ヴァンパイア♡ラブ

田口夏乃子

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第三十八話 「笑里奈さんの夢!」

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「春間さん、起きろ。」

ん~。もう少し、寝かせてくださーい。

「起きろってば!」

もう、私の体を押さないでくださーい。

「おーきーろー!」

うわぁ!4倍のでっかい声で、私は起こされた。
うわぁ!でっかいニカニカ顔が、私の顔をのぞきこんでるぅ!

「春間さん、せい!おはようさん♪」

なーんだ。笑里奈さんの顔かぁ。びっくりしたぁ。
ところで、なにか、あったんですか?

「大変や。」

大変?なにがですか?

「姉ちゃんがさっき、テレビ局に行ったで!」

えぇ~!?

「早く着がえて、これをかぶれや!」

笑里奈さんが大急ぎで、私に何かを渡して、その何かを、私は手に取った。
え!?これをかぶるんですか!?

「あたり前田のクラッカー!」

その古いギャグ言うの、やめてくれます?

「とりあえず、早く着がえて、これをかぶって、誰にも気付かれへんように、そぉと、忍び足で出て行くで!」

は、はい~。





「ねぇ。あの二人、おかしくない?」

「あぁ、確かに。」

「ねぇお母さん、あれ、見て!」

「こら!指をささないの!」

「はーい。」

なんで、あやしい目で見つめられているかというと・・・・・・。
なんと私達、カップルに変そうしているんです!
その、カップルとはと言うと・・・・・・。
笑里奈さんが私に変そうして、私がなんと、ジュンブライトに変そうしてるんです!
一体、何人の人から、『お似合いカップル』と名付けられるんでしょうか。

「あの!」

さっき、私達をあやしい目で見つめていた、本物のカップルさんが、私達の目の前に現れた。

「なんでしょうか。」

「二人はいつも、ラブラブなんですか!?」

えぇ~!?そんなこと、言う必要、ないっしょ。お二人さん、本物のカップルなんだから。

「はい!ラブラブで~す♡」

ちょ・・・・・・。なに調子に乗って言ってんですか!笑里奈さんっ。

「キスとかいっぱい、してるんですか!?」

うわぁ。このカップル、ますます暴走しておる。

「しているに決まってんじゃありませんか。ねー、潤。」

笑里奈さんは、私の顔を見て、ウインクをした。

「あ・・・・・・うん。そうだよなぁ、真莉亜。」

なーにうそとかついてるんだろ、私。

「いいなぁ。中学生でいっぱい、キスしているなんて。」

「中学生がうらやましいわぁ。」

私は、あなた達がうらやましいです。

「いつ付き合ったの?」

「10年前からですっ。」

その設定、詩音さんと叶人くんと同じです。

「えぇ!?10年前って、3歳!?」

驚くカップルの前で、笑里奈さんはこくりと、うなずいた。

「はいっ。今年で私達、付き合い始めて10年目になりまーす。」

おいおい!笑里奈さん、調子に乗って、ピースするなぁ!
もう、私の顔が赤くなったんじゃないの!





商店街を後にした私達は、テレビ局の中に入った。
うわぁ。中は広いし、きれいだし、受付けの人は美人だし、すごいよぉ。
私、こーんなきれいなテレビ局に入ったの、生まれて初めてです。
それより、警備員もいるし、半分、こわーいふんいきだよ。

「春間さん、行こう!」

私に変そうした笑里奈さんが、私の手をひっぱっている。
ちょ・・・・・・ちょっとまってください。警備員がいるんですよ。

「あたいの必殺技があるから、安心しとき。」

必殺技?
って、笑里奈さん!警備員の前へ、堂々と歩かないでくださいっ。

「君達、関係者以外、立ち入り禁止だよ。」

私達の前に、警備員があらわれた。
けれど、笑里奈さんったら、平気な顔。どうしたんだろ。
・ ・ ・・
「これソース?ソーッスね!なんちってぇ、二ヒ二ヒ。」

必殺技って、おやじギャグのことだったんですかっ。

「行くで!」

えぇ!?ちょっとまってください!警備員さんがいますよ!?

「あれを見ろ!」

笑里奈さんが指をさした方を見ると、なんと、そこにはカッチンコッチンにこおっている、警備員さんがいた。
おそるべし、おやじギャグ。
って、笑里奈さん、速すぎますぅ!

「へっ。こう見えて、運動神経、バツグンやからなぁ。」

へぇー。意外です。
すると、笑里奈さんが、ドアの前に止まった。

「ここが、姉ちゃんがレギュラーでやっている、番組のスタジオや。」

へぇー。朝の番組なんだぁ。

「いいか?開けるで。」

えぇ!?開けるんですか!?

「あたり前田のクラッカー!」

だから、その古いギャグを言うの、やめてくださいっ。

「1、2の3!」

笑里奈さんが大きな声でドアを開けた。
うわぁ。ここでさつえいしているのかぁ。

「今日は、お好み焼き特集です!」

あ、由唯さん発見!

「お好み焼きといえば、由唯さんちのお店、『なにわ屋』ですねぇ。」

「はい。そうです。」

「由唯の店のお好み焼きは、世界一、うまいんですよぉ。」

あのショートヘアーの女の人は、由唯さんの相方?

「はぁ。愛子姉ちゃんから、世界一、うまいって言われたぁ♡」

笑里奈さん、なんで顔をにやにやしているんですか?

「愛子姉ちゃんから、世界一、うまいって言われて、喜んでいるに決まっとるやろ。」

愛子姉ちゃん?誰ですか、それ。

「愛子姉ちゃんのこと、知らんの!?」

あ・・・・・・はい。

「海園愛子姉ちゃんは、あたいの姉ちゃんの幼なじみで、お父さんが元お笑い芸人なんやで!」

あのう、笑里奈さーん。

「なんや。なんか、あったんか?」

「もう、聞こえてますよ。」

だって、ディレクタ-さんとか、カメラマンさんとか、スタッフさんとか、アシスタントさんとか、セットにいる由唯さんとか、私達の方をじーと見つめているもん。
それを見て、まずいっと思った笑里奈さんは、忍び足でドアの方へ行こうとしている。

「真莉亜ちゃんっ。」

由唯さんが、笑里奈さんを呼び止めた。
あ。笑里奈さんは、私に変そうしているんだった!

「なんでテレビ局にいるの?しかも、大きな声を出している姿、初めて見たわ。」

あぁ。本当のことを、言わなくちゃっ。
私は笑里奈さんの前に出て、すぅっと、深呼吸をした。

「すみませんっ。後ろにいる人は、私じゃありませんっ。」

「え?」

一瞬、スタジオ中が騒ぎ始めた。

「それ、どういう意味やねん。」

何もわからない由唯さん達の前で、私がかつらを取ると、由唯さん達は、びっくりした。

「真莉亜ちゃんが二人おる!」

「どういうことやねんっ。」

由唯さんと、芸人さん達は、私を見て、驚いている。
それを見た笑里奈さんは、「はぁ。」っと、ため息をつきながら、ゴムを取ると、みんなはさらに、びっくりした。

「笑里奈ちゃんっ。」 「笑里奈!」

「姉ちゃん、ごめんなさい。なかなか、ネタを思いつかなくて、テレビ局に勝手に行ったんや。こんなことして、ごめんなさい・・・・・・!」

笑里奈さん、泣きながらあやまっている。

「笑里奈。」

由唯さんが、泣いている笑里奈さんの前に現れた。

「姉ちゃん・・・・・・。」

ひょっとして、怒るの!?
そう思ったら、由唯さんは笑里奈さんの頭をなでた。

「そうやったんか・・・・・・。ごめんな。昨日、あんだけ厳しいことを言ってしもうて・・・・・・。あたいが全部悪い。、妹に昨日、厳しいことを言って、こんなことを起こってしまったあたいが悪い。はぁ、あたいって、こんなに悪い、お姉ちゃんやなぁ。」

由唯さん・・・・・・。
由唯さんは、カメラマンさん達に向かって、深呼吸した。

「みなさん、今日はめいわくをかけて、すみませんでした。でも、今回だけは特別に、ゆるしてください。この二人は、今、お笑いコンクールへ向けている最中です。お願いします、どうかゆるしてくださいっ。」

由唯さんが、堂々とおしぎをすると、みんながパチパチと、はく手した。

「由唯、今日はかっこええなぁ。」

「さっすが、お姉ちゃんやなぁ。」

「わかった、今回だけはゆるす。けれど、もしまた、こんなことが起きてしもうたら、ゆるさないからな。」

「みなさん・・・・・・。ありがとうございます、ありがとうございますっ。」

由唯さんが、何度も何度もお礼を言いながら、おしぎをしている。
よかったですね、笑里奈さん。

「うんっ。」

いつもの笑顔に、急に戻っている。

「真莉亜ちゃん。」

はいはい、なんでしょうか~。

「いろいろと、ごめんな。」

と、由唯さんが小声でささやいた。





お笑いコンクール当日。
はぁ、緊張するよぉ。
胸がドキドキします。

「春間さんっ。」

わ!笑里奈さんっ。びっくりさせないでくださいっ。

「えへへへへ。ごめん、ごめん。いよいよ、本番やなっ。」

はいっ。

「練習の成果、発揮するで!」

そうですね。

「『次は、エントリーナンバー9番、お笑いガールズのお二人でーす。』」

司会者の大きな声が、ステージの裏まで、響き渡った。

「春間さん、行くで!」

「はいっ。」

そして、私達はステージの上に上がった。

「どうも、どうも。私達・・・・・・。」

「お笑いガールズでーす!」

「さてさて、真莉亜ちゃん、今年、何年でしょうか?」

「へび年です。」

「んーや、たつ年や。」

「それ、去年やで!」

「アハハハハハ!」

お客さんの笑い声が、ステージの裏まで響き渡る。

「もう、干支を間違えたら、日本人じゃないわ。」

「ごめんごめん。で、去年、AKBを卒業した人、知っとる?」

「前田敦子でしょ。そんな話、誰でも知っとるわ。」

「私、川辺笑里奈、13歳は・・・・・・。」

「な・・・・・・何泣いとるねん!私、何かした!?」

「嵐ファンを卒業しますっ。」

「意味わからんっ。」

「アハハハハ!」

「何ものまねしとんねん。全然、似てもなかったし、なんで、嵐ファンを卒業するん!」

「冗談。」

「冗談かーい!」

「アハハハハ!」

「なぁ。」

「もう、なんやねんっ。」

「なんもない。」

「意味わからんっ。」

「以上、ありがとうございましたー。」





結果、見事、優勝することができましたぁ。

「春間さん・・・・・・。」

なんでしょうか。

「あたい、優勝したけど、道のりはまだまだやと思う。」

え?それって、どういう意味ですか?

「お笑い芸人になるための道のりや!」

そう言いながら、笑里奈さんは二カッと笑った。
お笑い芸能人になるための道のり?

「あぁ。審査員の人達は、あたいたちのコントを見て、おもろいと思ったから、選んだ。けど、あたいは全然、自分のコントをおもろくないと思う。」

それって、どういう意味ですか?

「つまり、お笑い芸人になるまでは、まだまだやからな!」

笑里奈さん・・・・・・。

「おっしゃー!川辺笑里奈、芸人目指して、がんばるぞぉー!」

笑里奈さんが、真っ赤な夕日に向かって、さけんだ。
夢が叶うといいですね、笑里奈さん。

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