52 / 185
第二十三話 「ウルフ一郎さん、現る!」
しおりを挟む
私達が、満月荘に戻ると、ルクトさん達が、オオカミ三兄弟さん達を見て、驚いた。
「なんで三人が、ここに来てるんですか!?」
まだ、わかりません。
「なんか、あやしいですね。」
マドレーヌちゃんが、あやしい目で、三人を見つめた。
「まあた、真莉亜をお嫁にしようとしに来たんじゃない?」
「いや、そうじゃないと思う。」
「ねぇお母さん。あのオオカミさん達と、どんな関係なの?」
道華が、オオカミ三兄弟さん達の方を、不思議そうに指さした。
「えっとぉ・・・・・・。」
「俺様と、赤い糸で繋がっている、関係だよーん♡」
そうそう、あの、サングラスをかけているオオカミさんと、私は・・・・・・って、ちがーう!
「なーに言ってんだボケ―ッ!」
「先輩!手当てをしている時に、人をたたかないでください!」
「俺様はオオカミだっ。」
「本当のこと、教えなさいよ。」
「そうだよ!」
「私にも教えて。」
「あたしにも。」
「俺にも。」
「早く言いな。」
わかりました。
私と、ジュンブライトと、ルクトさんと、マドレーヌちゃんと、リリアさんが、最後の石のこぶた三兄弟に会った時、オオカミ三兄弟さん達が来たんだ。
そのころのオオカミ三兄弟さん達は、みんなにいじわるをしたり、食べようとする、おとぎの国で有名な、不良だったんだ。
で、オオカミ三兄弟さん達は、ジュンブライトを食べようとして、おそったんだ。
私が止めたけど、オオカミ三兄弟のなかの長男、ウルフ一郎さんが、私に一目ぼれして、なんだかんだで、結婚式を挙げることになったんだ。
結婚式の途中、ジュンブライト達と、クリスさんと、こぶた三兄弟さん達が、助けに来てくれて、私は、ウルフ一郎さんと結婚せずにすんだんだ。
「未来のお父さんが言ってたオオカミさんって、あのオオカミさん!?」
そうだよ。
「つきあえばいーじゃん。あんた達、すっごくお似合いだから。」
アキちゃん!よけーなこと、言わないでよ!
ウルフ一郎さんは、ぎゅっと、アキちゃんをだきしめた。
「そう?素直なガキだなぁ。よし、ビーフジャーキーをやろう!」
「そんなもん、もらって喜ぶ、バカがいるか。」
「あたし、猫娘だから、そんなもの、苦手なの。ほかのお肉なら、食べれるけどね。」
「!?」
ウルフ一郎さんは、顔を真っ青にして、アキちゃんから離れた。
ウルフ一郎さん、猫が苦手だったっけ。
「俺様達もだっ。」
「そーだったなぁ。」
兄弟全員、猫恐怖症ですね。
「ニャ―ッ!」
「うぎゃゃゃゃゃゃあ!」
「やめんかいっ!」
テレサさんが、クリスさんと、アキちゃんと、ソラちゃんを止めた。
「いやがってるじゃないか。手加減というものを知らないやつは、バカだよ。」
「はーい。」
クリスさん達は、顔をしゅんとした。
「ありがとう、姐さん!」
ウルフ一郎さん達が、テレサさんの手を、ぎゅっと両手でにぎった。
「あたしはいつ、あんた達の姐さんになったんだい。」
「肝心なとこ、忘れてるわよ。」
「そうそう!なんで人間界に来たんですか?」
「うふふふふ♡それはね・・・・・・。」
ウルフ一郎さんは、ジュンブライトの方へ走り出し、胸ぐらを引っ張って、サングラスの奥に光る目でジュンブライトの顔をにらんだ。
「ヴァンパイア界の王子!貴様に用があるんだよぉ!」
「はぁ!?」
「ちょっとまってくれ!まさか、おとぎの国で、あそこをけられたことを、うらんでいるのか!?」
下ネタ言うな。
「あぁ!ごめん!俺が悪かった!たのむ、ゆるしてくれ!お前の好きなもん、なんでも買ってあげるから!ほら、肉とか、ステーキとか・・・・・・。」
ウルフ次郎さん!ウルフ三郎さん!よだれ、滝のように流れてるよ!
「本当ですか!?ジュンブライトの兄貴!」
「なんて優しい人なんでしょう!」
「なんでお前らが、反応するんだ。てか、俺はいつ、お前らの兄貴になったんだ。あと、よだれ、大量に出てるし。」
「そーゆーことで、うらんでねぇ。」
「んじゃあ、なんなんだよ。」
ウルフ一郎さんは、顔をジュンブライトの方に近づけた。
「貴様ぁ!俺様がふるさとにいる間に、真莉亜ちゃんとつきあったなぁ!」
「えぇ~!?」
「なんで知ってるんだよ!」
「ふっ、ふっ、ふっ、ふ。それはな、これだぁ!」
ウルフ一郎さんが、懐から取り出したのは、一冊の本だった。
表紙には、きれいな女の人が載っていて、題名は、『週刊おとぎ』という本だった。
「これ、週刊誌じゃない。」
紅葉、読んだことあるの?
「あたり前じゃない。私、おとぎの国出身だから。」
「お父様がよく、読んでました。お父様、若いころ、マスコミに、女性と一緒にデートをしているところを、隠し撮りされて、この本に載せられ、3日間、ずっとお城にひきこもってたって、言ってました。」
マドレーヌちゃん、そーゆー情報、いらないから。
「あ、言わないっていう約束を、破ってしまいましたぁ~。」
「破るなよっ。ところで、この週刊誌に、なにかあるのか?」
「ページをめくればわかる。」
ジュンブライトが、ページをめくると、目を大きく見開いた。
「どうしたの?ジュンブライト。」
「見ろ!」
ジュンブライトが、指をさした方を見ると・・・・・・。
なにこの記事!しかも、私が写ってる!
「俺も写っているけど、モザイクで、俺のかっこいい顔が、隠れてるぜ~。真莉亜のかわいい顔も、モザイクで、隠れてるぜ~。」
そこかいっ!
「王子!隠し撮りされていたんですよ!」
「しかも、週刊誌に載せられているんですよっ!」
「ぬわんだとぉ~!?」
気づくのおそっ。
「えーっと、『ヴァンパイア界の王子、ジュンブライト!熱愛報道!お相手は、超~かわいい、人間の美少女!』だって。」
び、美少女なんて、照れますよぉ~。私、ヴァンパイア界で、有名になってるんですね。
「照れてる場合じゃねぇぞ。」
「おバカな真莉亜ちゃんも、ステキだぁ!」
失礼ですね。
「ヴァンパイア界のマスコミめ!よくもジュンブライト様を傷つけたわね!文句言ってやる!」
あのう、私も被害者なんですけど・・・・・・。
「クリス、やめなさい。文句言ったら、あなたも取り上げられるわよ。『ヴァンパイア界の王子、ジュンブライト!二股発覚!』って。」
「お前、よく冷静に言えるなぁ。」
「んで、話の続きをしてくれないかい?」
「あれは、一週間前だった。」
ウルフ一郎さんが、一人で本屋さんで本を読んでいると、ある記事が、ウルフ一郎さんの目に入った。
「ん!?ヴァンパイア界の王子、ジュンブライト!熱愛報道・・・・・・お相手は、超~かわいい、人間界の美少女・・・・・・え~!?真莉亜ちゃん、ヴァンパイア界の王子と、つきあったのぉ~!?んで、んで?菜の花広場で熱いキスをしたり、だきあったりしていた・・・・・・。」
怒りにたえきれなくなったウルフ一郎さんは、とうとう・・・・・・。
「こんのぉ~!ヴァンパイア界の王子め!真莉亜ちゃんとつきあったりして!ゆるさん!真莉亜ちゃんは、俺様のものだぁ~!」
週刊誌を買うことにした。
「おっさん!この本をくれ!」
「はいよ。230円ね。」
「はい!」
「あぁ!あんちゃん、おつり!」
「おつりはいらねぇ!急な用事が入ったんだ!」
「?」
「ヴァンパイア界の王子め!俺様のうらみをあびさせてやる!それと・・・・・・真莉亜ちゅわーん♡いつか、君の元に行くから、俺様とつきあってーん♡
・・・・・・というわけです。
「兄貴、あきらめましょう。」
「そうですよ。これ以上、真莉亜ちゃんにめいわくかけたらだめですよ。」
「いやだねーだ!俺様の恋はまだ、終わってねぇ!」
ウルフ一郎さんの目が、燃えてる!
「テレサとつきあえばいいじゃねぇか?なぁ、テレサ。」
「あたし、獣くさい彼氏は、ごめんだよ。」
「獣くさい言うなっ!」
「んじゃあ、そこらへんの犬と、つきあえばいいじゃねぇか?」
「俺様を犬扱いするなっ!」
「あぁ、確かに。」
ウルフ次郎さんと、ウルフ三郎さんが、うんうんとうなずく。
「くおうら!お前ら!感心するんじゃねぇ!」
ウルフ一郎さん、気持ちはわかりますが・・・・・・ごめんなさい。
(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・・。)
「そ、そんなぁ~!」
「ひゃ―っはっはっはっはっは!フラれてやんの―!」
「笑うなっ!」
「オオカミのおじさん、この二人には、子供がいるの。」
「へぇー、そうなんだぁ・・・・・・え~!?」
ソラちゃん、ありがとう。
「ソラ、本当のこと、話しちゃったわね。」
「子供は正直ねぇ。」
「あたし、黒月道華。10歳。好きな食べものは、ナポリタン。身長140cm。未来から来たの。」
ウルフ一郎さんは、道華を見て、口をポカーンと開けている。
「え~!?っていうことは・・・・・・。」
「そう。王子と真莉亜様の、未来の子供です。」
ウルフ一郎さんは、そのままうなり始めた。
「兄貴、あきらめましょう。」
「そうですよ。真莉亜ちゃんは、未来でもしあわせに暮らしていますから。」
「・・・・・・うおぉぉぉぉぉ!もう、がまんできねぇ!ヴァンパイア界の王子!」
ウルフ一郎さんは、びしっとジュンブライトの方を指さした。
「今日からお前は、俺様の恋のライバルだぁ!」
え~!?
「ジュンブライトお兄様!」
ジュンブライトは、ニッと笑った。
「にっしっしっしっし!いいだろう。オオカミヤロー、覚悟しとけよ!」
あちゃ~。まあたややこしくなっちゃったよ~。
「それと、よくも俺の顔を傷つけやがって!治療費払え!」
「どぅわぁれが、お前の治療費を払うか、ぶあか。」
「なんだとぉ?」
「やんのかオラ!」
「二人とも!けんかはやめてください!」
私が止めると、二人は目をハートにして、私の方を向いた。
「はーい♡」
「キャラ、変えるタイミング、同じだね。」
「あ。」
どうしたんですか?ウルフ一郎さん。
「俺様、いいこと考えたーん♡」
なに?なに?
ウルフ一郎さんは、ニヤニヤしながら、私達の方を振り向いた。
「今日から俺様、ここに住むぅ~♡」
「え~!?」
「おい!お前、真莉亜と久しぶりに会って、頭、おかしくなったんじゃねぇのか!?」
ジュンブライトが、ウルフ一郎さんの肩を、両手でぶるんぶるんと振った。
「頭が元に戻る薬を、出しましょう!」
そんな薬、あるの?
「兄貴!バカなこと、言わないでください!」
「おとぎの国に、帰りますよ!」
ウルフ次郎さんと、ウルフ三郎さんが、ウルフ一郎さんを、連れ戻そうとしている。
「いやだ、いやだぁ!俺様、ここに住むぅ!真莉亜ちゃんと、一緒にいたーい!」
ウルフ一郎さんは、欲しいおもちゃを買ってもらえなくて、おもちゃ屋さんの前で、足をじたばたしながら泣いている子供みたいに、足をじたばたしながら、泣いている。
「ちょっとまってください。」
ルクトさんが、帰ろうとしているオオカミ三兄弟さん達を止めた。
「ウルフ一郎様、ここに住んでいいですよ。」
「え!?」
ウルフ一郎さんが、泣きやんで、ルクトさんの顔を見た。
「ルクトさん、本気で言ってるのかい?」
「はい。」
ルクトさんは、笑顔でうなずいて、ウルフ一郎さんの方を向いた。
「あなたがここに来れば、ますます、にぎやかになりますからね。」
「ゔ・・・・・・うわーん!」
ウルフ一郎さんは、泣きながら、ルクトさんにしがみついた。
「ありがとう、ヴァンパイア界の王子のしつじ!恩に切るぜ!」
「あのう、人の服で鼻水をふくの、やめてもらいます?」
「おい、お前ら。一回、帰って、兄貴の服とか全部もって来い。」
「はいっ!」
☆
「えっとぉ、歯みがきOK、パジャマOK、靴下OK、パンツOK、シャツOK・・・・・・。」
「兄貴!」
ウルフ一郎さんが振り返ると、顔をくしゃくしゃにしながら泣いている、ウルフ次郎さんと、ウルフ三郎さんがいた。
「お元気でいてくださいねっ!」
「手紙、送ってくださいねっ!」
ウルフ一郎さんは、二人の肩を、ポンっとたたいた。
「お前らも、元気でいろよ。手紙、ちゃんと書くから。」
「は・・・・・・はい!」
「じゃあな、ウルフ次郎、ウルフ三郎。こぶたちゃん達と元気でいてくれよな。」
「兄貴・・・・・・!」
「そんなに泣くな。男だろ?」
「兄貴!また会う日まで!」
「おう!」
二人は、鏡の中に入って行っちゃった。
「さあてと・・・・・・。」
ウルフ一郎さんは、目をハートにしながら、私の方を振り向いた。
「真莉亜ちゅわーん♡俺様と、熱ーい夜を過ごそー♡」
「ごめんなさい。私、みんなとここに、住んでいないので。」
「え―っ?おうちに帰っちゃうのぉ?」
はい。道華、行こっ。
「うん!」
私は、道華と手をつないで、家に帰ろうとしていた。
「まって!真莉亜ちゃん!」
ウルフ一郎さんが、帰ろうとしている、私と道華を止めた。
「明日なら、会えるよね?」
はい。
「やったぁ!」
ウルフ一郎さんが飛び上がった瞬間、ジュンブライトと、マドレーヌちゃんと、ギロさんが、ウルフ一郎さんの背後に立った。
「おい、オオカミヤロー。俺達と、風呂に入ろうぜ。」
ウルフ一郎さんは、顔をムスッとして、横を向いた。
「ふん!誰がお前らと風呂なんか入るかぶあか。」
「なんだとぉ?」
「やんのかオラ!」
「先輩!なんでそこで、けんかするんですか!」
ギロさんが、二人のけんかに割りこんだ。
「俺の言うことが聞けないなら・・・・・・クリス、アキ、ソラ、リリア、ギロ!」
「ニャーッ!」
クリスさんと、アキちゃんと、ソラちゃんは、猫顔になって飛び出し、リリアさんと、ギロさんは、ヴァンパイアキャットになった。
「ひぃぃぃぃぃ!」
ウルフ一郎さんは、私の背後に隠れた。
「猫地獄を味わせてやるぞ!」
「聞きますから、聞きますからぁ!」
クリスさんと、アキちゃんと、ソラちゃんは、元の顔に戻り、リリアさんと、ギロさんは、ヴァンパイアになった。
「じゃあ、ウルフ一郎お兄様!早く一緒にお風呂に入りましょう!」
マドレーヌちゃんは、ウルフ一郎さんの手をつないで、風呂場へ走り出した。
「真莉亜ちゅわーん♡また、明日ね~♡」
ウルフ一郎さんは、手をつながれたまま、走りながら、私の方に手を振った。
私も笑顔で手を振った。
「俺達も行くか。」
「はいっ。」
ジュンブライトとギロさんは、風呂場へ歩き始めた。
「マドレーヌの体、ちゃんと洗えよな。」
「か、か、か、か、か、か、体を洗えだとぉ!?いとこのお前がやれっ。」
「ギロ~。」
「あー!わかった、わかった!洗いまーす!」
ジュンブライト達の話し声が、遠くに消えて行った。
こうして、ウルフ一郎さんは、人間界に住むことになりました。
今後の毎日が楽しみです。
「なんで三人が、ここに来てるんですか!?」
まだ、わかりません。
「なんか、あやしいですね。」
マドレーヌちゃんが、あやしい目で、三人を見つめた。
「まあた、真莉亜をお嫁にしようとしに来たんじゃない?」
「いや、そうじゃないと思う。」
「ねぇお母さん。あのオオカミさん達と、どんな関係なの?」
道華が、オオカミ三兄弟さん達の方を、不思議そうに指さした。
「えっとぉ・・・・・・。」
「俺様と、赤い糸で繋がっている、関係だよーん♡」
そうそう、あの、サングラスをかけているオオカミさんと、私は・・・・・・って、ちがーう!
「なーに言ってんだボケ―ッ!」
「先輩!手当てをしている時に、人をたたかないでください!」
「俺様はオオカミだっ。」
「本当のこと、教えなさいよ。」
「そうだよ!」
「私にも教えて。」
「あたしにも。」
「俺にも。」
「早く言いな。」
わかりました。
私と、ジュンブライトと、ルクトさんと、マドレーヌちゃんと、リリアさんが、最後の石のこぶた三兄弟に会った時、オオカミ三兄弟さん達が来たんだ。
そのころのオオカミ三兄弟さん達は、みんなにいじわるをしたり、食べようとする、おとぎの国で有名な、不良だったんだ。
で、オオカミ三兄弟さん達は、ジュンブライトを食べようとして、おそったんだ。
私が止めたけど、オオカミ三兄弟のなかの長男、ウルフ一郎さんが、私に一目ぼれして、なんだかんだで、結婚式を挙げることになったんだ。
結婚式の途中、ジュンブライト達と、クリスさんと、こぶた三兄弟さん達が、助けに来てくれて、私は、ウルフ一郎さんと結婚せずにすんだんだ。
「未来のお父さんが言ってたオオカミさんって、あのオオカミさん!?」
そうだよ。
「つきあえばいーじゃん。あんた達、すっごくお似合いだから。」
アキちゃん!よけーなこと、言わないでよ!
ウルフ一郎さんは、ぎゅっと、アキちゃんをだきしめた。
「そう?素直なガキだなぁ。よし、ビーフジャーキーをやろう!」
「そんなもん、もらって喜ぶ、バカがいるか。」
「あたし、猫娘だから、そんなもの、苦手なの。ほかのお肉なら、食べれるけどね。」
「!?」
ウルフ一郎さんは、顔を真っ青にして、アキちゃんから離れた。
ウルフ一郎さん、猫が苦手だったっけ。
「俺様達もだっ。」
「そーだったなぁ。」
兄弟全員、猫恐怖症ですね。
「ニャ―ッ!」
「うぎゃゃゃゃゃゃあ!」
「やめんかいっ!」
テレサさんが、クリスさんと、アキちゃんと、ソラちゃんを止めた。
「いやがってるじゃないか。手加減というものを知らないやつは、バカだよ。」
「はーい。」
クリスさん達は、顔をしゅんとした。
「ありがとう、姐さん!」
ウルフ一郎さん達が、テレサさんの手を、ぎゅっと両手でにぎった。
「あたしはいつ、あんた達の姐さんになったんだい。」
「肝心なとこ、忘れてるわよ。」
「そうそう!なんで人間界に来たんですか?」
「うふふふふ♡それはね・・・・・・。」
ウルフ一郎さんは、ジュンブライトの方へ走り出し、胸ぐらを引っ張って、サングラスの奥に光る目でジュンブライトの顔をにらんだ。
「ヴァンパイア界の王子!貴様に用があるんだよぉ!」
「はぁ!?」
「ちょっとまってくれ!まさか、おとぎの国で、あそこをけられたことを、うらんでいるのか!?」
下ネタ言うな。
「あぁ!ごめん!俺が悪かった!たのむ、ゆるしてくれ!お前の好きなもん、なんでも買ってあげるから!ほら、肉とか、ステーキとか・・・・・・。」
ウルフ次郎さん!ウルフ三郎さん!よだれ、滝のように流れてるよ!
「本当ですか!?ジュンブライトの兄貴!」
「なんて優しい人なんでしょう!」
「なんでお前らが、反応するんだ。てか、俺はいつ、お前らの兄貴になったんだ。あと、よだれ、大量に出てるし。」
「そーゆーことで、うらんでねぇ。」
「んじゃあ、なんなんだよ。」
ウルフ一郎さんは、顔をジュンブライトの方に近づけた。
「貴様ぁ!俺様がふるさとにいる間に、真莉亜ちゃんとつきあったなぁ!」
「えぇ~!?」
「なんで知ってるんだよ!」
「ふっ、ふっ、ふっ、ふ。それはな、これだぁ!」
ウルフ一郎さんが、懐から取り出したのは、一冊の本だった。
表紙には、きれいな女の人が載っていて、題名は、『週刊おとぎ』という本だった。
「これ、週刊誌じゃない。」
紅葉、読んだことあるの?
「あたり前じゃない。私、おとぎの国出身だから。」
「お父様がよく、読んでました。お父様、若いころ、マスコミに、女性と一緒にデートをしているところを、隠し撮りされて、この本に載せられ、3日間、ずっとお城にひきこもってたって、言ってました。」
マドレーヌちゃん、そーゆー情報、いらないから。
「あ、言わないっていう約束を、破ってしまいましたぁ~。」
「破るなよっ。ところで、この週刊誌に、なにかあるのか?」
「ページをめくればわかる。」
ジュンブライトが、ページをめくると、目を大きく見開いた。
「どうしたの?ジュンブライト。」
「見ろ!」
ジュンブライトが、指をさした方を見ると・・・・・・。
なにこの記事!しかも、私が写ってる!
「俺も写っているけど、モザイクで、俺のかっこいい顔が、隠れてるぜ~。真莉亜のかわいい顔も、モザイクで、隠れてるぜ~。」
そこかいっ!
「王子!隠し撮りされていたんですよ!」
「しかも、週刊誌に載せられているんですよっ!」
「ぬわんだとぉ~!?」
気づくのおそっ。
「えーっと、『ヴァンパイア界の王子、ジュンブライト!熱愛報道!お相手は、超~かわいい、人間の美少女!』だって。」
び、美少女なんて、照れますよぉ~。私、ヴァンパイア界で、有名になってるんですね。
「照れてる場合じゃねぇぞ。」
「おバカな真莉亜ちゃんも、ステキだぁ!」
失礼ですね。
「ヴァンパイア界のマスコミめ!よくもジュンブライト様を傷つけたわね!文句言ってやる!」
あのう、私も被害者なんですけど・・・・・・。
「クリス、やめなさい。文句言ったら、あなたも取り上げられるわよ。『ヴァンパイア界の王子、ジュンブライト!二股発覚!』って。」
「お前、よく冷静に言えるなぁ。」
「んで、話の続きをしてくれないかい?」
「あれは、一週間前だった。」
ウルフ一郎さんが、一人で本屋さんで本を読んでいると、ある記事が、ウルフ一郎さんの目に入った。
「ん!?ヴァンパイア界の王子、ジュンブライト!熱愛報道・・・・・・お相手は、超~かわいい、人間界の美少女・・・・・・え~!?真莉亜ちゃん、ヴァンパイア界の王子と、つきあったのぉ~!?んで、んで?菜の花広場で熱いキスをしたり、だきあったりしていた・・・・・・。」
怒りにたえきれなくなったウルフ一郎さんは、とうとう・・・・・・。
「こんのぉ~!ヴァンパイア界の王子め!真莉亜ちゃんとつきあったりして!ゆるさん!真莉亜ちゃんは、俺様のものだぁ~!」
週刊誌を買うことにした。
「おっさん!この本をくれ!」
「はいよ。230円ね。」
「はい!」
「あぁ!あんちゃん、おつり!」
「おつりはいらねぇ!急な用事が入ったんだ!」
「?」
「ヴァンパイア界の王子め!俺様のうらみをあびさせてやる!それと・・・・・・真莉亜ちゅわーん♡いつか、君の元に行くから、俺様とつきあってーん♡
・・・・・・というわけです。
「兄貴、あきらめましょう。」
「そうですよ。これ以上、真莉亜ちゃんにめいわくかけたらだめですよ。」
「いやだねーだ!俺様の恋はまだ、終わってねぇ!」
ウルフ一郎さんの目が、燃えてる!
「テレサとつきあえばいいじゃねぇか?なぁ、テレサ。」
「あたし、獣くさい彼氏は、ごめんだよ。」
「獣くさい言うなっ!」
「んじゃあ、そこらへんの犬と、つきあえばいいじゃねぇか?」
「俺様を犬扱いするなっ!」
「あぁ、確かに。」
ウルフ次郎さんと、ウルフ三郎さんが、うんうんとうなずく。
「くおうら!お前ら!感心するんじゃねぇ!」
ウルフ一郎さん、気持ちはわかりますが・・・・・・ごめんなさい。
(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・・。)
「そ、そんなぁ~!」
「ひゃ―っはっはっはっはっは!フラれてやんの―!」
「笑うなっ!」
「オオカミのおじさん、この二人には、子供がいるの。」
「へぇー、そうなんだぁ・・・・・・え~!?」
ソラちゃん、ありがとう。
「ソラ、本当のこと、話しちゃったわね。」
「子供は正直ねぇ。」
「あたし、黒月道華。10歳。好きな食べものは、ナポリタン。身長140cm。未来から来たの。」
ウルフ一郎さんは、道華を見て、口をポカーンと開けている。
「え~!?っていうことは・・・・・・。」
「そう。王子と真莉亜様の、未来の子供です。」
ウルフ一郎さんは、そのままうなり始めた。
「兄貴、あきらめましょう。」
「そうですよ。真莉亜ちゃんは、未来でもしあわせに暮らしていますから。」
「・・・・・・うおぉぉぉぉぉ!もう、がまんできねぇ!ヴァンパイア界の王子!」
ウルフ一郎さんは、びしっとジュンブライトの方を指さした。
「今日からお前は、俺様の恋のライバルだぁ!」
え~!?
「ジュンブライトお兄様!」
ジュンブライトは、ニッと笑った。
「にっしっしっしっし!いいだろう。オオカミヤロー、覚悟しとけよ!」
あちゃ~。まあたややこしくなっちゃったよ~。
「それと、よくも俺の顔を傷つけやがって!治療費払え!」
「どぅわぁれが、お前の治療費を払うか、ぶあか。」
「なんだとぉ?」
「やんのかオラ!」
「二人とも!けんかはやめてください!」
私が止めると、二人は目をハートにして、私の方を向いた。
「はーい♡」
「キャラ、変えるタイミング、同じだね。」
「あ。」
どうしたんですか?ウルフ一郎さん。
「俺様、いいこと考えたーん♡」
なに?なに?
ウルフ一郎さんは、ニヤニヤしながら、私達の方を振り向いた。
「今日から俺様、ここに住むぅ~♡」
「え~!?」
「おい!お前、真莉亜と久しぶりに会って、頭、おかしくなったんじゃねぇのか!?」
ジュンブライトが、ウルフ一郎さんの肩を、両手でぶるんぶるんと振った。
「頭が元に戻る薬を、出しましょう!」
そんな薬、あるの?
「兄貴!バカなこと、言わないでください!」
「おとぎの国に、帰りますよ!」
ウルフ次郎さんと、ウルフ三郎さんが、ウルフ一郎さんを、連れ戻そうとしている。
「いやだ、いやだぁ!俺様、ここに住むぅ!真莉亜ちゃんと、一緒にいたーい!」
ウルフ一郎さんは、欲しいおもちゃを買ってもらえなくて、おもちゃ屋さんの前で、足をじたばたしながら泣いている子供みたいに、足をじたばたしながら、泣いている。
「ちょっとまってください。」
ルクトさんが、帰ろうとしているオオカミ三兄弟さん達を止めた。
「ウルフ一郎様、ここに住んでいいですよ。」
「え!?」
ウルフ一郎さんが、泣きやんで、ルクトさんの顔を見た。
「ルクトさん、本気で言ってるのかい?」
「はい。」
ルクトさんは、笑顔でうなずいて、ウルフ一郎さんの方を向いた。
「あなたがここに来れば、ますます、にぎやかになりますからね。」
「ゔ・・・・・・うわーん!」
ウルフ一郎さんは、泣きながら、ルクトさんにしがみついた。
「ありがとう、ヴァンパイア界の王子のしつじ!恩に切るぜ!」
「あのう、人の服で鼻水をふくの、やめてもらいます?」
「おい、お前ら。一回、帰って、兄貴の服とか全部もって来い。」
「はいっ!」
☆
「えっとぉ、歯みがきOK、パジャマOK、靴下OK、パンツOK、シャツOK・・・・・・。」
「兄貴!」
ウルフ一郎さんが振り返ると、顔をくしゃくしゃにしながら泣いている、ウルフ次郎さんと、ウルフ三郎さんがいた。
「お元気でいてくださいねっ!」
「手紙、送ってくださいねっ!」
ウルフ一郎さんは、二人の肩を、ポンっとたたいた。
「お前らも、元気でいろよ。手紙、ちゃんと書くから。」
「は・・・・・・はい!」
「じゃあな、ウルフ次郎、ウルフ三郎。こぶたちゃん達と元気でいてくれよな。」
「兄貴・・・・・・!」
「そんなに泣くな。男だろ?」
「兄貴!また会う日まで!」
「おう!」
二人は、鏡の中に入って行っちゃった。
「さあてと・・・・・・。」
ウルフ一郎さんは、目をハートにしながら、私の方を振り向いた。
「真莉亜ちゅわーん♡俺様と、熱ーい夜を過ごそー♡」
「ごめんなさい。私、みんなとここに、住んでいないので。」
「え―っ?おうちに帰っちゃうのぉ?」
はい。道華、行こっ。
「うん!」
私は、道華と手をつないで、家に帰ろうとしていた。
「まって!真莉亜ちゃん!」
ウルフ一郎さんが、帰ろうとしている、私と道華を止めた。
「明日なら、会えるよね?」
はい。
「やったぁ!」
ウルフ一郎さんが飛び上がった瞬間、ジュンブライトと、マドレーヌちゃんと、ギロさんが、ウルフ一郎さんの背後に立った。
「おい、オオカミヤロー。俺達と、風呂に入ろうぜ。」
ウルフ一郎さんは、顔をムスッとして、横を向いた。
「ふん!誰がお前らと風呂なんか入るかぶあか。」
「なんだとぉ?」
「やんのかオラ!」
「先輩!なんでそこで、けんかするんですか!」
ギロさんが、二人のけんかに割りこんだ。
「俺の言うことが聞けないなら・・・・・・クリス、アキ、ソラ、リリア、ギロ!」
「ニャーッ!」
クリスさんと、アキちゃんと、ソラちゃんは、猫顔になって飛び出し、リリアさんと、ギロさんは、ヴァンパイアキャットになった。
「ひぃぃぃぃぃ!」
ウルフ一郎さんは、私の背後に隠れた。
「猫地獄を味わせてやるぞ!」
「聞きますから、聞きますからぁ!」
クリスさんと、アキちゃんと、ソラちゃんは、元の顔に戻り、リリアさんと、ギロさんは、ヴァンパイアになった。
「じゃあ、ウルフ一郎お兄様!早く一緒にお風呂に入りましょう!」
マドレーヌちゃんは、ウルフ一郎さんの手をつないで、風呂場へ走り出した。
「真莉亜ちゅわーん♡また、明日ね~♡」
ウルフ一郎さんは、手をつながれたまま、走りながら、私の方に手を振った。
私も笑顔で手を振った。
「俺達も行くか。」
「はいっ。」
ジュンブライトとギロさんは、風呂場へ歩き始めた。
「マドレーヌの体、ちゃんと洗えよな。」
「か、か、か、か、か、か、体を洗えだとぉ!?いとこのお前がやれっ。」
「ギロ~。」
「あー!わかった、わかった!洗いまーす!」
ジュンブライト達の話し声が、遠くに消えて行った。
こうして、ウルフ一郎さんは、人間界に住むことになりました。
今後の毎日が楽しみです。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる