ヴァンパイア♡ラブ

田口夏乃子

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最終話 「さようなら、ジュンブライト!あなたのことがずっと、大好きでした!」

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ヴァンパイア界に戻った私達は、早速、ヒアン様に今までのことを報告した。

「そうかぁ。で、白雪姫さんは?」

「お姉ちゃんはお義兄さんと一緒に、お城に戻りました。」

「クレイン・・・・・・。いや、久瀬紅葉、今後はどうするんだ?」

「今後は・・・・・・。」

「真莉亜とあたしとテレサと一緒に、人間界ですごすことにしているんでーす!」

クリスさん!どうしてこんなところに?てか、勝手にテレサさんを入れないでくださいっ。

「あんたにお礼するために来たのよ。ゆり子達の代わりに。」

お礼?

「そ。猫族と、幽霊族を復活させてくれて、ありがとう。」

猫族と、幽霊族、復活したんだね!よかったぁ。

「ねぇ、テレサも一緒に行くんでしょ?人間界に。」

テレサさん、本当に一緒に帰るんですか?

「もっちろん。教師になるのが、夢だったしねぇ。おまけに、子供が大好きだし。」

そうですかぁ・・・・・・。じゃあ、一緒に帰りましょう、人間界に。

「あぁ。」

「ところで、あなたは誰ですか?」

「あたしは、猫族の看板娘、クリスで~す♡ジュンブライト様の花嫁候補の一人で~す♡」

ちょっ、ちょー!クリスさん、ジュンブライトのうでを組まないでください!

「ジュンブライトの花嫁候補か・・・・・・。」

「うそだうそだうそだうそだぁ!」

「そんなに照れないでくださいよぉ♡」

クリスさん、そんなにイチャイチャしないでください!

「そういえばクリス、あなたは私達と一緒に、人間界に帰るから、二度とジュンブライトに、会えないわよ。」

「あ。」

あらら。クリスさんは、石になって、くずれちゃった。
もう、二度と、ジュンブライトに会えないんだ・・・・・・。

「どうしたんだ、真莉亜。」

あっ、なんでもないよ。

「さ、パーティーの準備をするか。ルクト、コックと召し使い達に、料理の準備をするよう、呼びかけてくれ。」

「はい。」

ルクトさんはそのまんま、走って行っちゃった。

「パーティーって、なんのパーティーをするんですか?」

私が聞くと、ヒアン様がにこっと笑った。

「ジュンブライトが帰って来た記念と、真莉亜さんが大活躍した記念パーティーをするんだ。」

ひょ・・・・・・ひょっとして、ものすごくグロイ料理が出て来るんじゃ・・・・・・。

「大丈夫。料理は全て、人間界の料理を作るように頼んでいるから、安心して、楽しみにしてくれ。」

ふぅ、よかったぁ。
ヒアン様、とても優しいお方です。





「カンパーイ!」

うわぁ。とてもおいしそうな料理がいっぱいで、どれから先に食べればいいか、迷います。

「真莉亜ちゃ~ん!」

アクアさん、リナンさん!

「元気にしてたぁ?」

もっちろん、元気にしてましたよ。

「明日、人間界に帰るんだよね。」

えぇ。

「もう二度と会えないなんてぇ、私ぃ、さびし~い。」

私もです。

「どうしたの?なにかあったの?」

い、いいえ。なにもないです。

「真莉亜さ~ん!」

ん?誰?この男の人。
髪の色は黒で、髪型は、少し長めのカールで、王様みたいな服を着て、しわが生えていて、赤いマントをひらひらさせた男の人が、私の前に現れた。
誰?

「私のお父様ですよ、真莉亜お姉様。」

えぇ!?この人が、リアン様!?

「はい。うちの愛娘が、いつもお世話になっております。」

そ、そんなに頭を下げることじゃありませんよ。

「お父様、人間界でいっぱい、真莉亜お姉様に遊んでもらいましたぁ。」

マドレーヌちゃんがにこっと笑うと、リアン様の目が、急にハートになった。

「かっわいい~♡私のマドレーヌ、なんでそんなにかわいいの~?」

・・・・・・。

「お父様、お前がいない毎日なんて、すごせなかったよぉ。」

リアン様って、親バカなんですね。

「リアン、人前で恥をかかすこと、するな。」

ヒアン様がやって来たとたん、リアン様が、カッとなった。

「兄さんにそんなこと、言われたくない!だいたい、兄さんがいっつも、ジュンブライトに怒るから、ジュンブライトは、暴力団に入ったんだぞ!」

「なんだとぉ?リアンがいっつも、マドレーヌを叱らないから、マドレーヌはいっつも、人に甘えるんだぞ!」

「だいたいねぇ、兄さんがいっつも、ジュンブライトを叱るから、暴力団に入ったんだぞ!」

「ふんっ、リアンがマドレーヌを叱らないから、マドレーヌは人に甘えるんだぞ!」

「兄さんの教育が悪いんだぞ!いっつもジュンブライトを叱るから。」

「お前の教育も悪い。マドレーヌを叱らないから。」

「なんだとぉ?この、じじいが!」

「なんだとぉ?この、バカじじいが!」

あらら。兄弟ゲンカが激しい方なんですね。
マドレーヌちゃん、止めてください。

「いつものことなので、ほっといた方がいいですよ。」

いつもけんかするんだぁ、あの二人。
誰か、けんかを止めてぇ~。

「大王様、リアン様、人前でけんかしたら、だめですよ。」

ん?この、優しい声は・・・・・・。

「ギラ様!」

「なんだとぉ!?」

兄弟げんかをしていた二人は、けんかをするのをやめた。

「お恥ずかしいところをお見せして、誠にすみません・・・・・・。」

「アハハハハ、そんなに謝らなくて、いいですよ。あっ、真莉亜様、お久しぶりですね。」

はい。ギラ様との約束、果たしましたよ。

「真莉亜ちゃ~ん、ジュンくんとぉ、ラブラブしてたって、本当~?」

アクアさん!てか、ジュンブライトとラブラブなんか、していませんっ。

「ごめんごめ~ん♡テレサちゃんがぁ、言ったのぉ♡」

ったく、テレサさんは、なんでも話す人なんですねっ。

「真莉亜ちゃんっ。」

その声は・・・・・・。

「ルーさん!」

「元気にしていたんだね。」

はいっ。あれ?なんでルルさんが、ルーさんと一緒にいるんですか?

「私、このおばあさんと、一緒に暮らすことになったの。」

えぇ!?本当に!?

「えぇ。おばあさんと話していたら、「一人で暮らしてる。」って聞いて、黙っていられなくなっちゃってさ。」

よかったですね、ルーさん、ルルさん。

「うん!」

ルルさんは笑顔でうなずいた。
ん?バルコニーで、一人で夜空を眺めながら、お酒を飲んでいる女の人がいるぞ。
あっ、リリアさんだ!
なにしてるんだろ、こんなところで。
声、かけてみよっかな。

「リリアさん。」

私が声をかけた瞬間、リリアさんは笑顔で振り向いた。

「真莉亜、どうしたの?」

リリアさんが、一人でお酒を飲んでいるから、声をかけてみよっかな~?っと、思って。

「ありがと。」

え?

「そこまで心配してくれて、ありがとって、言ってるの。私、ストレス解消で飲んでいるから。」

なにか、ストレスがたまったこと、あったんですか?

「えぇ。」

リリアさんが、そんなにお酒を飲む姿、初めて見た。

「・・・・・・私ね、好きな人がいたの。」

えぇ!?あのリリアさんに、好きな人がいたなんて、知らなかったです。
で、その好きな人の名前は・・・・・・。

「ジュンブライトよ。」

なんだぁ、ジュンブライトかぁ~。へー。・・・・・・って。

「えぇ~!?」

「大きな声、出さないで!」

は、はい。すみません。

「私ね、中学生の時、お妃の仲間になって、その4年後、追い出されて、高校生の時、しつじ協会に入って、しつじになったの。初めての仕事はドキドキしたわ。けれど、自分は高校生だったから、勉強に追いつけられなかったの。その1年後、マドレーヌが生まれて、私はその子のしつじになったわ。その時私は、もう、しつじをやめて、普通の女の子に戻ろうと思ったの。そんな私を元気づけたのが、ジュンブライトよ。」

どうやってリリアさんを元気づけたんですか?

「彼はこう言ったの。『お前は普通の女の子に戻らなくていい。しつじのお前も、高校生のお前も、他人として大好きだ!俺、いつでもお前の相談にのってやる。勉強も、俺がわかるところまで教えてやる!』って。」

へぇー。

「それからジュンブライトは毎日、私に勉強を教えてやったり、相談にのってくるようになったわ。そして、私はジュンブライトを好きになったの。けれど・・・・・・。」

リリアさんが、急に悲しい顔になった。

「ジュンブライトがますます私達に暴力をふるったり、城をめちゃくちゃにしたりして、ヴァンパイア暴力団の一員になって、城に戻らなくなったの。『今度は私が彼を助ける番だ!』と思って、ジュンブライトのところに行って、こう言ったの。『あなたの幸せを、一緒に探してあげる。そして、私があなたのなやみを解決する。だから、大王になりたいなら、こんなヤクザのふりをしないで、城に戻りなさい!』って。ジュンブライトは大泣きしちゃって、その後、ヒアン様の勧めで、カウンセリングを2年間受けて、ヴァンパイア界の王子に戻ったわ。そんなジュンブライトを、8年間想い続けて、8年間の想いをのせて、あなたを助けに行く途中、告ったわ。」

で、返事は?

「・・・・・・だめだった。私、そこであきらめたわ。」

そうなんですか・・・・・・。

「彼、私が告った後、とても驚いていたわ。」





「マ、マジかよ、リリア!」

「えぇ。」

「でもお前、ヴァンパイアキャットだろ?付き合うのは難しいじゃねぇか?」

「いや、ヴァンパイアキャットの姿の私もヴァンパイア姿の私も、愛して欲しいの。あなたのこと、8年間、想い続けたから。しつじと王子という関係じゃなくて、恋人という関係になりたいの。あなたの人生を、ともに歩んで行きたい。あなたの奥さんにもなりたいし、あなたの恋人にもなりたい。お願い!私、あなたの相談にのるから、私の恋人になって!」

「・・・・・・リリア。お前の気持ちはわかった。けど、やっぱり、俺はお前と付き合えねぇ。」

「なんで?」

「俺、好きな人がいるんだ。」

「え!?」

「そいつの顔を見る度、胸が熱くなって、ドキドキするんだ。そいつとキスしたことある。そいつが、他の男と一緒にいると、胸がむかむかして、やきもち焼くこともある。その好きな人にお妃をたおしたら、告白するんだ。『好き。』って。今は、片想い中だけどな、ニヒニヒニヒニヒ。」





「・・・・・・って。」

ジュンブライトの好きな人って、誰だろ。
リリアさんじゃないし、ひょっとして、テレサさん!?

「さあね。そんなに気にすることじゃないわよ。」

で、でも、気になります!とても気になります!

「うふふふふ。あなたって、おもしろい人ね。あなた、ジュンブライトに告るでしょ?」

な、なぜそれを!

「紅葉とクリスに聞いたの。クリス、残念そうにしてたわ。」

あはははは、そうなんですか。

「告白するなら、今しかないわ。明日、人間界に帰るんでしょ?だったら、告白しなくちゃ。私、両想いだと、信じてるから。」

リリアさん、ありがとうございます!
私、早速、告白して来ます!

「がんばってね。」

「はいっ。」

私は思いっ切り、ジュンブライトのところまで走った。

「ジュンブライト。」

私の声で、ジュンブライトは、私の方を振り向いた。

「どうした、真莉亜。」

「あ、あのね、ちょっと話したいことがあるけど、来てくれる?」

「話したいこと?なんだそれ。」

「いいから早く!」

私は、ジュンブライトの手を、強く引っ張った。

「ちょ、真莉亜!そんなに強く引っ張るなよ!手がちぎれるじゃねぇか!」

「いいから黙って!」

私、初めて、ジュンブライトの手を強く引っ張ったよ。
これが、最後のジュンブライトの手のぬくもりなんだね。


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