ヴァンパイア♡ラブ

田口夏乃子

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第三十二話 「ルクトさんの元カノ、登場!」

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「なぁ真莉亜、お前の好きな人はやっぱ、バカ院ハヤテか?」

ジュンブライトが質問してきた。
な・・・・・・なんで質問するの!?てか、ハヤテくんの苗字は、伊集院ですっ!あ、ジュンブライト、やきもち焼いてるんだぁ。

「ち・・・・・・ちげーよ!やきもちなんか、この俺が焼くかっつーの!」

ウフフ。顔、真っ赤になってる。

「なってねぇよ!」

はいはい。でも、私の本命は、ジュンブライトだよ。

「んじゃあ、ジュンブライトは、好きな人、いるの?」

「い・・・・・・いねぇよ!」

まあた、顔、赤くなってるし。おや?あそこでじろじろしているおばあさん、何してるんだろ。

「どれどれ?」

ジュンブライトと私は、おばあさんの方をじーと見た。
しらがで、服は真っ黒のエプロンみたいなものを着ていて、髪型は京花と一緒。あと、とんがった耳をしているし、ヴァンパイアかな?

「ちょっと、行ってみよう。」

私とジュンブライトは、おばあさんのところまで歩いた。

「すみませーん。」

私が声をかけると、おばあさんは私達の方を見た。

「なにか、探してるんですか?」

「家。」

は?家?

「古びたのお屋敷のこと。ねぇあなた達、案内してくれない?」

あ、はい。てか、お屋敷って、ジュンブライト達の家じゃん。

「いいぜ、おばあちゃん!俺の家だから、案内するぜ!」

ジュンブライトが二カッと笑うと、おばあさんも二カッと笑い返した。

「ありがとう。そんな人間がいるとあたし、うれしいよ。」

おばあさん、ジュンブライトは人間ではないんですけど・・・・・・。
ま、いっか。


-1分後ー


「着きましたよ、おばあさん。」

「うわぁー。なんてでっかいお屋敷でしょー。あたし、感激したよ。」

おばあさんが、お屋敷を、目をキラキラしながら、みつめている。

ガチャ。

「じいやー、客が来たぞー。」

「はいはーい、ただいまー。」

ルクトさんの声が、遠くから聞こえてきて、ルクトさんがやって来た。

「ようこそ。わたくしは、ルクトともうします・・・・・・え?」

ガチャーン。
ルクトさんはおばあさんを見て、目が点になった。それとともに、紅茶が入っていたティーカップを、落とした。
一体、どうなってるの~!?

「え?」

おばあさんも、ルクトさんを見て、目を点になってるし。
すると、ルクトさんの目から、涙があふれてきた。

「ルー。」

おばあさんの目からも、涙があふれてきた。

「ルクト。」

そして二人は、だきついちゃった。

「久しぶりです、ルー。」

「本当。五十二年ぶりね、ルクト。」

え?え?

「一体、何があったんですか?」

あ、マドレーヌちゃん。それがね、私にも全然、わからないんだよ。

「誰?あのおばあさん。また、ルクトが知っている人?」

リリアさん。あの人、ルーさんって、いうらしいよ。
すると、ルクトさんとルーさんは、だきあうのをやめて、私達の方を向いた。

「これは失礼しました。この人は、ルーといって、元ヴァンパイア歌劇団の男役の、トップスターです。」

ヴァンパイア歌劇団って、宝塚のパクリでは?

「ちなみに、わたくしの元カノです。」

ルクトさんの元カノか~。へぇ・・・・・・って。

「え~!?」

私達は、声をそろえた。

「本当か!?んじゃあ、二人であーしたり、こーしたりしたのか!?」

ジュンブライト!妄想しすぎだよっ。

「キスはしましたか!?」

マドレーヌちゃんも!

「デートしてたの!?」

そんなリリアさんが、そんなこ興味あったなんて、知りませんでした。

「し・・・・・・失礼な!そんなこと、誰がしますかっ!」

ルクトさんの顔、まっかっかになってる。

「したよ。」

え~!?本当ですか、ルーさん!

「もちろん。キスしたり、あーしたり、こーしたり、デートまでしたよ。」

ジュンブライト達が言ったこと、妄想ではなかった!

「さぁ、お茶でもして、お話しましょう。」

「うん。」

二人とも、本当の本当に、カップルだよ。





テーブルの上には、紅茶、焼きたてのクッキー、チョコレートケーキがおいてある。

「こちら、人間の春間真莉亜様です。」

あ、よろしくお願いします。春間真莉亜です。

「人間と友達になりたいと、生まれた時から、そう思ったよ。よろしく。」

「続いて、ヴァンパイア界の大王、ヒアン様の息子、ジュンブライト様です。」

「よろしく。ジュンブライトだ。」

ところが、ルーさんはジュンブライトの顔を見て、目がまた点になった。

「えぇ!?ヴァンパイアだったの!?あたし、人間かと思ったぁ。はぁー。もうボケてしまったから、もう歳だねぇ。」

ルーさん、歳、過ぎてるんじゃないでしょうか。

「続いて、ヒアン様の弟、リアン様の娘、マドレーヌ様です。」

「あらぁ。かわいいねぇ。よろしくね。」

「最後は、マドレーヌ様のしつじ、リリア様です。」

「よろしく。」

「リリア様は普段、ヴァンパイアキャットのお姿で「いられます。」

その話を聞いたルーさんは、びっくりした。

「えぇ!?リリアちゃん、ヴァンパイアではないんだ!今日は、不思議なこと、ばっかりだねぇ。」

「ところでルー。君はなぜ、人間界に来たんですか?」

あ!私も気になる!
ルーさんは、「ゴホン!」と、言って、話し始めた。

「あたし、鏡屋で新しい鏡を探したんだよ。そしたらものすごーくきれいな鏡があって、購入したんだよ。ところがさぁ、家で髪を結ぶと、鏡が光って、吸い込まれてしまって、人間界に来てしまったんだよ。けどあたし、気づいたんだ。なんと、人間界にルクトがいるっていうこと!けれど、家が全然、見つからなかったんだよ。」

それで、「家」って、言ったんだぁ。あの時。けれど、鏡でヴァンパイア界とつながってるんだ。

「はい。人間界とヴァンパイア界は、鏡でつながっております。」

だから、ジュンブライトのやかたが、現れたんだ。

「ところでルー様。ルクトじいや様との過去の話を聞かせてください!」

満面な笑顔で、マドレーヌちゃんが言った。

「私も気になります!」

「俺も!」

「私も!」

するとルーさんは、私達の顔を見て、笑った。

「いいよ。今から、五十二年前のことだった。その時あたしは、べっぴんで、歌劇団の男役のトップスターだった。」


-五十二年前ー


あー。歌の練習、マジきつい。
マーガレット先生の歌の練習、マジ厳し~。
なので、学校を逃げ出しました~。あと、校訓も破りましたぁ。
え?校訓はどんなやつかって?それは・・・・・・。

一、歌劇団の者は外出禁止。なお、許可書を書いて提出すればいい。

一、お菓子、ジュース持ち出し禁止。太ったら歌劇ファンに迷惑かかるので。

そして、もっともやばいのが・・・・・・。

一、恋愛禁止。破った者は歌劇団をやめさせる。

まるで、AKBみたーいっと思ってるでしょ?てか、AKBって、なに?
これを破った人、何人かいたよ~。仲良しだった子が、破って、やめさせられたんだ。
ま、あたしは恋愛なんて興味ゼロ。女子力もゼロ。
今はこの広い広ーいお庭でおひるねして、何もかも忘れること。
そんじゃあ、おやすみ~。


2分後

ふぁー。よくねたぁ。
ぎゃあー!灰色のなにかが光ってる~!

「大丈夫ですか?」

男の子だった。
かわいくて、スーツを着て、おまけにちょうネクタイまでついている。
灰色のなにかって、男の子の目だったんだ~。
って、なにが大丈夫よ。

「僕、お庭で青虫のサンドウィッチを食べようとしたら、そこであなたがたおれているのを見て・・・・・・。」

あの~。あたし、たおれていませんですけどぉ。ただ、おひるねしていただけなんですけどぉ。

「あ!そうでしたか。すみません、僕のかんちがいでした。」

男の子は、深々とあたしの前で、土下座してきた。
名前、聞こっかなぁ?んーや!歌劇団の男役トップスターが、そんなこと、するもんか!
恋愛なんて、興味ゼロのあたしが、名前なんか・・・・・・。

「あの。名前は、なんていうんですか?」

聞くもんか。
男の子が、あたしの名前を聞くけどー!?
ざけんじゃねぇよ!あたしはそういうの、聞かないタイプだから。
けど、言おうっかな?
あたしの右側に、あたしそっくりな悪魔が出てきた。

「ねぇ、名前、言わない方がいいと思うよ。」

「あたしもそう思う。だって、歌劇団の男役の、トップスターだもん。」

「だよな~。」

悪魔が、あたしに二カッと笑って、ささやいてきた。

「だよね~。」

あたしもニカッと笑い返して、悪魔にささやいた。
てかあたし、悪魔の味方してるし。
今度は、左側に、あたしそっくりな天使が出てきた。

「あの。名前、聞いた方ががよろしいですよ。」

「なんで?」

あたしと悪魔が、声をそろえた。
ちょっと!じゃましないでよ!

「そうよ!」

「名前を聞くと、あなたの人生はすっごくなりますよ。」

なにを言ってるか、全然・・・・・・。

「ふん。なにがすっごくなりますよーだ!こいつは、歌劇に集中してんだよ!歌劇に!」

「でもいいんですか?歌劇団の男役トップスターが、そんなことをせず、帰るんなんて。もし聞いたら、女子力、恋愛に興味を持ち、それが、upしますよ。」

なーにが、upになりますよーだ!トップスターは、恋愛と女子力に興味を持つと、かっこ悪いんですよー。
あたしは天使に、あっかんべーをした。

「そうだそうだ!」

「そんな恋愛現象は、起こりませんよ。神はあなたを必ず、導いてくれますよ。」

すると、悪魔が天使にはむかった。

「うるせぇー!神神神神うるせぇんだよ!こいつには、神じゃない、えんま大王がやどってんだよ!」

「あなたもそう、はむかってよろしいでしょうか?」

「あぁ!あたしは、悪魔だからな!」

「悪魔さん、あなたは悪魔でも、人に優しくする心はありま・・・・・・。」

「せーんだ!お前、人の話じゃますんじゃねぇぞ!」

もう、イライラ「してくる。
この二人、一体、何しに来たか、わからん。

「うるさーい!」

「ひっ。」

あたしの大きな声で、悪魔と天使がポンっと消えた。

「あ・・・・・・あたし、ルー。ヴァンパイア歌劇団の男役トップスターよ。」

あたし、なに顔、赤くなってんの~!?

「いい名前だね。僕はルクト。しつじ協会で働いています。」

ルクト・・・・・・。いい名前だね。しつじになりたいんだ。

「はい。おととい、人間界に修行してきました。去年まで。」

「あ、ごめん。」

かわいい~♡あたし、カワイイ系の男子、大好きなんだよね~♡
すると、広場の時計のチャイムが、鳴り始めた。
えっと・・・・・・あー!もう、4時!寮に戻る時間!

「ねぇ。青虫のサンドウィッチ、食べる?とっても、おいしいよ。」

あたし、大好物だけど、帰るね!
あたしは、ルクトをほっといて、ダッシュで歌劇団の寮へと走った。





歌劇団の学校の学園長室前。あたしは呼び出された。
それにしても、赤いレッドカーベットがよく目立つなぁ。
学園長のイブ先生、こわーいよぉ。
校訓と、公演を失敗した時、呼び出されて、長い長ーい説教があるんだよぉ。
あたし、ここ来たの、これで九回目。
一回目は、女役のドレスをやぶったこと、二回目は、人間界で人気の『トムとジェリー』のDVDを、見たこと・・・・・・。

「ルー、入りなさい。」

ドアが開いた。しかも、勝手に。超能力ヴァンパイアだもん、この人。

「お入りなさい!」

うわぁ。こっわ~。
あたしは、学園長室に足をガタガタふるわせて、一歩一歩、部屋へと入った。
部屋の壁には、歴代学園長先生の写真がある。
その九代目、学園長こと、イブ先生。
イブ先生は、トレードマークは丸い眼鏡で、白髪で、背が高くて、長ーいドレスを着ている。
なんと、イブ先生は、元黒組トップスターなんだ!

「ぼぉーとしてないで、早くおすわり!」

あ、は・・・・・・ひぃぃぃぃ!体が勝手に動いて、イブ先生のところまで向かってるぅ!
これぞ、超能力ヴァンパイアの力!
ふぅ~。やっととまったぁ。
へ?今度はいすにすわってるぅ!
しかも、イブ先生の前だよ、前!
おそるべし、超能力!
さぁ、もう用なんてないから、帰ろ。
あ・・・・・・あれ?全然、離れない・・・・・・。

「まだ終わってないよ。話が終わるまで、いすにすわったままだよ。」

え~!?そんなぁ~。

「その前に、お茶をしながら、説教したいわねぇ。」

がくっ。もうお茶をしながら、説教聞くの、あきました。

「そうかい?」

人の心、読んだよ、この人!

「私は、あきないねぇ。」

先生が指をカチッと鳴らした。
え、え、え~!?やかんとコーヒーカップが、宙にうかんでるぅ!
学園長、やっぱあんたはすごいよ!
宙にうかびながら、紅茶を入れてるし、やっぱすんげぇよ!

「はい。」

あ・・・・・・ありがとうございます!では、すべての超能力に感謝をこめて、いただきます。
ごくっ。
う・・・・・・うんまーい!あたし、超能力ゔアンパイアに生まれてくればよかったぁ。

「さぁ、お楽しみの説教の時間に、行こうか。」

学園長が、眼鏡を上げて言った。
あー!説教のこと、忘れてしもうたー!
さぁ、なんてごまかせばいいんでしょうか。

「外出の許可書、提出しなかったねぇ。」

「それは、まぁ、許可書がどこにあるか、わかりませんでしたから。」

「本当かい?」

学園長の眼鏡の奥の黒い目が、ギラリと光った。

「本当ですぅ。あたしの顔に、『うそ』という字が、かかれていませんよぉ。」

だって、提出するの、めんどくさいもーん。

「提出するのがめんどくさい?」

なぬ!?人の心、勝手に読んだのか!この学園長!

「ふざけたことをいうんじゃないよ!あんた、とっぷすたーだろうが!めんどくさーいという言葉、口に出すんじゃないよ!」

あたしは目が点になった。
学園長、マジキレして、立っているよぉ。

「どこにいたんだね、こんな時間に!」

おひるねしてましたよ、広い広ーいお庭で。

「おひるね?まあたあんた、ふざけてるねぇ。トップスターのくせに校則、破って。ミミが探してたよ!「ルーがいません。」って。」

ミミっていう子は、あたしの幼なじみで、一緒の寮の部屋に住んでる。仲が良いんだよ~、ミミとは。

「もしまた校則を破ったら、トップスターをやめさせてもらうよ!」

えぇ~!?マジっすか!

「マジだよ。」

そんなの、いや~!
だってトップスターをやめたら、うちの両親はどう思うか。
うちの家族、音楽一家だもん。母はピアニストで、父はギターリスト。
あたしが歌劇団に入れたのは、両親のおかげ。あと、ミミもね。
あたし、トップスター、やめたくないよぉ!






「ルー!今日のあなたはおかしいですよ!ダンス、まちがってるじゃないの!」

「あ、はい!」

今日のあたし、ダンス、まちがってんじゃん!
昨日、超能力を見とれたせいか!?
あと3日で『名探偵ホームズ』の公演なのにぃ!
あたしはホームズ役なのにぃ!

「今日のレッスンはここまで。ルー、今日のダンス、ちゃーんとふくしゅうして来なさい。」

「はいっ!」

そして、マーガレット先生は、レッスン室を出た。

「ルー。昨日、怒られたでしょ?」

ミミ!

「聞いたよぉ。「だって、提出するの、めんどくさいもーん。」って。」

あ!こいつも、超能力ヴァンパイアだった!

「あらあら。昨日、勝手に外出した、トップスターさん。」

あたし達の前に、真っ黒い影が現れた。

「マリー!」

マリーはあたしのライバル。大金持ちの娘で、髪はポニーテールで、目はするどくて、黒組の男役。
歌劇団で女子力がいいのは、マリーだけ。あたしはマリーの女子力はあんまり、いいとは思わない。
ちなみにマリーは、劇でモリアーティー教授役。だって悪役、なんでも似合うもん。マリーは。

「校則をまた破ったら、トップスターをやめさせるって、言われたでしょ?ま、もしあなたがまた破ってやめさせたら、私が、トップスターになるわ。その時を、楽しみにしているわ。」

「なんだと!?」

あたしは、マリーをなぐろうとした。
すると、ミミがあたしのわきをつかんだ。

「だめよ、ルー!歌劇団の校訓、覚えてる?」

校訓・・・・・・あ!

一、友に暴力をふるわない。・・・・・・だ!

あたしはその言葉を思い出して、なぐるのをやめた。

「ふっ。なぐればよかったのに。」

マリーがささやいて、レッスン室を出た。
あいつ、あたしがトップスターになってから、すっごく、にくんで、さっきみたいなことを、言い出したんだ。
ちょーむかつく~。

「気にしなくていいよ。マリーの言い方が、悪いから。」

ミミがほほえんだ。
そうだよね。あたしが、悪くはないよね。悪いのは、マリーだし。

「さぁ、朝食の時間だから、食堂に行こ。」

うん!
あたし達は、誰もいないレッスン室を出た。





今日のメニューは・・・・・・。ねずみの丸焼きと、ちょうちょのムニエルと、いも虫とかえるの血のソース煮と、デザートは、あたしが大好きな、干しがえる!ん~、どれもおいしそ~♡
くん、くん、くん、くん。ん~!かえるの血が、だんだんただよってくるぅ!
あと、もう少し・・・・・・。

「ありがとね~。」

来たー!ついに、あたしの昼飯がー!

「はい。ルーちゃん。」

食堂のおばちゃんが、あたしに差し出したのは、バケット。
え?メニュー、違うんじゃあ・・・・・・。

「さっき、男の子が「ルーさんに。」って、渡したから。ちょうネクタイとスーツを着てたから、しつじ協会の子だったよ。」

しつじ協会・・・・・・ルクトさんが!?
あたしは、バケットをもって、テーブルのいすにすわった。
ルクトさん、今日はお仕事、休みだったのかな?

「ルー!そのお弁当、まさか自分でつくったの!?」

バケットを見て、ミミが驚いた。
違うよ。てかあたし、料理下手だから。

「じゃあ、誰につくってもらったの!?」

まあだ、驚いているよ。
しつじ協会のルクトっていう人。カワイイ系のイケメンで、将来は立派なしつじになるらしいよ。

「カワイイ系!?」

なによ、驚いて。

「坂本九に、そっくりだった!?」

はぁ?誰よそれ。

「知らないの!?人間界の歌手だよ!」

あたし、人間界の有名人、あんたみたいにくわしくないから。

「あの人も、カワイイ系だよ!」

へぇー。今度、調べておくから。
それより、バケットの中には、なにが入ってるんだろ?
あたしはバケットを開けた。
中にはなんと、あたしの大好物、青虫のサンドウィッチが、どっさり!
その上には、手紙が一枚置いてあった。
なんだろ?

「開けてみな。」

うん。あたしは手紙を開けた。

<ルーさんへ 昨日、君が大好物っと言っていた、青虫のサンドウィッチをつくっておいたよ。 できれば、そのバケットをもってきて、夜の八時に満月谷に来て欲しい。 ルクトより>

意外と字、きれいじゃん。
・・・・・・満月谷って、あの満月がでっかく見える谷のこと?

「そうだよ。それが?」

ううん。なんでもない。
あたしは首を振った。
なんでルクトさん、満月谷に来て欲しいって、言うんだろ。
きっと、なんか理由でもあるのかな・・・・・・。
でも、外出する前に、許可書を出さなくちゃ。
トップスター、やめさせられる。

「早く食べないと、サンドウィッチ、くさるよ。」

そうだった!せっかくルクトさんがつくったあたしの、青虫のサンドウィッチちゃんが、くさってしまう・・・・・・。

「いただきまーす!」

あたしはサンドウィッチを口にぱくっと入れた。
ん~。うま~い!油で焼いた青虫がおいし~い!それに、ブラックペッパーの香りも、こうばし~い♡
ルクトさん、ありがと~♡





夜の八時のヴァンパイア界。
暗いなぁ、森。
あたし、許可書提出して、「どこに行くのかい?」って、言われなかったよぉ。
満月谷はもう少しだし・・・・・・。夜の森は、こわ~い。
バサッ。
ひぃぃぃぃぃ!
なんだぁ、ふくろうがとんでいたのかぁ。

「カー、カー、カー!」

ひぃぃぃぃぃ!
なんだぁ、カラスかぁ。
森をぬけ出し、ついに満月谷に到着~。
崖のてっぺんに、満月がでっかくみえるのが、満月谷。
崖を登るのは、こわいから、とんで見よ~。
あたしの背中に、黒い翼が、バサッとはえた。
そしてあたしは、満月谷へと向かってとんだ。
下を見るの、こわいなぁ。
でも、あたしはヴァンパイアだから、そんなの気にしない、気にしなーい・・・・・・。
ヒュー。
キャー!風に吹きとばされたぁ!

「ルーさーん!」

その声は・・・・・・。

「ルクトさん!」

ルクトさんが、あたしのわきをつかんだ。
え、え、え~!?ちょっと!離してぇ!

「なんで?」

あたし、こういうの、苦手。

「ごめん。谷に着くまで、我まんして。」

うん。
ドキドキ。
うわ!心臓の音がヤバー!
もしかして、女子力もない、恋愛が興味ないあたしに、まさか・・・・・・。
って、そんなわけ、ないっしょ。

「さぁ、もう着いたよ。」

うわぁ。満月、でかっ!
そして、あたしたちは無事、谷に着陸。
うわぁ~。やっぱ空をとんだ時の景色より、今着陸した満月の景色がいい~。

「ここ、始めて来たんだ!」

あたしはルクトさんの方を振り返り、にこっと笑った。
そしたらルクトさんの顔は、リンゴみたいに赤くなっていた。

「僕は・・・・・・、仕事で失敗した時、ストレス発散でここに来てるんだ。」

あれ?あたし、ライバルとのけんかでイライラがなくなってきたなぁ。

「それ、ストレス発散だよ。」

ルクトさんがあたしににこっと笑ってきた。
・・・・・・かわいい。
って、なに顔、赤くなってんのよ、あたし!

「じゃあ、あたしもストレス発散のために、ここ、来ようかな。」

あたしがルクトさんににこにこと笑いかけると、ルクトさんはまた、顔がリンゴみたいに赤くなって、後ろを振り向いた。

「そ・・・・・・そうしていただければ、いいよ。」

と、ささやいた。
なーんか、あやしい。
ここにあたしを呼び出すのも、あやし~い。
リンゴみたいに赤くなるのも、あやし~い。
青虫のサンドウィッチを届けるのも、あやし~い。
あ!バケットを返すの、忘れてた!
あたしは、ルクトさんにバケットを返すと、ルクトさんは後ろを向いたまま、右手を出して、ぱっとバケットを取った。
やっぱり、あやしーい。

「あ・・・・・・あの!満月、とてもきれいだねっ。」

「そうだね。」

ほら、あやしい。
恋愛興味ゼロ、女子力ゼロのあたしに、声をかけるなんて、あやしい。

「ねぇ、好きな人、いる?」

え!?いや~。そんなの、いないよ、ルクトさん。

「ルクトでいいよ。ルーさん。」

ルーでいいよ。ルクト。ところで、ルクトは好きな人は・・・・・・。

「いるよ。」

え!?誰、誰!?
すると、ルクトがぐいっとあたしの手をぐいっと引っぱって・・・・・・。
チュ。
キスをした。
えっ、えっ、えっ、えぇ~!?
ルクトがあたしの唇を離した。

「君だよ。」

えっ、あたしなの?なんで?

「僕、初めて君を見た時、一目ぼれしたんだ。」

一目ぼれ~!?

「あたし、そんなにかわいくないよ。だって、恋愛に興味ないし、女子力はないし・・・・・・。それに、うちの歌劇団は恋愛禁止だし・・・・・・。」

「僕と付き合ってくださいっ!」

へ?今、なんて?

「付き合ってください!」

え~!?

「ごめんなさい!」

あたしは思いっきり、頭を下げた。

「あたし、さっき「うちの歌劇団は恋愛禁止。」って、言ったでしょ?それを破ると、歌劇団をやめさせられるの。付き合うのは、あたしが卒業してからして・・・・・・。」

「今しかダメなんだ!」

ルクト・・・・・・。
ルクトの目が、うるうるしている。

「どうしても、どうしてもダメなんだ・・・・・・。卒業する365日をまてないよ。 僕のわがままだけど。」

ルクトの目から、涙が出てきた。

「あーあ。」

あたしの声で、ルクトはなくのをやめた。

「しょうがない。付き合うか。恋愛も女子力ないあたしだけど、いい?」

あたしがにかっと笑うと、ルクトはにこっと笑った。

「よろしく、ルー。」

こちらもねっ。





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