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第1章

第二十四話 「ジュンブライト、不器用卒業?」

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こんにちは。真莉亜です。

「真莉亜お姉様ぁ~!大変ですぅ~!」

ん?どうしたの?マドレーヌちゃん。

「はぁ、はぁ、はぁ。実は……あー、もういいから、こっちに来てくださいっ!」

って、ちょー!いきなりうでをぎゅっとつかんで、走らないでよぉ~!
そして、私達は調理場に到着。
うわぁ。入り口には、ものすごく、人が集まっている。
ルクトさんに、リリアさん。ギロさんに、ヒアン様。
ルアン様に、家来さんに、召し使いさん。さらに、コックさんまで集まっている。
一体、どうしたんだろ。
私が人混みの中を通り抜けると……。

「フフフフフーン、フフフフフーン♪」

って、えーっ!?
ジュンブライトが、料理してる!
なんで?なんで!?
すると、いやーなにおいが、ただよってきた。
ゔぅ……くしゃい。
すると、ジュンブライトがフライパンを持ちながら、後ろをくるりと振り向いた。

「よっ、真莉亜。おっはよー。」

おはよーじゃないでしょ!
なにこれ!今、なにをつくってるの!?

「ん?ナポリタンだ。たまには、自分でつくってみよっかなぁ~?と思って。」

なにがナポリタンよっ!
むらさき色のナポリタンじゃん!

「本当にナポリタンだってば!イチゴジャムを入れて、マヨネーズを入れて、唐辛子をいっぱい入れて、ヨーグルトを入れて、キムチを入れたら、完成だぜ!」

「ナポリタンは、ケチャップに、麺に、ソーセージに、ピーマンに、はちみつを入れたら、完成だよっ!」

「うるせぇ!オリジナルってやつだ!」

もう、自分勝手です、このおっさん。

「ほい、ギロ。食べてみろ。」

「い、いやっ。遠慮しますっ。」

「いーじゃねぇかよぉ。真莉亜は?」

わ、私はいらないっ。
妊娠してるからね。体に悪いから。

「ったくぅ、俺が食うか。」

えっ!?

「いっただっきま~す♪」

ちょ、ちょっとまったぁー!
って、言った時には、もう遅かった。

「!?」

ジュンブライトは顔を真っ青にして、水道のところに行って、「オェー!」と吐いた。

「はぁ、はぁ、はぁ。まっじー。」

ほうら、言わんこっちゃない。

「材料がちがうんだよ。ちゃんとレシピを見て、つくりなさい。」

「ちゃんと見たよ!はぁ、俺って、どんだけ不器用なんだろ。」

あーあ。落ちこんじゃって。
私は、ジュンブライトの背中をポンっとたたいた。

「ジュンブライト、落ちこまないで。がんばってし続けたら、不器用じゃなくなるから。」

「真莉亜……うん!わかった!ありがとう!さあ、不器用卒業して、がんばるぞぉ~!」

立ち直るの早っ。
ま、ジュンブライトらしいけどね。


                                     ☆

ジュンブライト、なにつくっているんだろ。
ちょっとのーぞこっと。

「フフフフフーン、フフフフフーン♪」

……って、これ、宇宙人?

「ちげーよ!犬だ!」

いや、どー見ても犬に見えないんですけどぉ。

「ゴチャゴチャうるせぇ!この俺に、アドバイスすんなっ!俺はアドバイスってのが、大っ嫌いなんだっ!」

はぁ、このわがままパワーは、いつまで続くんだろうか。

「もう、このままじゃ、赤ちゃんに嫌われるよ。」

私はお腹をさわりながら言った。

「うっせぇ。それはどーでもいいんだよっ。」

あ、そう。

「はぁ~、こんな時、ウルフ一郎がいてくれたらなぁ。」

ウルフ一郎さんは私より、手先が起用だからねぇ。
今、どうしているんだろ。

「あいつに教えてもらったビーフシチュー、すごくおいしかったぜ。」

                               (2年前)


「『う~ん、もっと濃い方がいいなぁ。』」

「『え~?ちゃんと塩こしょう入れたのに。』」

「『俺様の舌がうすいって言ってるから、もう少し入れた方がいいの!』」

「『はいはい。ったくぅ、そんなに厳しくなるなっつーの!』」

「『あー!もうそれぐらいでいい!味がからくなるじゃないか!』」

「『あーもー、うっせぇ!いいじゃねぇか、別に!ズー、あ、でもおいしい。』」

「『はあ!?うそつけ!こんなにたくさん入れただけで、おいしくなるわけ……あ、ほんとだ。おいしい。』」

「『だろ!?』」

「『味が濃ゆくなってるし、おまけにお肉がやわらかいし。』」

「『やったぁ~!ウルフ一郎にほめられたぁ!』」

「『こら!喜んでる場合じゃねぇ!さっさと皿出して、つげ!』」

「『……はーい。』」

「……あん時のビーフシチューは、とてもおいしかったなぁ。」

「そうだね。ジュンブライトにとって、ウルフ一郎さんとの思い出は、それなんだもんね。」

「あぁ!」

ジュンブライトはニカッと笑った。

「またあいつとビーフシチューつくりたいぜぇ。でも、あいつ、料理のことになると、すぐ厳しくなるからなぁ。やめよっかな?」

まあた、すぐあきらめようとする!

「だってぇ、俺、厳しい人が苦手だもーん。理由は、親父みてぇだから。」

「王子はそういう人のタイプが、昔から、嫌いですもんねぇ。」

「あぁ。あんなやつと俺は、相性が合わないぜ。」

ふーん。
でも、ウルフ一郎さんも、ジュンブライトのために、厳しくしたと思うよ。

「えっ?あいつが、俺のために……?」

そう。

「ウルフ一郎さん、言ってたよ。『あいつはウゼーけど、俺様の弟みてぇだ。』って。」

「うわぁ~。気持ち悪~い。」

いや、そういうわけじゃないんですけど。

「そういえば、ネルさんのことを言った時、こー言ってたな。『あいつは、俺様の妹みてぇだ。』って。」

へぇー。

「ったく、どんだけネルのことを想っているのか……あ!そう話している場合じゃねぇ!早く完成しないと!」

ジュンブライトは、なにかを作り始めた。
なんだろ?
私がまたのぞきこむと……。
……なにこれ、うさぎ?

「ちげーよ。猫だ。」

いや、どー見てもうさぎにしか見えないんですけどぉ……。

「うっせぇ!ゴチャゴチャ言うなっ!」

私、叱られました、はい。


                                    ☆
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