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第十八話 「ヒアン様がやって来た!」

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今日、ヒアン様が帰るから、クッキーでも焼こうっと。
えっとぉ、卵と、バターと、牛乳と、小麦粉・・・・・・よし、これで準備完了!
 
「お母さん、なにやってるの?」
 
あ、道華。クッキーをつくろうとしているの。
 
「クッキーを?なんで?」
 
「今日、ヒアン様が帰るからよ。道華も一緒につくる?」
 
「ふん!おじいちゃんなんか、大っ嫌い!」
 
道華はソファーにすわって、ゲームをし始めた。
道華・・・・・・。
 
「満月荘なんか、行きたくない!」
 
「道華。」
 
私は、道華に優しく声をかけた。
 
「ヒアン様、昨日は道華を厳しくしつけていたけど、本当は、優しく接したかったんだよ。だって、ヒアン様は、子育てに不器用だから。そう思ったかもしれないよ。」
 
「・・・・・・。」
 
道華は、私の方を振り向いた。
 
「だから、一緒につくろっ。」
 
私は、にこっと笑った。
 
「うん!あたし、おじいちゃんのために、クッキーつくるぅ!」
 
道華は笑顔になって、うなずくと、台所へと真っ先に向かった。
 
 

 
 
「道華、結局来なかったな。」
 
「真莉亜も来なかったし。」
 
「きっと、昨日のことで、家にこもってるじゃないでしょうか。」
 
「・・・・・・だと、いいけど。」
 
「気にするな。孫の顔が見れて、よかった。」
 
「大王様・・・・・・。」
 
ガラッ!
 
「ヒアン様!」
 
「真莉亜さん、道華!」
 
ヒアン様は驚いて、私と道華の方を歩き始めた。
 
「これ、よかったら食べてくださいっ!」
 
私は、ヒアン様の前に、水色の小さい袋に入ったクッキーを出した。
ヒアン様はそれを無言で受け取った。
 
「なんだ?これ。」
 
ヒアン様は、クッキーをじろじろ見つめた。
 
「人間界のお菓子です。とてもおいしいですよ。」
 
「クッキーって、いうんだよ!」
 
道華と一緒に作ったんです。
 
「ありがとう。道華・・・・・・。」
 
ヒアン様は、道華の方を向いた。
 
「昨日は悪かったな。」
 
「ううん、いいの。お仕事、頑張ってねっ。おじいちゃん、大好きだよ!」
 
「真莉亜さん、息子をよろしくお願いします。」
 
はいっ。
 
「もし、なにかあったら、私に連絡してください。連絡先、教えますから。」
 
ありがとうございますっ。
 
「メアド交換、するなっ。」
 
「あたしの連絡先、教えましょうか?」
 
「あたしのも!」
 
「ありがたく、教えてもらう。」
 
「そこまで教えなくても・・・・・・。」
 
そうだね。
 
「それじゃあ、また会う日まで。」
 
「さようなら。」
 
「親父、元気でな。」
 
「お体に気を付けて。」
 
ヒアン様はにこっと笑って、鏡の中に入って行っちゃった。
 
「・・・・・・帰っちゃったねぇ。」
 
「ん?道華、なにそれ。」
 
アキちゃんが、道華が持っているピンク色の小さな袋を指さすと、道華は笑顔で、ジュンブライトのところまで走って行った。
 
「お父さん!これ、あげる!」
 
道華は、ジュンブライトに、ピンク色の小さな袋を渡した。
 
「道華がつくったのか?」
 
「うんっ!」
 
道華は大きくうなずいた。
 
「道華、あんたの分もつくるって言い出して、つくったのよ。」
 
「女の子らしいわね。」
 
紅葉が道華をほめた。
 
「いつも遊んでくれて、ありがとう!お父さん、大好きだよ!」
 
道華がにこっと笑うと、ジュンブライトは、目をハートにした。
 
「ありがと~♡俺のことを想って、つくってくれたのかぁ~♡さっすが、俺の娘だぜぇ~♡お嫁には、いかせないぜぇ~♡」
 
「親バカですね、先輩。」
 
「私のお父様にそっくりです。」
 
「では、いただきま~す。」
 
ジュンブライトが、道華のクッキーをぱくっと食べた、その時。
 
「・・・・・・!」
 
どうしたの?そんなに口をおさえて。
 
「なぁ、道華。このクッキーに、なにを入れたんだ?」
 
「わさびと、からしと、マヨネーズと、納豆。」
 
道華、不器用な」ところも、ジュンブライトにそっくり。
 
「それが、どうしたの?」
 
「ア・・・・・・ア八ッ、アハハハハ。これ、すっごくおいしいなぁ。」
 
ジュンブライトは、つくり笑いを浮かべた。
 
「ジュンブライト様、無理しなくてもいいのに・・・・・・。」
 
そうだね、ソラちゃん。
 
「アハハハハ。」
 
ジュンブライトは、道華がつくったクッキーを、半分おいしそうに食べた。
 
「マ、マズイ・・・・・・。」
 
「先輩、そんなに食べると、お腹、壊しますよ。お薬、出しときましょうか?」
 
「いや、いい。」
 
 
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