上 下
73 / 185

第三十二話 「マドレーヌちゃんの名前の由来」

しおりを挟む
満月荘に入ると、マドレーヌちゃんが立っていた。
どうしたの?
 
「真莉亜お姉様。私の名前の由来、知ってます?」
 
名前の由来?
 
「リリア達に聞いても、わからないって。」
 
そりゃそうでしょ。
 
「ああん?なんか言ったか?」
 
ひぃぃぃぃぃぃ!すみませ―ん。
 
「さっきからず―っと、言ってるんだぜ。」
 
ウルフ一郎さんが、あきれてる。
 
「マドレーヌちゃんの名前の由来ねぇ。」
 
テレサさんが、う~んと、うなっている。
 
「知ってるんですか!?」
 
マドレーヌちゃんは、むらさきの目を、ピカピカ光らせた。
テレサさんはにこっと優しくほほえんで、うんっと、うなずいた。
 
「知ってるよ。あの人が、マドレーヌちゃんの名付け親だよ。」
 
テレサさんが指さしたのは・・・・・・。
 
「ジュンブライトお兄様!?」
 
「あぁ?呼んだか?」
 
「ステキです~♡」
 
「ジュンブライト様が、マドレーヌの名付け親だなんて!」
 
「私、尊敬するぅ~♡」
 
「なんのことだか、さっぱり・・・・・・。」
 
「聞きたいな。マドレーヌちゃんの名前の話。」
 
「私も。」
 
ジュンブライトは、あぐらをかいた。
 
「仕方ねぇなぁ。話してやる。実は俺んち、マドレーヌで初めての女の子だったんだ。」
 
えぇ!?
 
「マドレーヌおばちゃんで、初めての女の子だったのl!?」
 
「そうです。」
 
ルクトさん、いきなり前に出ないでください。
 
「王子のご先祖様の家族は全員、男の方でした。」
 
そうなんだぁ。
 
「名前を考えるの、3カ月かかっちまったんだぜ!」
 
3カ月も!?
 
「あぁ。あの時は、大変だったなぁ。」
 
ジュンブライトが、窓の外を見つめた。
 
 

 
 
-8年前ー
 
あっつ!
なんだよこの暑さ!ハンパねぇ!
 
「う、う!」
 
あ。赤ちゃんがいるのを、忘れてた。
サプリングをつけているのって、恥ずかしいなぁ。
 
「あら。王子の子供かい?」
 
ちげーよ。俺のいとこだっ。
 
「あ―。6月に生まれた、王女様ねぇ。お父さんにだっこしてもらって、よかったねぇ。」
 
俺のいとこだって、言うとるやろ―がっ!
ったく、このばーさん、どんだけボケてんだよ。
ん?今、どこに向かっているのかって?ライト・ホームさ。
こーゆー時、あいつらがいねぇと、解決できねぇ。
ガラッ。
 
「ジュンブライトくん、元気にしてた?」
 
声をかけてくれたのは、ソアンのお母さん。
 
「かっわい~赤ん坊だねぇ。ジュンブライトくんの子供かい?」
 
いとこです。
俺はまだ24で、彼女もいない、独身の、ヴァンパイア界一さびしい男です。
 
「・・・・・・。」
 
「ソアン達は、茶の間にいるよ。」
 
おばさん、教えてくれて、サンキュー。
俺は、茶の間に入った。
そこには、アクア、ソアン、リナン、ジャン、テレサ、アルマがいた。
 
「ジュンく~ん♡元気ぃ~?」
 
だきつくなっ!
 
「ホンギャー、ホンギャー!」
 
あ―あ。泣き出したんじゃねぇか。
よーちよーち。泣きやめ―。
 
「ホンギャー、ホンギャー!」
 
よし、こーなったら・・・・・・。
 
「なにやってんだよ!」
 
「こーすると、こいつ、泣きやむんだよ。」
 
俺は鼻の中に、わりばしを2本入れながら、言った。
 
「イヤーン♡イケメン顔が、もったいなーい!」
 
「おふぃおふぁんの顔、ふぇんふぇすふぇ。」
 
「う!」
 
「本当に泣きやんだ―っ。」
 
「つーか、なんだよ、この赤ちゃん。」
 
「あんたの子供かい?」
 
ちがう。俺のいとこだ。
 
「えぇ!?親子に見えるけど・・・・・・。」
 
「リナン。6月に生まれた、王女様だよ。」
 
「この子が!?」
 
「かっわい~♡」
 
アクアとリナンが、俺のところにやって来て、赤ちゃんをさわった。
 
「う!」
 
「話ってのは、なんなんだ。」
 
あ、それなんだけど・・・・・・。
 
「赤ちゃんの名前を、考えてくれ。」
 
「え~!?」
 
みんなの声が、おみやげ売り場まで響いた。
 
「まだ決めてないのかよ!」
 
あぁ。初めての女の子だからな。
 
「そっか。ジュンくんち、女の子が一人も生まれてこなかったね。」
 
「あう!」
 
赤ちゃんが、リナンのところに行こうとしている。
 
「おいでおいで~。」
 
リナンが手を出すと、赤ちゃんは、リナンにだっこしてもらった。
 
「いい子ねぇ~。見て、アクアちゃん、テレサちゃん。」
 
リナンがテレサとアクアに、赤ちゃんを見せた。
 
「かわいいねぇ。」
 
「私もだっこしたーい!」
 
なにか、いい名前、あるか?
 
「私ぃ、思いついた~♡」
 
お、アクア。言え。
 
「キュートちゃ―ん♡」
 
その瞬間、俺達はお笑い劇のように、コケた。
 
「ふざけた名前はやめろっ!」
 
「だってぇ、かわいいからぁ♡」
 
赤ちゃんは、誰でもかわいいわ。
 
「もっとこう、王女様らしいの、ないか?」
 
「エリザベスはどうかしら。」
 
エリザベス!いいなぁ。
俺は赤ちゃんを、だっこした。
 
「おーい、エリザベスぅ~。お兄ちゃんでちゅよぉ~。」
 
「う!」
 
顔をそむけた―!
 
「気に入らねぇみてぇだなぁ。」
 
アルマ!
 
「これはどうだ。アリー。」
 
アリー・・・・・・。
 
「いいねぇ!」
 
「だろ?」
 
アルマは二カッと笑うと、赤ちゃんをだっこした。
 
「アリー。今日からお前は、アリーだぞぉ。」
 
「う、ゔぅ。」
 
泣きそうになってる・・・・・・。
 
「ホンギャー、ホンギャー!」
 
「なんで俺の時だけ、泣くのぉ~!?」
 
お前の顔が、こわいからだよ。
 
「てめぇ、いつか覚えてろ!」
 
「あんた達、名前をつける時、こう思わないかい。」
 
テレサ。
 
「こういう子にしたいとか、こんな風に育って欲しいとか。」
 
あ―。それがあったかぁ。
俺は、礼儀正しい子に、育って欲しいなぁ。
 
「人と話す時、敬語で話してほしいなぁ。」
 
「よし、マヨネーズにしよう!」
 
「意味わからない名前、出すなよっ!」
 
 

 
結局、いい名前など、なかった。
 
「う、う!」
 
「洗礼式に、間に合うのか?」
 
「ジュンブライト達が一生懸命、名前を考えてくれてるんだ。期待しよう。」
 
親父はなにがいいんだよ。
 
「私は、フローラル。」
 
・・・・・・。
 
「不満があるのかっ!」
 
親父が怒り出した。
 
「ホンギャー、ホンギャー!」
 
あーあ。親父のせいで、泣き出したんじゃねぇか。
 
「大王様、落ち着いてください。」
 
「・・・・・・すまん。」
 
おばさんは、どんな名前がいいんだよ。
 
「私?私はなんでもいいわ。」
 
「ルアン・・・・・・。」
 
おじさんは、赤ちゃんをだっこしているおばさんを、見つめた。
 
「あう!」
 
「ゆっくり、のんびり、まったりと、考えましょう。」
 
おばさん、どんだけマイペースなんだよ。
 
「ただいまぁ。」
 
リリアが帰って来た!
 
「お帰り。」
 
「赤ちゃんの名前、クラスのみんなで考えてもらったの。」
 
リリアが、通学バックから、白い紙を出した。
 
「ほうほう。みなさん、いっぱい書いてますねぇ。」
 
じいやが、白い紙を次々見ていく。
 
「あ。一個だけ、ふざけているのがあるから。」
 
「え?」
 
『藤井美貴』
 
こいつ、完全的にふざけておる。
 
「さ―てと、赤ちゃ―ん。リリアが来まちたよぉ。」
 
リリアが赤ちゃんをだっこした。
 
「ホンギャー、ホンギャー!」
 
「え―っ!?」
 
「まだあなたに、なれてないのね。」
 
「そんな・・・・・・。」
 
ま、いつかなれる日が来るさ。
 
「そうね。ジュンブライト、勉強、教えてくれる?」
 
もっちろん!
俺とリリアは、リリアの部屋に向かった。
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

処理中です...