逍遙の殺人鬼

こあら

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「お待たせしました。ベスト記録更新したよ、ちさちゃん!」

「それは…なによりです」(そんな気はしなかったけれども…。)

それよりご覧下さい
あちらの曇った表情を立ち昇らせる、朔夜さんのお顔を……

モサッとした前髪の合間から見える鋭い眼球
腕組みした態度
と言わんばかりに右足を貧乏揺すりしている

「男なら支度はスマートにこなせ、分かったな。」

「すいません、これでも頑張ったんです。」

「女よりも、いや、女の何倍も時間がかかっていたぞ。時は金なりというモノを知らんのか?」

時は金なりとは、時間はお金と同じように非常に貴重なモノ
無駄に浪費してしまわず、有意義に使いましょうといった意味のことわざ









「次を右、真っ直ぐ行って高速道路に入れ。」

「あの、住所言ってもらえたら助かるんですが。」

「知らん。」

_____知らんのかい!!!!!!!!

さっきっから、"右"とか"左"とか"そっち"とか…めちゃくちゃ迷惑極まりない注文してませんか?
そもそも住所を認知してないなんて…本末転倒

臼田うすただって病み上がりで、本当なら安静にして頂きたいのに…

「どこへ向かってるんですか?」

「倉庫だ。」

「春さんの家からだいぶ離れた所にあるんですね。どうしてそんなに遠い場所に倉庫を借りたんですか?」

「借りていない。俺はな。」

やだ……
何その意味深な言い方
その続きは聞かない方が絶対いいじゃん…

そう思っていたのに「じゃぁ、誰が借りてるんですか?」って、朔夜さんに質問したのは臼田うすたさんでした…
特に考えずに聞いてしまった彼の質問に、朔夜さんは「借りていると言うより、」と話し始める

「オカマの親が所有している倉庫だ。」

「春さんの親…?」

「そうだ。俺とオカマの親が仲が良い。だから倉庫なんかも好きなように使わせてもらってるんだ。」

「春さんって…結構お金持ちの生まれなんですか?」(ってことは、朔夜さんも良いとこの坊ちゃん…。)

答えは限りなくYESに近いものだった
又従兄弟と一緒に暮らしてるんだ…と思ったが、仲が悪いのに又従兄弟も何も関係ないと頭がこんがらがって来た

運転を遂行する臼田うすたさんは、ウンウンと承知していたように首を軽く縦に降る
「又従兄弟まで行くとあまり顔は似ないんですね。」なんて言ってみせる彼に、似てたまるかと即答した朔夜さん

(確かに全然似ていない)

朔夜さんと春さんのハイブリットが生まれたら…と、考えるだけでハイスペック過ぎた
春さんのあの顔立ちと話術、朔夜さんの身長と知能が合わさった人物は…と脳内想像を繰り広げていた

「そう言えば僕知らないんですけど、ハルカさんとどうしてあんなに仲が悪いんですか?ハルカさんがあんなに敵意向けるのって、瑞貴さんを除けば朔夜さんくらいですよね?」

「オカマの事情など知らん。」

「朔夜さんも好きじゃないみたいですね。何でですか?」

「気に食わない。」

びっくりした…
今までで、1番静かにそして低く言い放った言葉
ゾワッって背中を冷たい何かが這うみたいに、悪寒が走った気がした
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