逍遙の殺人鬼

こあら

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「みんな相手がいてそうなったんじゃないの?」

「そうだったら…良かったんですけどね。そういう施設が別にあって、卒業して行ったみんなは自立したんじゃなくて、そこに追いやられてるんです」

「なんでか、ちーちゃんは知ってるの?」

「…その施設では、強制的に妊娠させているんです…。その後どうなるのか、何でかは…知りません……」

「そうなのか」

「こんな話…信じられませんよね。確かな証拠がある訳じゃないし、私がイカれてるとしか思えませんよね…」

私だって急にこんな話聞いたら、妄想とかじゃない?って思っちゃう…
だって意味不明だし、理解しづらいことだ

なのに春さんは「こんな時に嘘とかつく子だとは思ってないよ」って、まるで私を信じると言っているかのように、また頭を撫でた









「話してくれてありがとね。言いづらかったでしょ」

「春さんこそ…聞いてくれてありがとうございました。訳……分かんなかったと思います…」

「まーねー、完璧理解したとは言えないけどこれだけは言えるかな。ひとりで抱え込まなくていいんだよ」

「……春さん」

私は嬉しかった
今まで背負っていた物を、一緒に持つよって隣にいてくれているみたいだった
それがとてつもなく勇気をくれるような、背中を押すような思いに感じられる

「もう休みな」とまるで私に姉が出来たみたいな感覚に、なんだかこそばゆかった
でもそれが暖かくって「おやすみねー」と私にハグをする春さんは、男性の姿なのにそれを意識させない何かを持ち合わせていた
抱きしめられた時に香る香りが柔らかくって、きっと香水が何かを付けてはいるんだろうけど、全然嫌いじゃなかった

部屋に入れば急に静かになって、少し寂しさが湧き出た
でも、春さんに抱きしめてもらったからなのか、ひとりじゃないよと言ってもらえたからなのか、いつもみたいに悲観的にはならずに済んだ
ベッドに座って、なんとなくスマホを開いた

通知が何件かと、まさかの潤さんからのメールが目についた
メールの内容は、〔明日、迎えに行くことが出来なくなってしまったよ。本当にすまない。明後日にでも迎えを送るよ、私のレディ。〕となっていた

「忘れてた…」(明日迎えに来てもらう予定だったんだ…)

私は急いで返信した、迎えに来てもらわなくて大丈夫だと
そしたらすぐ潤さんからの返信が返ってきた

〔青葉さんに送ってもらったの?迎えに行けなくてすまなかったね。いつかまた、会おう。〕だって…
説明が面倒くさいと言うか…なんて言えばいいのか思いつかず、青葉さんには悪いけど送ってもらったことにした

教会がどうなったかなんて、分からない
というか…ジャンさんと春さんは、どうして教会あそこに来たんだろう?
私を迎えに来てくれた…?そう思うのはおこがましいことだ

「明日、春さんに聞いてみよう」(きっと何か理由があるはず)

もうすっかり仲良し気分の私は、そう意気込んで眠ることにした
もう考えたり悩んだりするのは、明日に後任せにした
自分の体温によって温まっていく毛布に包まれて、私は目蓋を閉じた
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