逍遙の殺人鬼

こあら

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閉じたまぶた越しに感じた微量の光に、ゆっくりを起こされた
開放的な感覚と優しく照らす視界が、起きるのを遅くさせる
ようやく半分開いたかと思ったまぶたは、そこでストップした
まだ寝て良いよと誰かに頭を撫でられた気がして、開いたまぶたを元に戻した

うつ伏せに寝ているせいか、自分の心臓の音が微かに感じる
髪を整えるみたいに撫でる手は、睡魔と言うよりかは安らぎに近くて全然嫌じゃなかった

(そういえば私、春さんの部屋にお邪魔してたんだっけ)

ここは春さんのベッドで、春さんの部屋の中だ
きっと春さんが撫でてくれているんだと思うと、更に心地よかった









「ちーちゃん。」

「んん…」

「ちーちゃん、起きて。今日最終日よ。」

「ん…、春さん…?おはようございます」

ぐっすり寝た私は目を擦って、既に支度がすんでいる春さんを見た
「おはよう、お寝坊さん。」と私を見てくすっと笑った

1度は起きようとした
でも春さんの頭を撫でる行為でまた眠ってしまったんだ

「頭撫でられて気持ち良くって…2度寝しました」

「"撫でられ"?まあいいわ、ちーちゃんの部屋から服取ってきたから、顔洗って着替えて。」

「…お腹空いた」

「朝食は後よ。ほらほら、早くベッドから降りなさい。」

促されて、私は顔を洗った
鏡に写る私は、何だか顔色が良い
なのに、相変わらず髪の毛は爆発していた

(この髪の毛は、何でこうも主張が激しいのかしら…)

何度見てもおかしいと感じる
メデューサの蛇のように自我でも持っているんじゃないかって、時々思う

せめて色だけでもまともだったらと、何度思ったか
髪の毛が黒くなった時は、少しだけでもになれた気がした
(髪の毛………染めてみようかな…)

「ちーちゃーん、顔洗ったなら早くおいでー。」

「っあ、はーーい!」

「今日はアップにする?それとも下ろす?」

「っお、おまかせで…」(良く分かりません…。)

そういえば、春さんが髪の毛をセットしてくれる時感じる指は、下…私よりも細く器用な手付きだ
細かい行程も難なくこなすその指達は、今朝のとは違うように感じた
(寝ぼけてたからな…)

曖昧な感覚の記憶は、不安定な橋を渡るように確かなものじゃない
ほぼ寝ていたようなものだだたから、尚更不確かな感覚だ
頭を撫でられた時感じたのは、優しい手付きと髪の毛を整える仕草、それからお菓子のように甘い香りだった

「春さん」

「ん?なーに?」

「香水って、今着けてますか?」

「勿論着けてるわよ。ちーちゃん、香水はマナーみたいなものなのよ。これを機にちーちゃんも試してみるってのはどう?」

「っい、いえ…、私にはまだ早いかと」

「そんなこと無いわよ!メイクも服も香水も同じ、所詮はまとうことしか出来ない。でも、時として鎧にも武器にもなる。ま、大事なのは中身って話だけどね。」

"鎧にも武器にもなる"…でも、それを使う人が扱えきれなければ、結局のところは意味がない…
宝の持ち腐れのような、身の丈に合わないモノを持つなんて……私には出来そうにない
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