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第二十六話 「道華の思い出」

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一カ月後。
 
「道華ぁ、おばあちゃんちに行こうか。今日は寒いから、ジャンパーを着ろうねぇ。」
 
「う、う!」
 
道華・・・・・・道華が立ってる!
 
「ジュンブライト、ジュンブライト!」
 
私は寝室でねているジュンブライトを、起こした。
 
「う、う~ん。なんだよぉ。」
 
ジュンブライトは目をこすりながら、起きて来た。
 
「あのね、道華がね、立ったの!つかまり立ちだけど。」
 
私は興奮しながら、道華の方を指さした。
 
「だ、だ!」
 
歩こうとしてる!
 
「頑張れ、道華!」
 
「あきらめないで!」
 
私達が応援していくたび、道華はつまずきながら、がんばって、私達の方へと向かおうとしていく。
 
「うんしょ、うんしょ。」
 
あと一歩!
そして、とうとう・・・・・・。
 
「あう!」
 
10歩、歩いたよ!
 
「道華~♡すごいなぁ。さっすが、俺の娘だぜっ!」
 
私達はうれしさのあまり、道華をぎゅっと、だきしめた。
ポタポタポタポタ。
それのせいか、私達の目から、涙が出て来た。
 
 

 
 
一年後。
 
「お母しゃん、お母しゃん。」
 
はいは~い。今、行くね~。って、誰が私を呼んだ?
 
「お母しゃん、お母しゃん。」
 
ま、まさか!
 
「道華!」
 
うそ!道華がしゃべった!
しかも、私のこと、「お母さん。」って!
 
「お母しゃん、お母しゃん。」
 
うわぁ~。道華、成長したね。
 
「どうした、真莉亜。」
 
ジュンブライト!あのね、道華がね、しゃべったんだよ!
 
「お父しゃん、お父しゃん!」
 
ほら!
 
「俺のこと、「お父さん。」って、呼んだ・・・・・・すごいぞ道華!さっすが、俺の娘だぜっ!」
 
「大ちゅき。」
 
うわぁ~。
 
「俺のこと、大好きだってぇ~♡俺も、道華のこと、大ちゅきでちゅよぉ~♡」
 
チュッ、チュッ、チュッ、チュッ、チュッ・・・・・・。
親バカパワー、さくれつです。
 
 

 
 
二年後。
道華は今年の春で、幼稚園に入ります。
本人は、とてもわくわくしています。
昨日、幼稚園の制服とか、カバンとか、道具とか、体操服とか、体操帽子とか、シューズとか買ったし。
今、私は、道華の体操袋と、シューズ袋と、コップ入れをつくっています。
コップはなにに使うかって?それは、歯みがきとか、おやつを食べる時とかに使うって、幼稚園の説明会で、言ってたんだ。
あと、道華が通う幼稚園はなんと、私のお母さんが働く、天使幼稚園ですっ!
ほかの幼稚園を見に行ったけど、どれも人数が多くて入れなくて・・・・・・。お母さんに相談したら、「うちの幼稚園に来たら?人数はそんなに多くないし。」って、言ってくれて!もう、助かったよ~。
幼稚園の先生の娘でよかったぁ~。
 
「道華ぁ、もうできたよ~。」
 
「うわぁ―い!」
 
道華はうれしそうに、私がつくった体操袋と、シューズ入れと、コップ入れに飛びついた。
 
「これで、幼稚園に通えるねっ。」
 
「うん!」
 
道華は、笑顔で大きくうなずいた。
 
 

 
 
私と道華は、うどんを食べていた。
 
「ごちそうさまでした。」
 
うどん、おいしかったなぁ。
さ、仕事に行くか。
 
「ごちそうさまでした!」
 
道華、えらいねぇ~。残さずに食べたねぇ~。
 
「うん!だって、明日から幼稚園に行くんだもん!」
 
けど、にんじんは、ちゃ―んと食べてねっ。
 
「はーい。」
 
昨日、若山さんからつくってもらった昼ご飯のカレーライス、にんじんだけ、食べなかったらしいね。
 
「ぎくぅ!バレたか・・・・・・。」
 
もう、バレてますけど。
 
「・・・・・・ねぇ、道華。」
 
私はいすにすわった。
 
「なに?」
 
「お友達、何人つくるの?」
 
「もっちろん、100人!」
 
道華がとびっきりの笑顔で答えた。
 
「あと、彼氏もつくるんだ!優しくて、運動神経バツグンで、お勉強ができて、お父さんよりイケメンな人♡」
 
おいおい、彼氏をつくるの、まだ早いんじゃないの?
 
「ところでさ、道華に話したいことがあるの。」
 
「話したいこと?なにそれ。」
 
道華が首をかしげた。
 
「道華にとって、難しい話だと思うけど・・・・・・お父さんの名前、黒月潤っていうでしょ?」
 
「うん。」
 
「それ、本当の名前じゃないんだ。」
 
「え!?」
 
道華は大きな声で驚いた。
 
「本当の名前は、ジュンブライト。」
 
「ジュン・・・・・・ブライト?」
 
そう。
 
「お父さんは、ヴァンパイア界の大王なの。」
 
「ヴァンパイアって、なに?」
 
道華はまた、首をかしげた。
 
「人間の血を吸う、怪物だよ。」
 
そのとたん、道華の目が大きく見開いた。
 
「お父さん、人間じゃないの?」
 
「えぇ。ヴァンパイアなの。」
 
私は、電話の横にある、ヒアン様と、レオン様と、ルクトさんの遺影を指さした、
 
「あそこに、写真があるじゃない?左の女の人が、レオン様。ヴァンパイア界の女王様で、お父さんのお母さん。道華のおばあちゃん。でも、幼いころから体が弱くて、お父さんを産んだ後、死んじゃった。真ん中の男の人は、ヒアン様。お父さんのお父さん。道華のおじいちゃん。とっても、えらい人だったんだよ。そして、右の男の人が、ルクトさん。お父さんのしつじだったんだ。とっても、優しかったんだよ。」
 
「あの三人も、ヴァンパイア?」
 
道華が不思議そうに、遺影を指さした。
 
「うん。そうだよ。」
 
私はこくりとうなずいた。
 
「道華はね、ヴァンパイアと人間のハーフなの。」
 
「えぇ!?あたし、人間じゃないの!?」
 
ううん。半分人間で、半分ヴァンパイア。
人の血を欲しがったりする時もある。
けどね、ヴァンパイアはね、にんにくと、十字架が苦手だから、具合が悪くなる時もあるの。
あなたも一緒よ、道華。
だから、お約束してくれる?
 
「人の血を吸わないって。」
 
「お母さん・・・・・・。」
 
すると、道華がニッと笑った。
 
「うん!お母さんとのお約束、守る!あたし、今日からお友達の血を吸わない!けど・・・・・・。」
 
けど?
 
「もし、吸ったら、どうなるの?」
 
その人が、ヴァンパイアになるの。
私の発言で、道華がぶるぶるふるえ始めた。
 
「こ、こわ~い。」
 
道華、ちゃんと約束、守ってね。
 
「うん!」
 
道華はまた、笑顔でうなずいた。
 
 

 
 
ー現在ー
 
「ゔぅ、うわ~ん!いい話じゃねぇか!」
 
ウルフ一郎さんが、滝のように、涙を流した。
 
「聞いててよかったぁ。」
 
「・・・・・・。」
 
アキちゃんも、ネルさんも、泣いている。
 
「泣きすぎだろっ。」
 
「お父さ―ん。」
 
「なに~?」
 
出た。親バカパワー。
 
「大好き。」
 
チュ・・・・・・。
道華がジュンブライトのほっぺにキスをすると、ジュンブライトの顔が、真っ赤になった。
 
「うひょ~♡テレサ、マドレーヌ、じいや、リリア、クリス、紅葉、真莉亜、アキ、ソラ、ネル、ギロ、ウルフ一郎!見たか、さっきの!かわいいかわいい俺の娘が、俺のほっぺたに、キスしたぞぉ~♡このほっぺたは、洗えないぜぇ~♡」
 
「はいはい。」
 
テレサさんは、ジュンブライトの親バカパワーにあきて、料理をし始めた。
 
「親バカなところが、私のお父様に似ています。」
 
そうだねぇ。
 
「道華!あんた、ずるい!」
 
「ジュンブライト様のほっぺたにキスをするなんて、ゆるさない!」
 
「私がもし、真莉亜お姉ちゃんだったら・・・・・・うらやましがる!」
 
「あなた、どんだけ妄想してんの?」
 
「あたしの予約席を取るなんて、ゆるさん!」
 
予約席だったの!?
 
「えへ、ごめんなさーい。」
 
道華が4人に向けて、てへぺろをした。
 
「ゆるさ―ん!」
 
怒りおさえきれなくなった4人は、道華を追いかけ始めた。
はぁ、うるさいなぁ。
 
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