逍遙の殺人鬼

こあら

文字の大きさ
上 下
323 / 333

324

しおりを挟む
ドタドタとせわしない足音がだんだん大きくなって聴こえた
そして、ドアのすぐそこまで来たかと思ったら映画みたいに扉が勢いよく開き、ゼハゼハし頭を下げたギュウ君が姿を現した

「っぎゅ…ギュウ…君?だいじょうぶ…?」

「ちっ、ちさは…、だっ、いじょうぶ、っだった…か?」

「絶好調です…」

呼吸を整えようと動きが止まるギュウ君は、過呼吸になりかけた息を落ち着かせて、ゆっくりと、若干フラつきながら歩きベッドの縁に腰がけた

私はすかさずお水を差し出した
春さんから連絡を受けて、急いで向かってくれたんだろうなと思った
姿が見当たらず焦ったようで、ずっと探してくれていたみたいだ









「ごめんなさい…。急に居なくなったりして…」

「何かあったんじゃないかって、凄く焦った…。でも、何もなくて良かったよ。」

「スマホをギュウ君に預けていたのをついさっき気付きまして…。決して逃げたりしたわけでは、」

「分かってる。ちさはそんなことしないって、もししたって言うなら致し方なくって事だと思ってるから。」 

聖人みたいな人だと、両手を合わせて思わず拝んだ
ギュウ君は目を丸くして、なにしてんの?みたいな顔でこちらを見てきた

ようやく整った息で、私に「それで?」とどこに居たのかを訪ねる
色々…と答えると、"色々"って?とオオム返しのように聞いてきた

「本当にだよ。知り合いに会って、その人に連れられて知らない人の挨拶に回って…、それで……」

「疲れた?」

「そうね、歩き疲れたよ。見てよ脚がパンパン」

「いいよ見せなくて…。今日はお互いよく頑張ったよな、お疲れさま。」

きっと、ギュウ君も疲れている
それなのに、急に消えた私に怒りもせずにいてくれる

ギュウ君は疲れてないの?って聞いたら、笑顔で「くたくただよ。」と笑って見せる
右手を左肩において、「バキバキかも」と歯を見せて笑う
疲れたと口では言うのに、表情は疲れた顔を見せない

ジャケットを脱いで、首もとを緩める
その仕草に、なぜだかマッサージをしてあげようと思い浮かんだ
教会に居た頃はよく、研さんと肩揉みしあっているのを目にした

「肩凝ったなら私が揉もうか?」

「っえ!?っい、いいよっ!ちさだって疲れてるだろ。」

「ギュウ君を置き去りにしちゃったし…、色々と迷惑かけたから、肩揉みくらいさせて。大丈夫!私、肩揉みは上手いよ!!」

半ば強引に彼の肩に手を置き、動揺を見せるギュウ君を無視して肩揉みを始めた
ジャケットを着たままでは分からない、ガッチリとした肩が私とはまるで違う構造の様に思わせてくる

そういえば、いつかの時に見た…いや、見てしまったギュウ君の身体はたくましかった
私が苦戦して中々上げることのできなかった荷物も、軽々持ち上げていた
私も男に生まれていたら…なんて、思っても…現実味がなくてため息ばかりしていた記憶がある

_____それにしても……

「めちゃくちゃ肩凝ってない!?凄く硬いんだけど…」

「いや…それ、自分の肩と比べてないよね?肩にだって筋肉あるし、そもそも男と女の体は違うだろ。」

「今まで自分以外の肩をじっくりと触ったことなかったから」

「っも、もういいよっ。十分だからっ!」

「っね、ちょっと、私の肩触ってみてよ。どれぐらい違う?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

処理中です...