逍遙の殺人鬼

こあら

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「そう言えばさ、」そう言って振り返るギュウ君に、連動して私の脚が止まる
聞いて聞いてと、なんだか嬉しそう言うもんだから、ふふふと笑いそうになった

「もう外見た?」

「"外"?まだ見てないけど。なにー?外に何かあるの?」

「見てないんだな。よし、こっち来て。」

「っえ!?っちょ、ちょっとギュウ君?」

急に私の手首を掴んで、早く早くと急かして廊下を走る
どうしたの?と聞いても「すぐ分かるから。」としか答えてくれなくて、ギュウ君に引っ張られて程なくして彼は止まった

「ほら見て。」

「"見て"って何を…」









ガチャッとドアノブを握って開ける
すぅー、と冷たく肌を攻撃する寒気を感じ、その次に目が眩むくらい明るい光が目に入り込み、一瞬眩しさに目を細めた
吐く息が白く色づき、「こっちに来て見て。」と微笑むギュウ君に後押しされて前へと進んだ

真っ白、それが第一印象だった

「すごい…」

「昨日の夜降って、結構積もったみたいなんだ。凄いよな。」

「本当…すごい…。真っ白だね」

寒さなんて感じないみたいに、自分の環境下を忘れるくらい目の前の風景に圧倒され、同時に感動した
こんなに積もった雪を見たのは、正直はじめてだった

廊下にあった、大きな出窓
その大きな出窓に近付けば、思考は5歳児並になる
あの固さのない雪にダイブしてみたいし、丸めて雪だるまを作ってみたい
単純に、そう思った

「外、行ってみる?」

「…良いのかな?」

「良いよ。じゃ、上着着て行こう!」

駄目とか迷いの思考は出てこなかった
すぐに暖かい格好になって、外に出た

人が通れるように雪掻きされ、道が作られていた
その道なりに沿って進む
「冷えるね」だなんてギュウ君に言ってみるが、彼は寒さよりも積もった雪の方に興味が行っている
私も同じで、人通りの少なそうな場所を探し向かう

雪に触れると、ふわふわでシロップを掛ける前のかき氷みたいで、指先が氷になるかと思うくらい冷たいモノだった
思わず冷たいと漏らした

雪をかき集めて丸めて雪だるまを作ろうと試みるギュウ君は、いつもの大人な感じを忘れて少年の様にはしゃいでいる
大きいのを作るぞと意気込んでいる
私も小さく雪を丸めて小さな雪だるまを作ってみる

小さく可愛らしい雪だるまの土台が完成し、目を付けようと手頃な石を探す
でも、付近には思うようなサイズの石が無く、仕方がないので場所移動した
少し離れた場所ところに小さめの小石が数個あり、それを拾って戻り、雪だるまの目にした
小さな雪だるまは可愛らしく、更に手を付けてあげようと枝を探す

小石を見つけた場所よりも離れた場所へと探しに行こうと思い、ギュウ君に声を掛けてから行こうとしたが、雪だるま作りに夢中になっている様子を目にして止めた

(邪魔しちゃ悪いね。すぐ戻ってくるし、)
いいやと、私は枝探しに向かった

奥に行けば行く程に足跡は少なくなり、道は無くなっていた
今まで色んな形、大きさの靴の足跡だったのが無くなり、1つ固定の足跡が延びていた

足跡は私の足よりも大きく、一定間隔で歩き進んでいた
わたしはその足跡を辿ってみた

道は無くなったが、足跡の道筋がある、と足跡をなぞるように踏み進む
普段、自分の歩く歩幅とは間隔が大きい
少し大股になるくらいが調度良く合うとみた

自分の足が、降り積もった雪のカーペットに空いた穴をなぞるのが、何でか面白く目で確認しながら進んで行く
それは、枝探しでは無く、新たな遊びを見つけたような感じだった

「っん!!??」

と、何かにぶつかった
下ばかり見て、周辺を気にしていなかった
木か何かにぶつかったのではなく、感触は硬いとは逆のものだった
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