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第三十八話 「笑里奈さんの夢!」
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「春間さん、起きろ。」
ん~。もう少し、寝かせてくださーい。
「起きろってば!」
もう、私の体を押さないでくださーい。
「おーきーろー!」
うわぁ!4倍のでっかい声で、私は起こされた。
うわぁ!でっかいニカニカ顔が、私の顔をのぞきこんでるぅ!
「春間さん、せい!おはようさん♪」
なーんだ。笑里奈さんの顔かぁ。びっくりしたぁ。
ところで、なにか、あったんですか?
「大変や。」
大変?なにがですか?
「姉ちゃんがさっき、テレビ局に行ったで!」
えぇ~!?
「早く着がえて、これをかぶれや!」
笑里奈さんが大急ぎで、私に何かを渡して、その何かを、私は手に取った。
え!?これをかぶるんですか!?
「あたり前田のクラッカー!」
その古いギャグ言うの、やめてくれます?
「とりあえず、早く着がえて、これをかぶって、誰にも気付かれへんように、そぉと、忍び足で出て行くで!」
は、はい~。
☆
「ねぇ。あの二人、おかしくない?」
「あぁ、確かに。」
「ねぇお母さん、あれ、見て!」
「こら!指をささないの!」
「はーい。」
なんで、あやしい目で見つめられているかというと・・・・・・。
なんと私達、カップルに変そうしているんです!
その、カップルとはと言うと・・・・・・。
笑里奈さんが私に変そうして、私がなんと、ジュンブライトに変そうしてるんです!
一体、何人の人から、『お似合いカップル』と名付けられるんでしょうか。
「あの!」
さっき、私達をあやしい目で見つめていた、本物のカップルさんが、私達の目の前に現れた。
「なんでしょうか。」
「二人はいつも、ラブラブなんですか!?」
えぇ~!?そんなこと、言う必要、ないっしょ。お二人さん、本物のカップルなんだから。
「はい!ラブラブで~す♡」
ちょ・・・・・・。なに調子に乗って言ってんですか!笑里奈さんっ。
「キスとかいっぱい、してるんですか!?」
うわぁ。このカップル、ますます暴走しておる。
「しているに決まってんじゃありませんか。ねー、潤。」
笑里奈さんは、私の顔を見て、ウインクをした。
「あ・・・・・・うん。そうだよなぁ、真莉亜。」
なーにうそとかついてるんだろ、私。
「いいなぁ。中学生でいっぱい、キスしているなんて。」
「中学生がうらやましいわぁ。」
私は、あなた達がうらやましいです。
「いつ付き合ったの?」
「10年前からですっ。」
その設定、詩音さんと叶人くんと同じです。
「えぇ!?10年前って、3歳!?」
驚くカップルの前で、笑里奈さんはこくりと、うなずいた。
「はいっ。今年で私達、付き合い始めて10年目になりまーす。」
おいおい!笑里奈さん、調子に乗って、ピースするなぁ!
もう、私の顔が赤くなったんじゃないの!
☆
商店街を後にした私達は、テレビ局の中に入った。
うわぁ。中は広いし、きれいだし、受付けの人は美人だし、すごいよぉ。
私、こーんなきれいなテレビ局に入ったの、生まれて初めてです。
それより、警備員もいるし、半分、こわーいふんいきだよ。
「春間さん、行こう!」
私に変そうした笑里奈さんが、私の手をひっぱっている。
ちょ・・・・・・ちょっとまってください。警備員がいるんですよ。
「あたいの必殺技があるから、安心しとき。」
必殺技?
って、笑里奈さん!警備員の前へ、堂々と歩かないでくださいっ。
「君達、関係者以外、立ち入り禁止だよ。」
私達の前に、警備員があらわれた。
けれど、笑里奈さんったら、平気な顔。どうしたんだろ。
・ ・ ・・
「これソース?ソーッスね!なんちってぇ、二ヒ二ヒ。」
必殺技って、おやじギャグのことだったんですかっ。
「行くで!」
えぇ!?ちょっとまってください!警備員さんがいますよ!?
「あれを見ろ!」
笑里奈さんが指をさした方を見ると、なんと、そこにはカッチンコッチンにこおっている、警備員さんがいた。
おそるべし、おやじギャグ。
って、笑里奈さん、速すぎますぅ!
「へっ。こう見えて、運動神経、バツグンやからなぁ。」
へぇー。意外です。
すると、笑里奈さんが、ドアの前に止まった。
「ここが、姉ちゃんがレギュラーでやっている、番組のスタジオや。」
へぇー。朝の番組なんだぁ。
「いいか?開けるで。」
えぇ!?開けるんですか!?
「あたり前田のクラッカー!」
だから、その古いギャグを言うの、やめてくださいっ。
「1、2の3!」
笑里奈さんが大きな声でドアを開けた。
うわぁ。ここでさつえいしているのかぁ。
「今日は、お好み焼き特集です!」
あ、由唯さん発見!
「お好み焼きといえば、由唯さんちのお店、『なにわ屋』ですねぇ。」
「はい。そうです。」
「由唯の店のお好み焼きは、世界一、うまいんですよぉ。」
あのショートヘアーの女の人は、由唯さんの相方?
「はぁ。愛子姉ちゃんから、世界一、うまいって言われたぁ♡」
笑里奈さん、なんで顔をにやにやしているんですか?
「愛子姉ちゃんから、世界一、うまいって言われて、喜んでいるに決まっとるやろ。」
愛子姉ちゃん?誰ですか、それ。
「愛子姉ちゃんのこと、知らんの!?」
あ・・・・・・はい。
「海園愛子姉ちゃんは、あたいの姉ちゃんの幼なじみで、お父さんが元お笑い芸人なんやで!」
あのう、笑里奈さーん。
「なんや。なんか、あったんか?」
「もう、聞こえてますよ。」
だって、ディレクタ-さんとか、カメラマンさんとか、スタッフさんとか、アシスタントさんとか、セットにいる由唯さんとか、私達の方をじーと見つめているもん。
それを見て、まずいっと思った笑里奈さんは、忍び足でドアの方へ行こうとしている。
「真莉亜ちゃんっ。」
由唯さんが、笑里奈さんを呼び止めた。
あ。笑里奈さんは、私に変そうしているんだった!
「なんでテレビ局にいるの?しかも、大きな声を出している姿、初めて見たわ。」
あぁ。本当のことを、言わなくちゃっ。
私は笑里奈さんの前に出て、すぅっと、深呼吸をした。
「すみませんっ。後ろにいる人は、私じゃありませんっ。」
「え?」
一瞬、スタジオ中が騒ぎ始めた。
「それ、どういう意味やねん。」
何もわからない由唯さん達の前で、私がかつらを取ると、由唯さん達は、びっくりした。
「真莉亜ちゃんが二人おる!」
「どういうことやねんっ。」
由唯さんと、芸人さん達は、私を見て、驚いている。
それを見た笑里奈さんは、「はぁ。」っと、ため息をつきながら、ゴムを取ると、みんなはさらに、びっくりした。
「笑里奈ちゃんっ。」 「笑里奈!」
「姉ちゃん、ごめんなさい。なかなか、ネタを思いつかなくて、テレビ局に勝手に行ったんや。こんなことして、ごめんなさい・・・・・・!」
笑里奈さん、泣きながらあやまっている。
「笑里奈。」
由唯さんが、泣いている笑里奈さんの前に現れた。
「姉ちゃん・・・・・・。」
ひょっとして、怒るの!?
そう思ったら、由唯さんは笑里奈さんの頭をなでた。
「そうやったんか・・・・・・。ごめんな。昨日、あんだけ厳しいことを言ってしもうて・・・・・・。あたいが全部悪い。、妹に昨日、厳しいことを言って、こんなことを起こってしまったあたいが悪い。はぁ、あたいって、こんなに悪い、お姉ちゃんやなぁ。」
由唯さん・・・・・・。
由唯さんは、カメラマンさん達に向かって、深呼吸した。
「みなさん、今日はめいわくをかけて、すみませんでした。でも、今回だけは特別に、ゆるしてください。この二人は、今、お笑いコンクールへ向けている最中です。お願いします、どうかゆるしてくださいっ。」
由唯さんが、堂々とおしぎをすると、みんながパチパチと、はく手した。
「由唯、今日はかっこええなぁ。」
「さっすが、お姉ちゃんやなぁ。」
「わかった、今回だけはゆるす。けれど、もしまた、こんなことが起きてしもうたら、ゆるさないからな。」
「みなさん・・・・・・。ありがとうございます、ありがとうございますっ。」
由唯さんが、何度も何度もお礼を言いながら、おしぎをしている。
よかったですね、笑里奈さん。
「うんっ。」
いつもの笑顔に、急に戻っている。
「真莉亜ちゃん。」
はいはい、なんでしょうか~。
「いろいろと、ごめんな。」
と、由唯さんが小声でささやいた。
☆
お笑いコンクール当日。
はぁ、緊張するよぉ。
胸がドキドキします。
「春間さんっ。」
わ!笑里奈さんっ。びっくりさせないでくださいっ。
「えへへへへ。ごめん、ごめん。いよいよ、本番やなっ。」
はいっ。
「練習の成果、発揮するで!」
そうですね。
「『次は、エントリーナンバー9番、お笑いガールズのお二人でーす。』」
司会者の大きな声が、ステージの裏まで、響き渡った。
「春間さん、行くで!」
「はいっ。」
そして、私達はステージの上に上がった。
「どうも、どうも。私達・・・・・・。」
「お笑いガールズでーす!」
「さてさて、真莉亜ちゃん、今年、何年でしょうか?」
「へび年です。」
「んーや、たつ年や。」
「それ、去年やで!」
「アハハハハハ!」
お客さんの笑い声が、ステージの裏まで響き渡る。
「もう、干支を間違えたら、日本人じゃないわ。」
「ごめんごめん。で、去年、AKBを卒業した人、知っとる?」
「前田敦子でしょ。そんな話、誰でも知っとるわ。」
「私、川辺笑里奈、13歳は・・・・・・。」
「な・・・・・・何泣いとるねん!私、何かした!?」
「嵐ファンを卒業しますっ。」
「意味わからんっ。」
「アハハハハ!」
「何ものまねしとんねん。全然、似てもなかったし、なんで、嵐ファンを卒業するん!」
「冗談。」
「冗談かーい!」
「アハハハハ!」
「なぁ。」
「もう、なんやねんっ。」
「なんもない。」
「意味わからんっ。」
「以上、ありがとうございましたー。」
☆
結果、見事、優勝することができましたぁ。
「春間さん・・・・・・。」
なんでしょうか。
「あたい、優勝したけど、道のりはまだまだやと思う。」
え?それって、どういう意味ですか?
「お笑い芸人になるための道のりや!」
そう言いながら、笑里奈さんは二カッと笑った。
お笑い芸能人になるための道のり?
「あぁ。審査員の人達は、あたいたちのコントを見て、おもろいと思ったから、選んだ。けど、あたいは全然、自分のコントをおもろくないと思う。」
それって、どういう意味ですか?
「つまり、お笑い芸人になるまでは、まだまだやからな!」
笑里奈さん・・・・・・。
「おっしゃー!川辺笑里奈、芸人目指して、がんばるぞぉー!」
笑里奈さんが、真っ赤な夕日に向かって、さけんだ。
夢が叶うといいですね、笑里奈さん。
ん~。もう少し、寝かせてくださーい。
「起きろってば!」
もう、私の体を押さないでくださーい。
「おーきーろー!」
うわぁ!4倍のでっかい声で、私は起こされた。
うわぁ!でっかいニカニカ顔が、私の顔をのぞきこんでるぅ!
「春間さん、せい!おはようさん♪」
なーんだ。笑里奈さんの顔かぁ。びっくりしたぁ。
ところで、なにか、あったんですか?
「大変や。」
大変?なにがですか?
「姉ちゃんがさっき、テレビ局に行ったで!」
えぇ~!?
「早く着がえて、これをかぶれや!」
笑里奈さんが大急ぎで、私に何かを渡して、その何かを、私は手に取った。
え!?これをかぶるんですか!?
「あたり前田のクラッカー!」
その古いギャグ言うの、やめてくれます?
「とりあえず、早く着がえて、これをかぶって、誰にも気付かれへんように、そぉと、忍び足で出て行くで!」
は、はい~。
☆
「ねぇ。あの二人、おかしくない?」
「あぁ、確かに。」
「ねぇお母さん、あれ、見て!」
「こら!指をささないの!」
「はーい。」
なんで、あやしい目で見つめられているかというと・・・・・・。
なんと私達、カップルに変そうしているんです!
その、カップルとはと言うと・・・・・・。
笑里奈さんが私に変そうして、私がなんと、ジュンブライトに変そうしてるんです!
一体、何人の人から、『お似合いカップル』と名付けられるんでしょうか。
「あの!」
さっき、私達をあやしい目で見つめていた、本物のカップルさんが、私達の目の前に現れた。
「なんでしょうか。」
「二人はいつも、ラブラブなんですか!?」
えぇ~!?そんなこと、言う必要、ないっしょ。お二人さん、本物のカップルなんだから。
「はい!ラブラブで~す♡」
ちょ・・・・・・。なに調子に乗って言ってんですか!笑里奈さんっ。
「キスとかいっぱい、してるんですか!?」
うわぁ。このカップル、ますます暴走しておる。
「しているに決まってんじゃありませんか。ねー、潤。」
笑里奈さんは、私の顔を見て、ウインクをした。
「あ・・・・・・うん。そうだよなぁ、真莉亜。」
なーにうそとかついてるんだろ、私。
「いいなぁ。中学生でいっぱい、キスしているなんて。」
「中学生がうらやましいわぁ。」
私は、あなた達がうらやましいです。
「いつ付き合ったの?」
「10年前からですっ。」
その設定、詩音さんと叶人くんと同じです。
「えぇ!?10年前って、3歳!?」
驚くカップルの前で、笑里奈さんはこくりと、うなずいた。
「はいっ。今年で私達、付き合い始めて10年目になりまーす。」
おいおい!笑里奈さん、調子に乗って、ピースするなぁ!
もう、私の顔が赤くなったんじゃないの!
☆
商店街を後にした私達は、テレビ局の中に入った。
うわぁ。中は広いし、きれいだし、受付けの人は美人だし、すごいよぉ。
私、こーんなきれいなテレビ局に入ったの、生まれて初めてです。
それより、警備員もいるし、半分、こわーいふんいきだよ。
「春間さん、行こう!」
私に変そうした笑里奈さんが、私の手をひっぱっている。
ちょ・・・・・・ちょっとまってください。警備員がいるんですよ。
「あたいの必殺技があるから、安心しとき。」
必殺技?
って、笑里奈さん!警備員の前へ、堂々と歩かないでくださいっ。
「君達、関係者以外、立ち入り禁止だよ。」
私達の前に、警備員があらわれた。
けれど、笑里奈さんったら、平気な顔。どうしたんだろ。
・ ・ ・・
「これソース?ソーッスね!なんちってぇ、二ヒ二ヒ。」
必殺技って、おやじギャグのことだったんですかっ。
「行くで!」
えぇ!?ちょっとまってください!警備員さんがいますよ!?
「あれを見ろ!」
笑里奈さんが指をさした方を見ると、なんと、そこにはカッチンコッチンにこおっている、警備員さんがいた。
おそるべし、おやじギャグ。
って、笑里奈さん、速すぎますぅ!
「へっ。こう見えて、運動神経、バツグンやからなぁ。」
へぇー。意外です。
すると、笑里奈さんが、ドアの前に止まった。
「ここが、姉ちゃんがレギュラーでやっている、番組のスタジオや。」
へぇー。朝の番組なんだぁ。
「いいか?開けるで。」
えぇ!?開けるんですか!?
「あたり前田のクラッカー!」
だから、その古いギャグを言うの、やめてくださいっ。
「1、2の3!」
笑里奈さんが大きな声でドアを開けた。
うわぁ。ここでさつえいしているのかぁ。
「今日は、お好み焼き特集です!」
あ、由唯さん発見!
「お好み焼きといえば、由唯さんちのお店、『なにわ屋』ですねぇ。」
「はい。そうです。」
「由唯の店のお好み焼きは、世界一、うまいんですよぉ。」
あのショートヘアーの女の人は、由唯さんの相方?
「はぁ。愛子姉ちゃんから、世界一、うまいって言われたぁ♡」
笑里奈さん、なんで顔をにやにやしているんですか?
「愛子姉ちゃんから、世界一、うまいって言われて、喜んでいるに決まっとるやろ。」
愛子姉ちゃん?誰ですか、それ。
「愛子姉ちゃんのこと、知らんの!?」
あ・・・・・・はい。
「海園愛子姉ちゃんは、あたいの姉ちゃんの幼なじみで、お父さんが元お笑い芸人なんやで!」
あのう、笑里奈さーん。
「なんや。なんか、あったんか?」
「もう、聞こえてますよ。」
だって、ディレクタ-さんとか、カメラマンさんとか、スタッフさんとか、アシスタントさんとか、セットにいる由唯さんとか、私達の方をじーと見つめているもん。
それを見て、まずいっと思った笑里奈さんは、忍び足でドアの方へ行こうとしている。
「真莉亜ちゃんっ。」
由唯さんが、笑里奈さんを呼び止めた。
あ。笑里奈さんは、私に変そうしているんだった!
「なんでテレビ局にいるの?しかも、大きな声を出している姿、初めて見たわ。」
あぁ。本当のことを、言わなくちゃっ。
私は笑里奈さんの前に出て、すぅっと、深呼吸をした。
「すみませんっ。後ろにいる人は、私じゃありませんっ。」
「え?」
一瞬、スタジオ中が騒ぎ始めた。
「それ、どういう意味やねん。」
何もわからない由唯さん達の前で、私がかつらを取ると、由唯さん達は、びっくりした。
「真莉亜ちゃんが二人おる!」
「どういうことやねんっ。」
由唯さんと、芸人さん達は、私を見て、驚いている。
それを見た笑里奈さんは、「はぁ。」っと、ため息をつきながら、ゴムを取ると、みんなはさらに、びっくりした。
「笑里奈ちゃんっ。」 「笑里奈!」
「姉ちゃん、ごめんなさい。なかなか、ネタを思いつかなくて、テレビ局に勝手に行ったんや。こんなことして、ごめんなさい・・・・・・!」
笑里奈さん、泣きながらあやまっている。
「笑里奈。」
由唯さんが、泣いている笑里奈さんの前に現れた。
「姉ちゃん・・・・・・。」
ひょっとして、怒るの!?
そう思ったら、由唯さんは笑里奈さんの頭をなでた。
「そうやったんか・・・・・・。ごめんな。昨日、あんだけ厳しいことを言ってしもうて・・・・・・。あたいが全部悪い。、妹に昨日、厳しいことを言って、こんなことを起こってしまったあたいが悪い。はぁ、あたいって、こんなに悪い、お姉ちゃんやなぁ。」
由唯さん・・・・・・。
由唯さんは、カメラマンさん達に向かって、深呼吸した。
「みなさん、今日はめいわくをかけて、すみませんでした。でも、今回だけは特別に、ゆるしてください。この二人は、今、お笑いコンクールへ向けている最中です。お願いします、どうかゆるしてくださいっ。」
由唯さんが、堂々とおしぎをすると、みんながパチパチと、はく手した。
「由唯、今日はかっこええなぁ。」
「さっすが、お姉ちゃんやなぁ。」
「わかった、今回だけはゆるす。けれど、もしまた、こんなことが起きてしもうたら、ゆるさないからな。」
「みなさん・・・・・・。ありがとうございます、ありがとうございますっ。」
由唯さんが、何度も何度もお礼を言いながら、おしぎをしている。
よかったですね、笑里奈さん。
「うんっ。」
いつもの笑顔に、急に戻っている。
「真莉亜ちゃん。」
はいはい、なんでしょうか~。
「いろいろと、ごめんな。」
と、由唯さんが小声でささやいた。
☆
お笑いコンクール当日。
はぁ、緊張するよぉ。
胸がドキドキします。
「春間さんっ。」
わ!笑里奈さんっ。びっくりさせないでくださいっ。
「えへへへへ。ごめん、ごめん。いよいよ、本番やなっ。」
はいっ。
「練習の成果、発揮するで!」
そうですね。
「『次は、エントリーナンバー9番、お笑いガールズのお二人でーす。』」
司会者の大きな声が、ステージの裏まで、響き渡った。
「春間さん、行くで!」
「はいっ。」
そして、私達はステージの上に上がった。
「どうも、どうも。私達・・・・・・。」
「お笑いガールズでーす!」
「さてさて、真莉亜ちゃん、今年、何年でしょうか?」
「へび年です。」
「んーや、たつ年や。」
「それ、去年やで!」
「アハハハハハ!」
お客さんの笑い声が、ステージの裏まで響き渡る。
「もう、干支を間違えたら、日本人じゃないわ。」
「ごめんごめん。で、去年、AKBを卒業した人、知っとる?」
「前田敦子でしょ。そんな話、誰でも知っとるわ。」
「私、川辺笑里奈、13歳は・・・・・・。」
「な・・・・・・何泣いとるねん!私、何かした!?」
「嵐ファンを卒業しますっ。」
「意味わからんっ。」
「アハハハハ!」
「何ものまねしとんねん。全然、似てもなかったし、なんで、嵐ファンを卒業するん!」
「冗談。」
「冗談かーい!」
「アハハハハ!」
「なぁ。」
「もう、なんやねんっ。」
「なんもない。」
「意味わからんっ。」
「以上、ありがとうございましたー。」
☆
結果、見事、優勝することができましたぁ。
「春間さん・・・・・・。」
なんでしょうか。
「あたい、優勝したけど、道のりはまだまだやと思う。」
え?それって、どういう意味ですか?
「お笑い芸人になるための道のりや!」
そう言いながら、笑里奈さんは二カッと笑った。
お笑い芸能人になるための道のり?
「あぁ。審査員の人達は、あたいたちのコントを見て、おもろいと思ったから、選んだ。けど、あたいは全然、自分のコントをおもろくないと思う。」
それって、どういう意味ですか?
「つまり、お笑い芸人になるまでは、まだまだやからな!」
笑里奈さん・・・・・・。
「おっしゃー!川辺笑里奈、芸人目指して、がんばるぞぉー!」
笑里奈さんが、真っ赤な夕日に向かって、さけんだ。
夢が叶うといいですね、笑里奈さん。
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