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溜まる涙によってボヤけた視界は、何も鮮明に見せてくれない
やはり殺されるんだ…と思っていると、聴き慣れた声が聞こえた
その主は走っていたのか、呼吸が乱れている
そっと祭壇から私を降し、優しく抱き寄せて来る
その振動に溜まった涙は、頬を伝って一気に下へと流れ落ちた
足首を縛るロープを解いては、濡れる目元を拭ってくれる
鮮明に写る彼の顔に安堵するが、口はまだ重く思う様に動いてくれなかった
「大丈夫、大丈夫」と私を落ち着かせようとしているのか、抱きしめて来る
「…っ、…さん……」
「ちさちゃん!怪我はない!?もう心配しなくても大丈夫」
「ん…ジャンさん、は?…」
「…、ジャンは別の所にいるよ」
良かった…ジャンさんはなんとも無かったんだ
それを聞いた安心からか、私は微笑んでしまう
あんなにも怖い思いをしていたって言うのに、臼田さんに抱きしめてもらっているからだろうか、拍子抜けしてしまう
そんな私に「ちさちゃん、血が…」と裾についた微量の血液に反応した
それはあの男につけられたものじゃない
怪我してません、そう言えたら良かったのだけれどまだ動かない
代わりに顔を横に振って否定した
「ごめん…ごめんね」と謝ってくる臼田さん
彼が悪いわけじゃないのに、そんなに辛そうな顔をしないで下さい
見てるこっちの方が辛くなる
「臼田さっ…だい、じょうぶ?…」
「怖い思いさせた…本当に、ごめん…」
「臼田さんの、せいじゃっ…ない」
「やっぱり止めるべきだった」
パーカーを脱いで私にかけてくれる
若干冷え始めた身体を温める様に包み込んでいると、前方から走るジャンさんが見えた
いつも以上に眉を潜めて、荒くなった息で呼吸をしているのが遠くからでも分かった
私を見てはゆっくりと確実に歩み寄って来た
私に近づこうとしているのか視線を外すことなく歩き進めると、臼田さんが膝裏に腕を回し抱え上げた
ジャンさんから離す様にすれ違う
「ジャンは、これを望んでたの?」
「…、」
そう言ってジャンさんを1人置き去りにして建物から出る
臼田さんは少し怒っている様にも感じる
徐々に動く様になった手で、彼の服を掴むと「家に帰ろう」と言ってくる
臼田さんには言ってなかったっけ?
私は1週間だけ住むことを許されていて、今日が7日目だ
私の明日に家はないと言うこと
最近忙しずぎて、その後のことを考えていなかった
でも、あいつに見つかったんだし、居場所を変えた方が先決かもしれない
なら、今日あの家に帰るのは好ましくないのでは?
どこにも当てなんてないけど………
また住み込みの仕事を探さないといけない
そんな都合よく見つけることができるのか…今回も
「臼田さん…わた、し」
「大丈夫、あの男はもう居ない。」
そうじゃない
ちゃんと言いたいのに言えない
早く、ちゃんと動くようになってよこの役立たづの口
もう、臼田さんと会えるのは今日が最後になるかもしれない
ちゃんとお別れ、言えるかな?
やはり殺されるんだ…と思っていると、聴き慣れた声が聞こえた
その主は走っていたのか、呼吸が乱れている
そっと祭壇から私を降し、優しく抱き寄せて来る
その振動に溜まった涙は、頬を伝って一気に下へと流れ落ちた
足首を縛るロープを解いては、濡れる目元を拭ってくれる
鮮明に写る彼の顔に安堵するが、口はまだ重く思う様に動いてくれなかった
「大丈夫、大丈夫」と私を落ち着かせようとしているのか、抱きしめて来る
「…っ、…さん……」
「ちさちゃん!怪我はない!?もう心配しなくても大丈夫」
「ん…ジャンさん、は?…」
「…、ジャンは別の所にいるよ」
良かった…ジャンさんはなんとも無かったんだ
それを聞いた安心からか、私は微笑んでしまう
あんなにも怖い思いをしていたって言うのに、臼田さんに抱きしめてもらっているからだろうか、拍子抜けしてしまう
そんな私に「ちさちゃん、血が…」と裾についた微量の血液に反応した
それはあの男につけられたものじゃない
怪我してません、そう言えたら良かったのだけれどまだ動かない
代わりに顔を横に振って否定した
「ごめん…ごめんね」と謝ってくる臼田さん
彼が悪いわけじゃないのに、そんなに辛そうな顔をしないで下さい
見てるこっちの方が辛くなる
「臼田さっ…だい、じょうぶ?…」
「怖い思いさせた…本当に、ごめん…」
「臼田さんの、せいじゃっ…ない」
「やっぱり止めるべきだった」
パーカーを脱いで私にかけてくれる
若干冷え始めた身体を温める様に包み込んでいると、前方から走るジャンさんが見えた
いつも以上に眉を潜めて、荒くなった息で呼吸をしているのが遠くからでも分かった
私を見てはゆっくりと確実に歩み寄って来た
私に近づこうとしているのか視線を外すことなく歩き進めると、臼田さんが膝裏に腕を回し抱え上げた
ジャンさんから離す様にすれ違う
「ジャンは、これを望んでたの?」
「…、」
そう言ってジャンさんを1人置き去りにして建物から出る
臼田さんは少し怒っている様にも感じる
徐々に動く様になった手で、彼の服を掴むと「家に帰ろう」と言ってくる
臼田さんには言ってなかったっけ?
私は1週間だけ住むことを許されていて、今日が7日目だ
私の明日に家はないと言うこと
最近忙しずぎて、その後のことを考えていなかった
でも、あいつに見つかったんだし、居場所を変えた方が先決かもしれない
なら、今日あの家に帰るのは好ましくないのでは?
どこにも当てなんてないけど………
また住み込みの仕事を探さないといけない
そんな都合よく見つけることができるのか…今回も
「臼田さん…わた、し」
「大丈夫、あの男はもう居ない。」
そうじゃない
ちゃんと言いたいのに言えない
早く、ちゃんと動くようになってよこの役立たづの口
もう、臼田さんと会えるのは今日が最後になるかもしれない
ちゃんとお別れ、言えるかな?
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