逍遙の殺人鬼

こあら

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目の前が真っ暗だ
それは自分が力強く目を瞑っているからで、それを開かせることは今はできそうに無い
自分の意思とは反して不定期にやってくる肩の呼吸は、収まってくれない

痛みは消えず、ずっと張り付いていている
どうすれば緩和するのだろうか?
こういう時対処法なんてものは、私の脳内図書には入っていなかった

声を抑えて泣いているだけ、偉いと思ってほしい
泣き喚いて、暴れていないだけまだ自重しているんだから

「悪い…泣かせたかったわけじゃ…」

「っひ、…っジャ、ンさんっ…」

「…クソっ…。大丈夫だ、落ち着け」

"落ち着け"って、よくそんなこと言えるね…
誰のせいで泣いてると思ってるんだ
なのにギュッと抱きしめてくるジャンさんに、何故か安心を感じるのはどうしてだろう?









呼吸が安定したリズムに戻りかけている
まだ下腹部はピリピリとした痛みがまとわりついていて、大丈夫と言い難い状態だ

熱くなった目頭をジャンさんの冷たい指が冷ましてくれる
だけど、やはり持った熱は消えることはなかった

「起きれるか?」

「起きれ、ます…」

ゆっくりと背中を支えながら身体をお越し、乱れた髪を整えるかのように、サイドの髪の毛を耳にかける
「大丈夫か?」と心配してくれているんだろうけど、全く大丈夫じゃない

ボートの一部が血で染まり、それを目視すると更に気分が悪くなる
眉は潜み、座っていることすら辛く感じる
身体は反動に弱く、脆いものだった

オールでボートを動かしているジャンさんは、こちらを気にしてるのかゆっくりと漕いでいる
揺れの振動は私の下部を徐々に刺激して来て、目を瞑ることしかできない

「気を付けろ」

「はい…」

「ここで待ってろ、飲みもん買ってくる。」

「…はい」

硬いベンチに私を残して行ってしまうジャンさんの背中を眺めた
痛みが消えきれないそれに、自分の手でさすることしか出来なくって前屈みになる
深く息を吸って、深く吐く
呼吸を安定させることで少しでも落ち着かせようと思うけど、気休めにしかならない

(だから嫌だ…)
痛い想いしかできない、この行為
何度やっても痛みしか生まれない
こんなのが気持ちいいなんて嘘だ

世の中の女性は狂ってる
それか、私だけなのか………

「2度としたくない…。」

そんな言葉を吐き出してみても、誰にも届かない
抗えなかった自分が嫌だ
ジャンさんもジャンさんだ、よく私なんかと…

座っているはずなのに脚は震え、気怠い
あいつにやられたことが、嫌なのにフラッシュバックしてくるし、思い出したくも無いのにやけに鮮明だから吐き気がする
チクチクと存在を主張する髭も、少し荒れた手も、憎悪しか生み出さないあの顔も忘却できたらどんなに幸せか

そんなことに囚われている私を誰も救ってはくれない
何もできずにただ助けを待つだけの弱いお姫様なんてなりたくない
自らの呪いを振り切って、騎士ナイトとなって闘うしかない
でも、それになるには弱すぎて話にならない

(?ジャンさん戻って来た…?)

ゆっくりと確実に私の方にやってくる足音は、ジャンさんだろう
飲み物、何買って来てくれたんだろう?
悪いけど、今は立ち上がることができないから、座ったままなのは許して
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