなんて!」
 
「もし今度、わがまま言ったら、追い出すわ!」
 
こ、こわいこと、言うなや~。
 
「あなた、あなた!」
 
レオン、もう来たのか!
 
「あたり前でしょう。あなた、緊張してるの?」
 
「あ、あたり前だろ!」
 
「あがり症なのね。」
 
神父は、ゴホンっと、咳払いをした。
 
「ヒアン、あなたは叶わぬ愛を、誓いますか?」
 
「ち・・・・・・ち・・・・・・。」
 
「誓いますでしょ?」
 
レオンがぼそっと、小さい声で言う。
 
「ちがいます。」
 
「点はいらない!」
 
「で、では、誓いますで、いいですね。」
 
神父さんが、あわててる。
ごめんなさい・・・・・・。誓いますで、いいです。
 
「で、では、レオン、あなたは叶わぬ愛を、誓いますか?」
 
「誓います。」
 
「では、指輪の交換を。」
 
ど、どうしよ―!指輪をはめるだけなのに、手がガタガタふるえる!
 
「早くして!」
 
わ、わかってるよぉ。
ふぅ。やっとおわったぁ。
 
「最後は、誓いのキスを。」
 
キ、キスだとぉ~!?ふざけんな!
 
「レールを開けて。」
 
えっ?
 
「早く!」
 
お、おう。
俺は、レールを開けて、キスをしようとした。
・・・・・・おい、国民ども、じ―と見つめんなよぉ。
 
「兄さ―ん!チュ―、して~!」
 
兄貴をせかすなっ!
チュ・・・・・・。
!?
レオンが私にキスをした瞬間、国民達と、私の家族と、レオンの両親が、口をポカーンと開けた。
もちろん、ルクトも、神父さんも。
レオンは、唇を離した。
 
「・・・・・・これで、夫婦になれるわねっ。」
 
・・・・・・こんのぉ~!こーしてやるぅ!
チュッ、チュッ、チュッ、チュッ、チュ・・・・・・。
私は、レオンの唇に、熱いキスをし始めた。
さっきまで、しーんとしていたみんなが、わ―!と、騒ぎ始めた。
 
「いいぞぉ、レオン様ぁ~!」
 
「大王様、なんて大胆なことを!」
 
「私にもして~!」
 
「ヒュー、ヒュー!兄さん、もう一回してぇ!」
 
「リアン、だまりなさい。」
 
「はい・・・・・・。」
 
大好きだぞ、レオン。
 
 

 
 
ー18年後ー
 
タッ、タッ、タッ、タッ、タッ!
レオン、レオン!
ガチャッ!
 
「レオン!」
 
「あなた!」
 
はぁ、はぁ、はぁ。たおれたって聞いたから、かけつけてやったぞ。
 
「あら、そう。」
 
ずいぶん、元気そうじゃないか。
 
「うふふふふ。実は、あなたにうれしいニュースがあるの。」
 
うれしいニュース?なんだ?
 
「・・・・・・お腹、さわってみて。」
 
お、お腹をだとぉ?
 
「いいから早く!」
 
レオンは、私のうでをつかんで、お腹をさわらせた。
・・・・・・少し、太ってないか?
 
「失礼ね!」
 
レオンは怒り出した。
す、すまん。
 
「私ね、妊娠したの。」
 
妊娠した!?ひょっとして・・・・・・。
 
「そう。あなたと私の子供ができたの。」
 
レオンは、お腹をさわって、言った。
や・・・・・・やったぁ!
私は、ベッドに飛びこんで、レオンをぎゅっと、だきしめた。
 
「何か月なんだ!?」
 
「4カ月よ。予定日は、11月だって。」
 
アハハハハハ。おめでとう。
 
「でも・・・・・・。」
 
どうした。悲しい表情を浮かべて。うれしくないのか?
レオンは、ううんと、首を振った。
 
「私、体が弱いでしょ?お医者様から言われたの。「赤ちゃんを産むのは難しい。」って。ひょっとして、私、赤ちゃんの成長を見れずに、死ぬかもしれない。」
 
そんなマイナスなこと、考えるな。
 
「あなた・・・・・・。」
 
一緒に、がんばろう。
 
「うん!」
 
レオンは、たちまち、笑顔になった。
 
 

 
 
ー5カ月後ー
 
「おいレオン。体のことを考えて、ゆっくりしたらどうだ?」
 
「平気、平気。」
 
私は、レオンに近よった。
なにをつくってるんだ?
 
「これ?これはね、お腹の子が、大きくなったら、この服を着せようと思うの。」
 
これ、私が昔、着ていた服に、そっくりじゃないか!
 
「その、子供サイズよ。あなたの服は、お腹の子が大人になったら、着せてもいいじゃない?」
 
あぁ。レオンの言う通りだ。
 
「レオン・・・・・・。」
 
「なに?」
 
私は、レオンによりかかった。
 
「・・・・・・愛してるぞ。」
 
「私も。愛してますわ、あなた。」
 
 

 
 
ー現在ー
 
なーんて、ジーンとくる、話なんでしょ―。
 
「大王様にも、そんな時代が、あったんですね。」
 
「あぁ。」
 
ヒアン様、うれしそう。
 
「ねぇ、お母さん。髪、ほどいちゃった。」
 
もー!髪をほどくなって、言ったのに!
 
「!」
 
ヒアン様、どうしたんですか?
 
「道華・・・・・・。」
 
「なに?」
 
「お前のその髪型、いつからなったんだ?」
 
「9歳の時だけど・・・・・・それが?」
 
ヒアン様は、うれし涙を流しながら、道華をだきしめた。
 
「おじいちゃ―ん、苦しいよぉ。」
 
「やっぱり!道華は、レオンの生まれ変わりだ!」
 
えぇ!?
 
「道華が・・・・・・。」
 
「母さんの生まれ変わり!?」
 
「確かに、髪型がそっくりだな。」
 
ウルフ一郎さんが、道華の髪の毛を、さらっとさわった。
 
「こら!娘の髪の毛を、気やすくさわるなっ!」
 
「んだとオラァ!」
 
「やんのかオラァ!」
 
あ―あ、またけんかが始まった。
 
「やかましい!この、ガキどもがぁ!」
 
ヒアン様、いつものことですから、ほっといていいですよ。
 
「・・・・・・。」
 
ヒアン様は、怒りをおさめた。
 
「レオンは、成長した息子の姿が見たくて、息子と真莉亜さんの子供として、生まれ変わったんだな。」
 
「そうですね。」
 
・・・・・・道華。
私は、道華の髪の毛を、ほほえみながら、さわった。
 
「お母さ―ん、さわんないでよぉ。」
 
ごめん、ごめん。
 
「・・・・・・レオン、君と出会ったこと、ほこりに思ってるよ。」
 
 
 
 
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