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第1章

第四十四話 「ジュンブライトの思い出(後編)」

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「ジュンブライト、入るぞ。」

あぁ。
ガチャッ。
親父は、早速、俺のところへ来て、ベッドにまた腰をおろした。

「母さんの話をしようかぁ。」

!?
俺は親父の方を見た。

「……お前の母さんは、お前を産んだあと、すぐ亡くなったんだ。」

!?

「母さん、小さいころから体が弱くてな。出産するのが、難しかったんだ。けど、母さんは、あきらめず、お前を産んだ。けど、お前の顔を見ず、母さんは死んでしまった。けど、母さんは今、お前の心の中で生きている。私の心の中にも生きている。そして、みんなの心の中にも生きている。だから、そんなに悲しむな。」

……母さんは、俺が大好きだったんだな。

「あぁ。いつも、お腹をさわって、お前に話しかけていたよ。」 

そっかぁ。
……母さんは、俺の心の中で生きている。
だから、俺もがんばらないと。

「そうだな。」

親父は優しく、ほほえんだ。


                                ☆

そして、現在。

「親父、親父……。」

ガチャッ。

「おい、ピクニック行くから、準備しろ。」

俺はゆっくり、オオカミヤローの方を振り返った。
ピクニッ……ク?

「あぁ。今日はいい天気だから、たまには11人で、外出しようや。」

オオカミヤローはそう言って、二ッと笑った。


                           ☆


「ピクニック!ピクニック!」

「こらこら。お前ら、そんなにはしゃぐんじゃねぇ。」

「はーい!」

「うふふ。子供らしいわね。」

「あぁ。」

「王子、今日はいい天気ですねっ。」

「……。」

ジュンブライト……。
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