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第1章

第十五話 「ネルさん、まさか……。」

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こんにちは。真莉亜です。
2ヵ月経って、お腹がこんなに、でっかくなりましたぁ。
あとは予定日をまつだけですっ。
楽しみだなぁ、赤ちゃんが産まれて来るの。
私は自分のお腹をさわった。
ビクッ。
あ、動いた!
うふふふふ。
赤ちゃーん、楽しみにしているよ。あなたが産まれて来るのを。


                                          ☆


あたしは、ウルフ一郎と一緒に寝ていた。

「……ネル……。」

なに?ウルフ一郎。

「……愛してるぞ。」

あたしも。愛してるよ、ウルフ一郎。

「だから……。」

だから?

「……俺様のそばから離れるなよ。」

うん。二度と離れない。

「約束な。」

うん……。
ウルフ一郎の胸、あったかい。

「お前をこーしてだきしめてると、なんだか、心があったかくなる。」

ウルフ一郎が、あたしをぎゅっとだきしめた。
あたしも。こーしてだきあってると、なんだか、心があったかくなる。

「だろーな。」

ウルフ一郎が、にこりとほほえんだ。

「あ……。」

「……ずっと、愛してるぞ。」

あたしも。愛してるよ、ウルフ一郎。
あたし達がキスをしようとした、その時。
トゥゥゥゥゥル。

「ん?電話だ。」

ウルフ一郎が、起き上がって、ケータイに出た。

「もしもし?」

「『兄貴!なにやってるんッスか!もうすぐ朝食だから、早く帰って来てくださいねっ!』」

「あー、わかったよ。すぐ帰るから。じゃあなっ。」

ウルフ一郎は、ケータイを切った。

「もう、行くのか?」

「ああ。またあとでな、ネル。」

じゃあな、ウルフ一郎。

「じゃあな、ネル。それと……。」

ウルフ一郎が、あたしのお腹をさわった。

「じゃあな、赤ちゃん。またあとでなー。」

うふふふふ。
あたしのお腹は、ずいぶん大きくなっている。

「じゃあな、ネル。」

「じゃあな、ウルフ一郎。」

ウルフ一郎は、あたしに手を振りながら、ドアを閉めて行った。
あと6ヵ月かぁ。
楽しみだな。


                                          ☆


「赤ちゃんは順調に育ってますよぉ。」

そ、そうかなぁ?

「そんなに照れないで。ほら、手と足が、動いてますよぉ。」

あ、ほんとだ。
赤ちゃん、とても元気そう。
あたしはお腹を少しさわった。

「ところで、言わないんですか?」

なにを?

「家族に妊娠していることを。」

あ……。

「あれから4ヵ月経ちますよ。そろそろ打ち明けた方がいいんじゃないですか?」

「……いいんです。」

「えっ?」

「いいんです。彼氏に話したら、「誰にも言うな。」と言われたから。赤ちゃんは、彼氏の家にある、離れで産みます。ですから、気にしないでください。」

「……わかりました。あなたがそうしたいのなら、そうしなさい。そのかわり、助けてって言っても、私は助けに来ませんよ。わかりましたか?」

はい、わかりました。


                                  ☆


「あっ、あっ、あー!」

……熱い……てか、痛い……。

「ネル、大丈夫だ。俺様が着いている。」

ウルフ一郎がタオルで汗をふきながら、あたしの手をぎゅっとにぎった。
ウルフ一郎……あー!

「そんなに無理すんなよぉ。もしものために、産湯を持って来たから。」

ウルフ一郎……ありがとう。

「どういたしまして。」

ウルフ一郎が、ニッと笑った。


                                 ☆


結果、赤ちゃんは無事だった。

「ありがとうございました。」

「いえ。もしなにかあったら、教えてください。」

「はい。」

バタン。

「よかったな。赤ちゃんが無事で。」

うん。

「どうした?そんな顔をして。うれしくねぇのか?」

うれしいけど、なんか、なやんでる。

「なにを?」

「……この子のことを、誰かにバレないかなぁ~?って。」

「はっ。そんなの、バレんだろ。」

……だよなぁ。

「ちょっくら休んどけ。また、来るかもしれないからな。」

うん……。


                                    ☆


「おじゃまする。」

あ、ネルさん。いらっしゃーい。
って、あれっ?通りすぎちゃった?

「シャワーをあびさせてもらう。」

わかりましたぁ。
ネルさんのお腹、最近、ふっくらしてない?

「怪しいですねぇ。」

わっ、マドレーヌちゃん!

「なーに怪しい目で見てんだよ!」

わっ、ジュンブライト!

「実は、最近、ネルお姉様のお腹がふっくらしているんです。」

「ネルのお腹がぁ?ふっ、フハハハハハ!バカだろう!きっと、カステラの食べ過ぎじゃないかなぁ~?」

食べすぎでも、ふつー歩いてるし!

「まあ、気にすんな。あいつのことだ。わかったか?」

「……はーい。」

私とマドレーヌちゃんは、しゅんとした。


                           ☆

シャー。
ふぅ、気持ちい~。
こーんなに気持ちいいお風呂に入れるなんて、夢みてぇ。
鏡を見ると、お腹がもうふっくらしているのが見える。
うふふっ、だんだん、成長したねぇ。
あたしはお腹をさわった、その時。

「ネル、タオルを持ってきたわよぉ。」

ちっ、出た、バカ姉貴。

「そこらへんに置いといてくれぇ。」

「わかったわ。」

リリアはタオルを洗濯機の上に置いた。

「ん?ネル、あなたお腹、ふっくらしてない?」

はっ、じょーだん言え。あたしのお腹が、ふっくらしているわけ、ないだろ。

「ちょっと入っていい?」

あー!入るなっ!人の風呂タイムをじゃまするなんて、バカじゃないのか!?

「なんで拒否するのよ!入るなって言われても、入るわよ!」

ガラッ。

「!?あなた、そのお腹!」

「!?」

「……妊娠してるのね。」

……ああ。
やっと、バレちまったか……。




                                    ☆
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