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前のめりになりながら、懇願するみたいな顔つきで私を見てくる臼田さん
それはすごく真っ直ぐで、私の心を罪悪感でいっぱいにさせてくる
心配してくれたんだなと思った
眉を垂れさせて、その大きな目を月夜に照らさせて真っ黒な瞳で私を見つめている
その瞳には私が写るほど澄んだ、綺麗なものだった
その真っ直ぐな瞳に写ることすら物怖じしてしまう
私のせいで、何もかも壊してしまうのではないか
臼田さんや他の人を傷つけてしまうのではないか
私がいるせいで…不幸になってしまうのではないか……って
それなのに"一緒に住もう"って、両手を握ってくる
離さないし、離そうとしない
_____そのひたむきさに揺らいでしまいそうだ…
「…私は、一緒には住めません…」
「ちさちゃん…」
「…ごめんなさい。こうやって迎えに越させてしまって…。迷惑…でしたよね、本当にごめんなさい」
私のことを思い出していたって聞いて、胸の奥がギュッとした
そしてチクッとした
ジャンさんの家に住まわせてもらった時、臼田さんと居る時は寂しいって思わなかったし感じなかった
いつも私を笑わせてくれて、私が作るご飯を「美味しい」って頬張ってくれた
そんな小さな幸せがすごく大切で、ずっとその幸せを掴んでいたかった
いつも紳士的で笑顔が素敵で、第一印象は凄かったけど今では全く面影は無い
最後に会った時よりも若干伸びた前髪と襟足が、少しハネていて可愛らしかった
そんな臼田さんが優しく握る手から自分の手を引っ込めた
少し後退って、静けさの中に動いた事によって生じる乾いた草の音が虚ろげに聴こえる
離れようとする私を臼田さんは必死な様子で捕まえ、離そうとしなかった
「待って!間違えたんだ!!」
「……臼田さん、」
「思い出を懐かしむみたいに話して、付け足すように"一緒に暮らそう"って言ったけど違うんだ。ちさちゃんが居なくなった時からずっと思ってた!」
「臼田さん、」
「毎日ちさちゃんのことを考えてた。今何してるんだろうって、何処に居るんだろうって…。いつか絶対一緒に暮らしたいって」
切羽詰まったように焦りを見せる彼に、臼田さん!と彼の名前を強く呼んだ
その声にッハとしたのか、「ごめん…」と私の両二の腕を掴む手を緩めた
(違うんだよ、臼田さん)
臼田さんの事を嫌いになったとか、一緒にいたくないとかそんなんじゃない
今まで親切にしてくれた、私の命の恩人とも言える臼田さんに迷惑をかけたくないだけ
私があの家に戻ったらどうなる…
住所はもう特定されてるだろう
そんな状況で戻ったりしたら、臼田さんもシスターエリのように………殺されてしまうかもしれない…
そんなの、絶対嫌だ
あの男が追いかけて来るかは分からない
でも、もう前と同じようには居られないと察していた
「私、臼田さんが嫌いとかそういうんじゃないんです」
「僕のこと嫌になったからじゃないの?…ならどうして」
「……それは、」(言って良いんだろうか…。余計な心配を植え付けないだろうか…)
そう口がおぼつく私は、施設に追われていること、今しがた男に捕まっていたばかりだったことを言うか言うまいか悩んでいた
余計なことに臼田さんを巻き込みたくない
それは心から思うもので、それだけを言っても彼は納得しないという事もちゃんと分かってはいた
それはすごく真っ直ぐで、私の心を罪悪感でいっぱいにさせてくる
心配してくれたんだなと思った
眉を垂れさせて、その大きな目を月夜に照らさせて真っ黒な瞳で私を見つめている
その瞳には私が写るほど澄んだ、綺麗なものだった
その真っ直ぐな瞳に写ることすら物怖じしてしまう
私のせいで、何もかも壊してしまうのではないか
臼田さんや他の人を傷つけてしまうのではないか
私がいるせいで…不幸になってしまうのではないか……って
それなのに"一緒に住もう"って、両手を握ってくる
離さないし、離そうとしない
_____そのひたむきさに揺らいでしまいそうだ…
「…私は、一緒には住めません…」
「ちさちゃん…」
「…ごめんなさい。こうやって迎えに越させてしまって…。迷惑…でしたよね、本当にごめんなさい」
私のことを思い出していたって聞いて、胸の奥がギュッとした
そしてチクッとした
ジャンさんの家に住まわせてもらった時、臼田さんと居る時は寂しいって思わなかったし感じなかった
いつも私を笑わせてくれて、私が作るご飯を「美味しい」って頬張ってくれた
そんな小さな幸せがすごく大切で、ずっとその幸せを掴んでいたかった
いつも紳士的で笑顔が素敵で、第一印象は凄かったけど今では全く面影は無い
最後に会った時よりも若干伸びた前髪と襟足が、少しハネていて可愛らしかった
そんな臼田さんが優しく握る手から自分の手を引っ込めた
少し後退って、静けさの中に動いた事によって生じる乾いた草の音が虚ろげに聴こえる
離れようとする私を臼田さんは必死な様子で捕まえ、離そうとしなかった
「待って!間違えたんだ!!」
「……臼田さん、」
「思い出を懐かしむみたいに話して、付け足すように"一緒に暮らそう"って言ったけど違うんだ。ちさちゃんが居なくなった時からずっと思ってた!」
「臼田さん、」
「毎日ちさちゃんのことを考えてた。今何してるんだろうって、何処に居るんだろうって…。いつか絶対一緒に暮らしたいって」
切羽詰まったように焦りを見せる彼に、臼田さん!と彼の名前を強く呼んだ
その声にッハとしたのか、「ごめん…」と私の両二の腕を掴む手を緩めた
(違うんだよ、臼田さん)
臼田さんの事を嫌いになったとか、一緒にいたくないとかそんなんじゃない
今まで親切にしてくれた、私の命の恩人とも言える臼田さんに迷惑をかけたくないだけ
私があの家に戻ったらどうなる…
住所はもう特定されてるだろう
そんな状況で戻ったりしたら、臼田さんもシスターエリのように………殺されてしまうかもしれない…
そんなの、絶対嫌だ
あの男が追いかけて来るかは分からない
でも、もう前と同じようには居られないと察していた
「私、臼田さんが嫌いとかそういうんじゃないんです」
「僕のこと嫌になったからじゃないの?…ならどうして」
「……それは、」(言って良いんだろうか…。余計な心配を植え付けないだろうか…)
そう口がおぼつく私は、施設に追われていること、今しがた男に捕まっていたばかりだったことを言うか言うまいか悩んでいた
余計なことに臼田さんを巻き込みたくない
それは心から思うもので、それだけを言っても彼は納得しないという事もちゃんと分かってはいた
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