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第十六話 「道華が産まれた日」

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「ふぁ~。よく寝たぁ~。ん?真莉亜?おい!真莉亜!どこにいるんだ?真莉亜!」
 
ただいまぁ~。
 
「真莉亜!」
 
ジュンブライトが、リビングから飛び出した。
どうしたの?
 
「もう、どこに行ってたんだよぉ。心配してたんだぞ。」
 
コンビニ。
 
「?なんでコンビニなんかに行ってたんだ?」
 
ジュンブライトが、首をかしげた。
 
「朝ご飯を買って来たの。すぐできるから、いすにすわってて。」
 
「ふあーい。」
 
ジュンブライトは返事をすると、リビングに戻って、食卓のいすにすわった。
 
「はい、どうぞ。よくかきまぜてね。」
 
私がお茶碗とおはしを出すと、ジュンブライトはまた、首をかしげた。
 
「おい。なんだこれは。」
 
ジュンブライト、インスタントみそしるを知らないんだ。
 
「インスタントのみそしるもあったのか!37年間、全然知らなかったぜ。」
 
ジュンブライトが、みそしるをかきまぜ始めた。
 
「あと、これも食べてねっ。」
 
私は、四角いものを出した。
 
「これ、おにぎりじゃねぇか!」
 
そ。今日の朝ご飯は、インスタントみそしると、おにぎりだよ。
私は、いすにすわった。
 
「お前のおにぎり、うめぼしじゃん。」
 
なーんか、すっぱいものを食べたくなったから、買って来ちゃった。
 
「妊娠したら、すっぱいものを食べたくなるって、言うなぁ。」
 
えへへへへ。
ん~。すっぱ~い。
 
「ところで、予定日はいつなんだ?」
 
3月。
 
「えーっ?まてねぇよぉ。」
 
ジュンブライトが、顔をムスッとした。
 
「わがまま言わないの。お腹の子が、笑ってるよ。」
 
私はお腹をさわり始めた。
 
「はーい。」
 
ジュンブライトは機嫌を悪くしながら、返事をした。
 
 

 
 
3カ月後。私は大学に退学届を出した。
それを見た学長は、とても悲しそうな顔になった。
 
「成績が優秀だった君が、大学をやめるなんて、さびしいよ。」
 
私が決めたことですから。
 
「そうだな。」
 
「今度、産まれて来る子供を連れて、遊びに行きます。」
 
私はにこっと笑いながら、ふっくらしたお腹をさわった。
 
「産まれて来るのを、楽しみにしてるよ。」
 
学長さんは、私に向かって、にこっと笑った。
 
 

 
 
お腹、重くなったなぁ。
歩くの、きつくなったよぉ。
妊婦さんはつらいよ、です。
 
「ただいまぁ~。」
 
家に戻ると、玄関の前で、ジュンブライトがまっていた。
 
「お帰り、真莉亜。」
 
あれ?お仕事は?
 
「早退した。」
 
具合悪いの?
 
「ちがう意味での早退だ。」
 
まさか、勝手にぬけ出したとか!?
 
「ちがう!俺はそーゆーことをする、大王じゃねぇ!」
 
自分勝手でわがままだから、そういうの、絶対にしてると思う。
 
「だから、してないって!」
 
あ、LINE、見た?
 
「見た、見た。」
 
病院に行ったら、性別がわかったんだ。
女の子だって。
ジュンブライトが喜ぶだろうなぁと思って、LINEしたんだ。
 
「真莉亜、お前に見せたいものがある。」
 
見せたいもの?
 
「あぁ。ついて来い。」
 
なんだろう?
私は、ジュンブライトのあとをついて行った。
 
「見ろ。」
 
ジュンブライトが、立ち止まった方を見ると・・・・・・。
な、なにこれ。赤ちゃんグッズだらけじゃん!
赤ちゃんのお洋服に、ぬいぐるみ。赤ちゃんのくつしたに、赤ちゃん用のベッド。おむつに、哺乳瓶に、おしゃぶり!
す・・・・・・すご~い。これ、ジュンブライトが用意したの?
 
「あぁ。女の子って聞いて、真っ先に人間界に行って、デパートで、女の子の洋服と、くつしたと、ぬいぐるみと、哺乳瓶と、おしゃぶりと、おむつを買って来たんだ。赤ちゃん用ベッドは、ソアンが作ってくれたんだ。」
 
私のために、早退したの?
 
「あたり前だろ。お前のためだけじゃねぇ。赤ちゃんのために、早退したんだ。」
 
うわぁ~。ありがとう、ジュンブライト!
私はジュンブライトにだきついた。
 
「私、そこまで一生懸命、私のためにしてくれる、ジュンブライトが大好き!」
 
私がにこっと笑うと、ジュンブライトは、目をハートにして、顔をニヤニヤさせた。
 
「かっわいい~♡俺も、一生懸命がんばって、ハンバーガーショップで働く真莉亜のことが、だいちゅきでちゅよぉ~♡」
 
最後、赤ちゃん語になってなかった?
 
「真莉亜。」
 
ジュンブライトが、急に元の顔に戻った。
 
「愛してる。」
 
「私も。愛してるよ、ジュンブライト。」
 
チュッ・・・・・・。
私達は、キスをし始めた。
 
 
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