逍遙の殺人鬼

こあら

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「到着♪」と車のエンジンを切ってシートベルトを外す春さんは、ここが家だよと私に紹介してくれた

「ここって、バーじゃ…」(前に1度連れてこさせられた)

「地下はね。でもこの建物所有してるのアタシだから、あんま気にしなくていいよ」

「お金持ちなんですね…スゴイ」

地下は(オカマ?)バーで、それ以外は普通に家として使えているんだとか
「どうぞ」と手招きしてくる春さんに従って中に入ると、確かに外観とは違って普通の家だった
それにもスゴイ…と感動してしまう

ここがトイレ、こっちがリビングねと間取りを丁寧に教えてくれる
荷物こそ多くないものの、1番驚いたのはお風呂の大きさだ
普通のお風呂の大きさより2回りぐらい広いよ?
小さいよりかは良いけど…









(私が寝る部屋は左の…)

「ちーちゃん、こっちこっち」

「っあ、はい!」(何かな?)

「これ、ジャンが12の時の写真。結構可愛い顔してるでしょ」

「本当ですね…」(相変わらず整った顔)

中学校の卒業アルバムを広げて指差し、示してくれる
そこにはまだあどけないジャンさんの学ラン姿が写っている
笑顔じゃないけど、今のジャンさんからしたら全然可愛らしかった

そして同じページに中学生の春さんもいた
あり得ないくらい綺麗で、一瞬女の子と見間違えるほど無茶苦茶可愛く写っている
5回に3回は半目になる私とは大違いだ
目の大きさなんて比べ物にならない

こんな綺麗な顔した子が一緒だったら、毎日目の保養になるな…と納得してしまう
(学ランを着ていなければ男だとは思わないもの)

「こっちは修学旅行の時」とページをめくって見せてくれる春さんは、率先してジャンさんの写真を見せてくる
何故に?…
まあ、見ますけどね

「すごい嫌そうな顔」

「小さい頃からしかめっ面してたんだよな。一部の女子からは結構人気だったんだよ?誰も近寄らなかったけど、顔はイケメンだからね」

「春さも人気者じゃないですか!ほらここのコメントに"学校1の美少年"って書かれてますよ」

「そんな事もあったなー。っあ、そういやー、アタシとジャンがいつも一緒にいるもんだから"ゲイカップル"とか言いやがる奴もいたな。ま、後でしごいたけど」

なんだって?今さらっとすごいパワーワード言いましたよね?
まあ………聞こえなかったことにしよう
うん…それが良い…

若干の冷や汗をかいている私に、春さんは「もっと前のもあるよ」と、ここぞとばかりに出してくる
こんな機会無いのだからと、その誘惑に負けてしまっている私には何も言えないのだか…

「これ8歳ぐらいの時」と言っては少しだけ古びた感じの写真を手渡してくれる
そこにはまるで良い所のお坊っちゃんみたいに子供用スーツを着ているジャンさんと春さんがカメラ目線で写っていた
勿論ジャンさんは笑っていない
対象的に春さんは、とびきり可愛いスマイルをしている

「実はここにジャンの写真飾ってやってんの。せっかくだからと思って置いてるのに、あいつ"捨てろ"とか言うのよ」

「本当に仲良しなんですね。ん?春さん、この写真は何ですか?」

「これは13の時の写真。隣に居るのは小春さんっていって、大切な人。もうこの世にはいないんだけどね」

「…亡くなられたんですか。すいません、辛いこと聞いて」

春さんと小春さんという女性が写る写真は、桜色のキレイな写真立てにしまわれていた
それを手に取って憂いげな表情かおをしては、「天罰が下ったんだよ」と冷めた声で言い放った

その言葉が、やけに重く心にのしかかった
小春さんがどうやって亡くなったのかは知らない
写真から得られる情報は、とても綺麗で優しげな人だということと、その隣で今まで見たことない幸せそうな春さんが写っていることだけだった

春さんの大切な人、そんな人の死に対して"天罰が下った"だなんて言葉を言って欲しくない
だって…今だって、写真を見てはすごく悲しげに見えるから

「春さん…亡くなった方にその言葉は…いくらなんでも、」

「違う。天罰が下ったのはアタシの方だよ。いつまでも一緒に居られると思って、側にいることの有り難さを忘れてたから…だから俺から小春を取り上げたんだよ」

「そんな悲しいこと言わないでください。春さんのせいじゃないですよ…」

「悪い悪い、重苦しい雰囲気になった)。まあ、アタシよりジャンの方が辛かったんじゃないかな。あいつナツさんのことめちゃくちゃ好きだったから」
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