41 / 185
第十八話 「ヒアン様がやって来た!」
しおりを挟む
私は、紅葉とクリスさんと一緒に、宿題をしていた。
「あ―も―!ここ、わかんなーい!」
「テレサ、これ、時事問題?」
「そうだよ。」
もう、出さないでくださいよぉ。
「ねぇ、お母さん。」
道華が、私の洋服をぐいぐいひっぱって来た。
「もう、勉強の邪魔、しないでくれる?」
「してないもん!」
してるじゃん。
「どうしたんだ、道華。」
ジュンブライトがやって来ると、道華はジュンブライトにだきついて来た。
「おじいちゃんって、どんな人?」
「どっちの方のだ。」
「お父さんの方。あたし、顔は知っているけど、どんな人か、わからないの。死んだから。」
ジュンブライトはしばらく、「う~ん。」と、うなった。
それから、ジュンブライトは、ルクトさんに話しかけた。
「じいや。俺の親父がどんな人か、言えるか?」
ルクトさんは、にこっと笑った。
「もちろん。大王様は、とてもどえらい方で、ヴァンパイア界を治める、すばらしいお方です。」
ルクトさんに続いて、マドレーヌちゃんが口を出した。
「ヒアンおじ様は、とても優しいんですよ。」
マドレーヌちゃんに続いて、リリアさんが口を出した。
「ヒアン様は、とてもかっこいいお方よ。」
「へぇー。」
「ジュンブライト様のお義父様って、とてもすごい人なんですねっ。」
アキちゃんが、目を輝かせた。
「お義父様言うなっ。」
「道華のおじいちゃんって、ものすごくえらい方なんだねっ。」
ソラちゃんが、アキちゃんと一緒に、目を輝かせた。
「うん!」
道華が笑顔でうなずくと、ジュンブライトは、ふっと、鼻で笑った。
「なにが、とてもすごい人だ。親父はな、とても頑固で、怒りん坊で、げんこつするのが得意なんだぜ。俺だって、240回、げんこつされたんだぜ。そのくらい、とてもこわーい人なんだ、ニヒニヒニヒニヒ。」
うんうん・・・・・・って、ジュンブライト!なんて失礼なこと、言ってんの!
もしここに、ヒアン様がいたら、カンカンに怒るよ!
「ジュンブライト!貴様、よくも父親に向かって、そんな悪口が言えたな!」
って、怒るかもしれないよっ。
・・・・・・ん?今、私のとなりで男の人の声が聞こえたような・・・・・・気のせいかな?
「ま・・・・・・真莉亜・・・・・・となりに、ヒアン様がいる!」
紅葉、うそつかないでよぉ。ヒアン様が、ここに来るわけ・・・・・・。
「ゆるさん!」
・・・・・・。
「えぇ~!?」
私達は、大きな声を出して、驚いた。
「だ、だ、だ、だ、大王様!なぜここに!?」
「あとで説明する。」
ヒアン様は、こぶしをかまえながら、ジュンブライトに近づいた。
「ジュンブライト!後ろ!」
「ん?」
ジュンブライトが、後ろを振り返ると、ヒアン様が、こぶしをかまえながら、立っていた。
その瞬間、ジュンブライトの顔が、真っ青になった。
「げっ・・・・・・。」
「こんのぉ~!父親をばかにしおってぇ~!」
ボカーン!
「ゔぅ、げんこつされたの、これで241回目・・・・・・。」
ジュンブライトは泣きながら、でっかいたんこぶをおさえた。
「お久しぶりです、ヒアン様っ。」
「おぉ、真莉亜さん。元気にしていましたか?」
はいっ。
「それはよかった。」
「お義父様~♡お久しぶりでぇ~す♡」
クリスさんが、目をハートにして、ヒアン様に近づいて来た。
「私はいつ、君のお義父さんになったんだね。」
「ヒアンおじ様っ。お父様はお元気ですか?」
マドレーヌちゃんが、笑顔でヒアン様に聞いて来た。
「あぁ。お前がまたいなくなって、相当、悲しんでたぞ。」
リアン様は、親バカだったね。
「なぁ、親父。なんでここに来たんだよぉ。」
「お前の様子を見に来たんだ。真莉亜さんとどんな生活を送っているのか、気になってな。」
「ということは、満月荘に泊まるのかい?」
ヒアン様が笑顔でうなずいた。
「あぁ。明日、ヴァンパイア界に帰る。」
「やったぁ~♪」
道華がうれしそうに跳びはねると、ヒアン様があやしい目で、道華を見つめた。
「誰だ、この子は。」
ヒアン様が、道華の方を指さした。
「死んだおじいちゃんと明日まで一緒にすごせるなんて、うれしい!」
道華がうれしそうに、ヒアン様にだきついて来た。
あ・・・・・・あぁ・・・・・・。
「ジュンブライト!」
ヒアン様が怒った。
「なんだよ!」
ジュンブライトが、怒りながらヒアン様の方を振り向いた。
「貴様、真莉亜さんをおそって、子供をつくらせたな!」
ヒアン様、そ、それには深ーい理由が・・・・・・。
「ちげーよ。誰が真莉亜をおそって、子供をつくらせるか、ぶあーか。」
「言いわけはゆるさん!別れてもらうぞ!」
「大王様!話を聞いてくださいっ。」
「ふん、聞くもんか。さ、ヴァンパイア界に帰るぞ。」
ヒアン様は、ジュンブライトのうでを強くひっぱって、鏡の方へ向かった。
「ちょっ・・・・・・離せよぉ!」
ど、どうしよう・・・・・・。
このままじゃ、ジュンブライトが帰っちゃう・・・・・・。
「まってください、ヒアン様!」
私が止めると、ヒアン様が立ち止まり、私の方を振り返った。
「真莉亜・・・・・。」
「これには、とっても深ーい話があるんですっ。お願いです!私の話を聞いてください!」
ヒアン様は、真っ赤にして、ジュンブライトのうでを離した。
「・・・・・・・わかった。聞いてやろう。」
「今、真莉亜のこと、かわいいと思ったな。」
☆
私は、道華のことを全部話した。
「ジュンブライトと真莉亜さんの未来の子供で、ヴァンパイアと人間のハーフかぁ。」
ヒアン様、わかってくれたみたい。
「未来でルクトと私は死んでるなんて、ショックだなぁ。」
ヒアン様が、冷たい麦茶をごくごくと飲み始めた。
「で、この双子の姉妹は?」
ヒアン様が、アキちゃんとソラちゃんを見つめた。
「あたしの双子の妹の・・・・・・。」
「アキで~す。」
「ソラで~す。」
ヒアン様は、首をひねった。
「うーむ、見分けがわからんなぁ。」
ピンク色の髪の毛がアキちゃんで、水色の髪の毛がソラちゃんです。
「説明ありがとう。」
「ただいまぁ~。」
ギロさんが帰って来た!
「お帰り、ギロ。」
「ただいま、リッちゃん。あ、これ。」
ギロさんが、弁当袋に包まれた弁当箱を、リリアさんに渡した。
「オムライス弁当、おいしかったよ。明日、つくってよ。」
「あなた、卵料理ばっかり食べると、体が悪くなるわよ。」
「それはわかってる。だって俺、医者だから。ん?」
ギロさんは、ゆっくりしているヒアン様に気づいた。
「リッちゃん。」
「なに?ギロ。」
ギロさんは、ヒアン様の方を指さした。
「このおじさん、誰?」
「・・・・・・!?」
ギロさん!失礼ですよ!
「こんのぉ~!私に向かって、おじさんって言ったなぁ!」
「ひぃぃぃぃぃ!」
ギロさんはぶるぶるおびえ始めた。
「ギロ!このお方は、ヴァンパイア界の大王、ヒアン様で・・・・・・。」
「ジュンブライトの親父さんだよっ。」
「え?え?」
ギロさんは、ヒアン様の顔を、見たり見なかったりした。
「えぇ~!?せ、せ、せ、先輩の、親父さ~ん!?」
「驚きすぎだろ。」
「こ、こ、こ、これは、失礼しましたぁ~!」
ギロさんが、ヒアン様に土下座で謝った、その時。
ゴン!
おでこを強く打っちゃった。
「・・・・・・痛いよぉ。」
ギロさんは、泣きながら、おでこを両手でおおった。
「君は天然だな。」
「こちらは、私の幼なじみで、私の恋人の、ギロです。」
リリアさんが、ギロさんを紹介した。
「初めまして!俺はギロといいます!先輩とリッちゃんには、いつもお世話になっていますっ!」
ゴン!
あらら。また打っちゃった。
「お前、土下座するの、禁止だな。」
「先輩?」
「ギロは、俺の暴力団時代の後輩なんだ・・・・・・。」
タッタッタッタッタッ!
玄関の方から、足音が聞こえた。
「誰だい。勝手に人の部屋に入るやつは。」
「あたしだよ。」
ネルさん!
「ネル?あの、桜吹雪のネルか?」
ネルさんは、驚いているヒアン様を、じーと見つめた。
「誰だ。この男は。」
「ジュンブライトのお父さんよ。」
「!?」
ネルさんは、ヒアン様を見て、驚いた。
「こ、この人が、ジュンブライト様のお義父様!」
「『お』と『父』の真ん中に、『義』という字が出てきたような・・・・・・。」
「ヒアン様。」
「おぉ、久瀬紅葉。元気にしとったか?」
「はいっ。」
紅葉が笑顔で返事をした。
ヒアン様は、ジュンブライトの方を振り向いた。
「ジュンブライト。」
「なんだ。」
「疑って、悪かったな。」
「謝るのがおそいんだよっ。」
ジュンブライト、ゆるしてやってよ。
「・・・・・・わかった。」
「大王様。道華様と一緒に、お出かけするのは、いかがでしょう。」
ルクトさん、ナイスアイデア!
「あたし、おじいちゃんと一緒に、どっか行きたーい!」
道華がヒアン様にだきついた。
「わかった。じゃあ、行くか。」
「うん!」
二人が部屋を出て行こうとした、その時。
「大王様!」
ルクトさんが、出て行こうとするヒアン様をとめた。
「なんだ。」
「これを着てください。」
ルクトさんは、ヒアン様に黒いスーツを差し出した。
「なんでこれを着らなきゃならないのだ。」
「そのかっこうだと、周囲から変な目で見られると思うので。」
ヒアン様は、顔をムスッとした。
「やだ!誰がこんなもの、着るか!さっさとかたづけろ!」
「お願いです!どうか、着てください!」
「ふん!やだねーだ!」
あんたといい、ヒアン様といい、道華といい、性格、ほんっとにそっくり。
「親父は頑固なだけだ。」
「王女様、大王様の王冠を取ってください。」
「は~い。」
マドレーヌちゃんは、ヒアン様の王冠を取った。
「あ、こら!マドレーヌ!王冠を取ったらいかん!それは、先祖代々伝わる、大切な王冠なんだぞ!」
「知ってます。」
「服、脱ぎましょうねぇ。」
リリアさんが、ヒアン様の服を脱ぎ捨てた。
「リリア!人の服を勝手に脱ぐなっ!」
「落ち着いて。」
黒いスーツを着せられたヒアン様は、道華と手をつないだ。
「おじいちゃん、かっこいい~。」
道華にほめられると、ヒアン様は、顔を真っ赤にした。
「そ、そうか・・・・・・。じゃあ、行くぞ。」
「うん!」
二人は仲良く手をつないで、外に出た。
気を付けてね~。
☆
「ただいまぁ。」
道華が、ほっぺたをふくらませながら、リビングにやって来た。
道華、どうしたの?
道華は、怒りながら、ジュンブライトにだきついて来た。
「お父さん、聞いてよ。おじいちゃんね、いじわるなの。あたしがね、コーラー飲みたーいって言ったら、体に悪いからだめって言うし、デパートでキティちゃんのぬいぐるみがあって、欲しいって言ったら、だめって言うし、菜の花広場でおじいちゃんの絵を描いたら、私はこんな顔をしていないって、あたしがせっかく描いた絵を消したの。」
「な―にぃ!?」
ジュンブライトは、着がえているヒアン様の方を振り向いた。
「おい、親父!俺のかわいいかわいい娘を、よくも泣かせてくれたなぁ!」
「泣かしてない。しつけただけだ。」
ヒアン様は、なにもなかったかのように、道華に近づいた。
「道華、今日は楽しかったか?」
「全然っ!」
道華は、ジュンブライトの後ろに隠れた。
ヒアン様、ちょっと、厳しすぎではありませんか?
「そうよ。もうちょっと、子供に優しくしないと・・・・・・。」
私と紅葉がそう言うと、ヒアン様は、私と紅葉の方を振り返った。
「真莉亜さん。子供を厳しくしつけるのが、親の仕事なんですよ。」
そ、それは、わかってますけど・・・・・・子供に優しくしないと、子供は成長しませんよ。
「それはわかっておる。マドレーヌ、一緒にお風呂に入ろうか。」
「はい!」
ヒアン様は、マドレーヌちゃんを連れて、お風呂場に向かった。
「なんなの!?さっきの態度!全然お義父様らしくないわ!」
クリスさんが、ぷんぷん怒ってる。
「クリス、俺の親父は、お前のお義父さんじゃねぇ。」
☆
「あ―も―!ここ、わかんなーい!」
「テレサ、これ、時事問題?」
「そうだよ。」
もう、出さないでくださいよぉ。
「ねぇ、お母さん。」
道華が、私の洋服をぐいぐいひっぱって来た。
「もう、勉強の邪魔、しないでくれる?」
「してないもん!」
してるじゃん。
「どうしたんだ、道華。」
ジュンブライトがやって来ると、道華はジュンブライトにだきついて来た。
「おじいちゃんって、どんな人?」
「どっちの方のだ。」
「お父さんの方。あたし、顔は知っているけど、どんな人か、わからないの。死んだから。」
ジュンブライトはしばらく、「う~ん。」と、うなった。
それから、ジュンブライトは、ルクトさんに話しかけた。
「じいや。俺の親父がどんな人か、言えるか?」
ルクトさんは、にこっと笑った。
「もちろん。大王様は、とてもどえらい方で、ヴァンパイア界を治める、すばらしいお方です。」
ルクトさんに続いて、マドレーヌちゃんが口を出した。
「ヒアンおじ様は、とても優しいんですよ。」
マドレーヌちゃんに続いて、リリアさんが口を出した。
「ヒアン様は、とてもかっこいいお方よ。」
「へぇー。」
「ジュンブライト様のお義父様って、とてもすごい人なんですねっ。」
アキちゃんが、目を輝かせた。
「お義父様言うなっ。」
「道華のおじいちゃんって、ものすごくえらい方なんだねっ。」
ソラちゃんが、アキちゃんと一緒に、目を輝かせた。
「うん!」
道華が笑顔でうなずくと、ジュンブライトは、ふっと、鼻で笑った。
「なにが、とてもすごい人だ。親父はな、とても頑固で、怒りん坊で、げんこつするのが得意なんだぜ。俺だって、240回、げんこつされたんだぜ。そのくらい、とてもこわーい人なんだ、ニヒニヒニヒニヒ。」
うんうん・・・・・・って、ジュンブライト!なんて失礼なこと、言ってんの!
もしここに、ヒアン様がいたら、カンカンに怒るよ!
「ジュンブライト!貴様、よくも父親に向かって、そんな悪口が言えたな!」
って、怒るかもしれないよっ。
・・・・・・ん?今、私のとなりで男の人の声が聞こえたような・・・・・・気のせいかな?
「ま・・・・・・真莉亜・・・・・・となりに、ヒアン様がいる!」
紅葉、うそつかないでよぉ。ヒアン様が、ここに来るわけ・・・・・・。
「ゆるさん!」
・・・・・・。
「えぇ~!?」
私達は、大きな声を出して、驚いた。
「だ、だ、だ、だ、大王様!なぜここに!?」
「あとで説明する。」
ヒアン様は、こぶしをかまえながら、ジュンブライトに近づいた。
「ジュンブライト!後ろ!」
「ん?」
ジュンブライトが、後ろを振り返ると、ヒアン様が、こぶしをかまえながら、立っていた。
その瞬間、ジュンブライトの顔が、真っ青になった。
「げっ・・・・・・。」
「こんのぉ~!父親をばかにしおってぇ~!」
ボカーン!
「ゔぅ、げんこつされたの、これで241回目・・・・・・。」
ジュンブライトは泣きながら、でっかいたんこぶをおさえた。
「お久しぶりです、ヒアン様っ。」
「おぉ、真莉亜さん。元気にしていましたか?」
はいっ。
「それはよかった。」
「お義父様~♡お久しぶりでぇ~す♡」
クリスさんが、目をハートにして、ヒアン様に近づいて来た。
「私はいつ、君のお義父さんになったんだね。」
「ヒアンおじ様っ。お父様はお元気ですか?」
マドレーヌちゃんが、笑顔でヒアン様に聞いて来た。
「あぁ。お前がまたいなくなって、相当、悲しんでたぞ。」
リアン様は、親バカだったね。
「なぁ、親父。なんでここに来たんだよぉ。」
「お前の様子を見に来たんだ。真莉亜さんとどんな生活を送っているのか、気になってな。」
「ということは、満月荘に泊まるのかい?」
ヒアン様が笑顔でうなずいた。
「あぁ。明日、ヴァンパイア界に帰る。」
「やったぁ~♪」
道華がうれしそうに跳びはねると、ヒアン様があやしい目で、道華を見つめた。
「誰だ、この子は。」
ヒアン様が、道華の方を指さした。
「死んだおじいちゃんと明日まで一緒にすごせるなんて、うれしい!」
道華がうれしそうに、ヒアン様にだきついて来た。
あ・・・・・・あぁ・・・・・・。
「ジュンブライト!」
ヒアン様が怒った。
「なんだよ!」
ジュンブライトが、怒りながらヒアン様の方を振り向いた。
「貴様、真莉亜さんをおそって、子供をつくらせたな!」
ヒアン様、そ、それには深ーい理由が・・・・・・。
「ちげーよ。誰が真莉亜をおそって、子供をつくらせるか、ぶあーか。」
「言いわけはゆるさん!別れてもらうぞ!」
「大王様!話を聞いてくださいっ。」
「ふん、聞くもんか。さ、ヴァンパイア界に帰るぞ。」
ヒアン様は、ジュンブライトのうでを強くひっぱって、鏡の方へ向かった。
「ちょっ・・・・・・離せよぉ!」
ど、どうしよう・・・・・・。
このままじゃ、ジュンブライトが帰っちゃう・・・・・・。
「まってください、ヒアン様!」
私が止めると、ヒアン様が立ち止まり、私の方を振り返った。
「真莉亜・・・・・。」
「これには、とっても深ーい話があるんですっ。お願いです!私の話を聞いてください!」
ヒアン様は、真っ赤にして、ジュンブライトのうでを離した。
「・・・・・・・わかった。聞いてやろう。」
「今、真莉亜のこと、かわいいと思ったな。」
☆
私は、道華のことを全部話した。
「ジュンブライトと真莉亜さんの未来の子供で、ヴァンパイアと人間のハーフかぁ。」
ヒアン様、わかってくれたみたい。
「未来でルクトと私は死んでるなんて、ショックだなぁ。」
ヒアン様が、冷たい麦茶をごくごくと飲み始めた。
「で、この双子の姉妹は?」
ヒアン様が、アキちゃんとソラちゃんを見つめた。
「あたしの双子の妹の・・・・・・。」
「アキで~す。」
「ソラで~す。」
ヒアン様は、首をひねった。
「うーむ、見分けがわからんなぁ。」
ピンク色の髪の毛がアキちゃんで、水色の髪の毛がソラちゃんです。
「説明ありがとう。」
「ただいまぁ~。」
ギロさんが帰って来た!
「お帰り、ギロ。」
「ただいま、リッちゃん。あ、これ。」
ギロさんが、弁当袋に包まれた弁当箱を、リリアさんに渡した。
「オムライス弁当、おいしかったよ。明日、つくってよ。」
「あなた、卵料理ばっかり食べると、体が悪くなるわよ。」
「それはわかってる。だって俺、医者だから。ん?」
ギロさんは、ゆっくりしているヒアン様に気づいた。
「リッちゃん。」
「なに?ギロ。」
ギロさんは、ヒアン様の方を指さした。
「このおじさん、誰?」
「・・・・・・!?」
ギロさん!失礼ですよ!
「こんのぉ~!私に向かって、おじさんって言ったなぁ!」
「ひぃぃぃぃぃ!」
ギロさんはぶるぶるおびえ始めた。
「ギロ!このお方は、ヴァンパイア界の大王、ヒアン様で・・・・・・。」
「ジュンブライトの親父さんだよっ。」
「え?え?」
ギロさんは、ヒアン様の顔を、見たり見なかったりした。
「えぇ~!?せ、せ、せ、先輩の、親父さ~ん!?」
「驚きすぎだろ。」
「こ、こ、こ、これは、失礼しましたぁ~!」
ギロさんが、ヒアン様に土下座で謝った、その時。
ゴン!
おでこを強く打っちゃった。
「・・・・・・痛いよぉ。」
ギロさんは、泣きながら、おでこを両手でおおった。
「君は天然だな。」
「こちらは、私の幼なじみで、私の恋人の、ギロです。」
リリアさんが、ギロさんを紹介した。
「初めまして!俺はギロといいます!先輩とリッちゃんには、いつもお世話になっていますっ!」
ゴン!
あらら。また打っちゃった。
「お前、土下座するの、禁止だな。」
「先輩?」
「ギロは、俺の暴力団時代の後輩なんだ・・・・・・。」
タッタッタッタッタッ!
玄関の方から、足音が聞こえた。
「誰だい。勝手に人の部屋に入るやつは。」
「あたしだよ。」
ネルさん!
「ネル?あの、桜吹雪のネルか?」
ネルさんは、驚いているヒアン様を、じーと見つめた。
「誰だ。この男は。」
「ジュンブライトのお父さんよ。」
「!?」
ネルさんは、ヒアン様を見て、驚いた。
「こ、この人が、ジュンブライト様のお義父様!」
「『お』と『父』の真ん中に、『義』という字が出てきたような・・・・・・。」
「ヒアン様。」
「おぉ、久瀬紅葉。元気にしとったか?」
「はいっ。」
紅葉が笑顔で返事をした。
ヒアン様は、ジュンブライトの方を振り向いた。
「ジュンブライト。」
「なんだ。」
「疑って、悪かったな。」
「謝るのがおそいんだよっ。」
ジュンブライト、ゆるしてやってよ。
「・・・・・・わかった。」
「大王様。道華様と一緒に、お出かけするのは、いかがでしょう。」
ルクトさん、ナイスアイデア!
「あたし、おじいちゃんと一緒に、どっか行きたーい!」
道華がヒアン様にだきついた。
「わかった。じゃあ、行くか。」
「うん!」
二人が部屋を出て行こうとした、その時。
「大王様!」
ルクトさんが、出て行こうとするヒアン様をとめた。
「なんだ。」
「これを着てください。」
ルクトさんは、ヒアン様に黒いスーツを差し出した。
「なんでこれを着らなきゃならないのだ。」
「そのかっこうだと、周囲から変な目で見られると思うので。」
ヒアン様は、顔をムスッとした。
「やだ!誰がこんなもの、着るか!さっさとかたづけろ!」
「お願いです!どうか、着てください!」
「ふん!やだねーだ!」
あんたといい、ヒアン様といい、道華といい、性格、ほんっとにそっくり。
「親父は頑固なだけだ。」
「王女様、大王様の王冠を取ってください。」
「は~い。」
マドレーヌちゃんは、ヒアン様の王冠を取った。
「あ、こら!マドレーヌ!王冠を取ったらいかん!それは、先祖代々伝わる、大切な王冠なんだぞ!」
「知ってます。」
「服、脱ぎましょうねぇ。」
リリアさんが、ヒアン様の服を脱ぎ捨てた。
「リリア!人の服を勝手に脱ぐなっ!」
「落ち着いて。」
黒いスーツを着せられたヒアン様は、道華と手をつないだ。
「おじいちゃん、かっこいい~。」
道華にほめられると、ヒアン様は、顔を真っ赤にした。
「そ、そうか・・・・・・。じゃあ、行くぞ。」
「うん!」
二人は仲良く手をつないで、外に出た。
気を付けてね~。
☆
「ただいまぁ。」
道華が、ほっぺたをふくらませながら、リビングにやって来た。
道華、どうしたの?
道華は、怒りながら、ジュンブライトにだきついて来た。
「お父さん、聞いてよ。おじいちゃんね、いじわるなの。あたしがね、コーラー飲みたーいって言ったら、体に悪いからだめって言うし、デパートでキティちゃんのぬいぐるみがあって、欲しいって言ったら、だめって言うし、菜の花広場でおじいちゃんの絵を描いたら、私はこんな顔をしていないって、あたしがせっかく描いた絵を消したの。」
「な―にぃ!?」
ジュンブライトは、着がえているヒアン様の方を振り向いた。
「おい、親父!俺のかわいいかわいい娘を、よくも泣かせてくれたなぁ!」
「泣かしてない。しつけただけだ。」
ヒアン様は、なにもなかったかのように、道華に近づいた。
「道華、今日は楽しかったか?」
「全然っ!」
道華は、ジュンブライトの後ろに隠れた。
ヒアン様、ちょっと、厳しすぎではありませんか?
「そうよ。もうちょっと、子供に優しくしないと・・・・・・。」
私と紅葉がそう言うと、ヒアン様は、私と紅葉の方を振り返った。
「真莉亜さん。子供を厳しくしつけるのが、親の仕事なんですよ。」
そ、それは、わかってますけど・・・・・・子供に優しくしないと、子供は成長しませんよ。
「それはわかっておる。マドレーヌ、一緒にお風呂に入ろうか。」
「はい!」
ヒアン様は、マドレーヌちゃんを連れて、お風呂場に向かった。
「なんなの!?さっきの態度!全然お義父様らしくないわ!」
クリスさんが、ぷんぷん怒ってる。
「クリス、俺の親父は、お前のお義父さんじゃねぇ。」
☆
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ヴァンパイア♡ラブ
田口夏乃子
恋愛
12歳の中学1年生、春間真莉亜は、人見知りで、新しい学校でも友達ができないでいた…。
学校の帰り道、謎のおばあさんからもらった不思議な鏡で、ヴァンパイアの王子が入っている棺を取り出し、唇にキスをすると……イケメンのヴァンパイア界の王子、ジュンブライトが生き返って……!?
人間の女の子✖ヴァンパイアの男
ファンタジーあり、恋愛ストーリーありのファンタジーラブストーリー!
※小学六年生から書いていた小説を、Amebaでも公開中で、ブログの方が物語進んでます(笑)
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる