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そよ風に遊ばれて、降ろされた髪の毛が靡く
露出したふくらはぎを擽る春風は心地良く、花の香りが私に着いてくる
蜜の甘い匂いに、思わず目を瞑る
心が穏やかになり、呼吸が通るように気持ちが軽くなる
夕日が花々を鮮やかに照らしていて、思わずしゃがみ込んだ
お祭り場から少し離れたところだと言うのに、人気はなく静まり返っていて、風のせせらぎだけが響いていた
ジャンさんに連れられるがままに動いていたら、こんな素敵な場所に来るなんて
「すごく素敵…」
「そうだな」
珍しく共感してくれたジャンさんは、隣にしゃがみ込んで色とりどりの花を眺めた
あまり良いことではないが、生き生きとした花々を摘んだ
それを束にして小さな花束を作った
不格好だったけど、こんな風に女の子らしいことをしたのはいつぶりだっただろうか?
そんなことに頬が緩んで笑ってしまう
何が面白い訳ではないが、反射的なものだった
「っ!?…なんで、すか?」
「薔薇の代わり」
そう言ってデイジーを1輪私に向ける
(さっきのこと、気にしてたの…?)
その行動に目を丸くしてしまう
そんな私に「あんたに似てる」と言って、髪にそっと挿した
真っ白なデイジーは赤みのある髪の毛にも、私自身にも全然似ていない
どこが"似てる"と言うんだろう
本心じゃ無くても、意地悪な言葉だったとしても嬉しく思ってしまう
そんな私の頬はきっと紅くなっているだろうけど、夕日によってそれは緩和されていると思いたい
でも見られたくなくって、摘んだ花束で顔を隠してありがとうございますと、消えそうな声で言った
「行くぞ」
「はい」
立ち上がる私に、クマのぬいぐるみを持っていない方の手を差し出してくる
それに応えるように手を取り、ジャンさんは指を絡めてきた
その手を引いて歩き出した
「あ、すいません。ちょっとお手洗い行ってきますね。これ持っててください」
「ああ」
ちょうど良く公衆トイレを見つけた私は、ジャンさんに花束を預けてトイレに向かった
中には先客がいたものの、トイレは空いていて入った
「やっば、メイク崩れてる。」
「リップ塗らなきゃ。盛れなーい。」
「女はメイクしないと死ぬよねー。」
「ホントそれな。」
「てか化粧しない女とかマジありえなくね?」
「女捨ててね?」
(メイク…してない)
鏡を占領していた女性2人組はそんなことを言って盛り上がっている
私はそれをトイレの中で聞いていた
確かに私に近い年齢の子は、もうお化粧なんて当たり前のようにしてる子が多い
話し声が遠ざかり、私は恐る恐る扉を開いて確認した
2人組はもう居ない
流し台で手を洗って、鏡で自分を見た
「お化粧か…」
ワンピースのポケットに手を突っ込んで、ジャンさんに貰ったリップを取り出してみる
パーティーの時につけたリップは、透さんが勧めてくれた物
このリップを塗れば、芋女を脱却できるかな?
でも、私なんかが着けて良いのかな…
(あいつリップ着けてやがる、とか思われないかな…)
震える手でそれを塗ってみた
薄く塗っても、地の唇の色とは違っていて見慣れない
妙に鼓動が早くなる
悪いことなんて一切していないはずなのに、私がするのは間違ってるとでも言いたいのか、私の心臓はドクドクとうるさい
「お待たせしました、行きましょう。」
「…あ、あぁ」
ジャンさんの顔なんて見れなくて、半ば強引に進んだ
だって見てしまえば、こちらの顔だって見える
(そんなの恥ずかしすぎる!!…)
露出したふくらはぎを擽る春風は心地良く、花の香りが私に着いてくる
蜜の甘い匂いに、思わず目を瞑る
心が穏やかになり、呼吸が通るように気持ちが軽くなる
夕日が花々を鮮やかに照らしていて、思わずしゃがみ込んだ
お祭り場から少し離れたところだと言うのに、人気はなく静まり返っていて、風のせせらぎだけが響いていた
ジャンさんに連れられるがままに動いていたら、こんな素敵な場所に来るなんて
「すごく素敵…」
「そうだな」
珍しく共感してくれたジャンさんは、隣にしゃがみ込んで色とりどりの花を眺めた
あまり良いことではないが、生き生きとした花々を摘んだ
それを束にして小さな花束を作った
不格好だったけど、こんな風に女の子らしいことをしたのはいつぶりだっただろうか?
そんなことに頬が緩んで笑ってしまう
何が面白い訳ではないが、反射的なものだった
「っ!?…なんで、すか?」
「薔薇の代わり」
そう言ってデイジーを1輪私に向ける
(さっきのこと、気にしてたの…?)
その行動に目を丸くしてしまう
そんな私に「あんたに似てる」と言って、髪にそっと挿した
真っ白なデイジーは赤みのある髪の毛にも、私自身にも全然似ていない
どこが"似てる"と言うんだろう
本心じゃ無くても、意地悪な言葉だったとしても嬉しく思ってしまう
そんな私の頬はきっと紅くなっているだろうけど、夕日によってそれは緩和されていると思いたい
でも見られたくなくって、摘んだ花束で顔を隠してありがとうございますと、消えそうな声で言った
「行くぞ」
「はい」
立ち上がる私に、クマのぬいぐるみを持っていない方の手を差し出してくる
それに応えるように手を取り、ジャンさんは指を絡めてきた
その手を引いて歩き出した
「あ、すいません。ちょっとお手洗い行ってきますね。これ持っててください」
「ああ」
ちょうど良く公衆トイレを見つけた私は、ジャンさんに花束を預けてトイレに向かった
中には先客がいたものの、トイレは空いていて入った
「やっば、メイク崩れてる。」
「リップ塗らなきゃ。盛れなーい。」
「女はメイクしないと死ぬよねー。」
「ホントそれな。」
「てか化粧しない女とかマジありえなくね?」
「女捨ててね?」
(メイク…してない)
鏡を占領していた女性2人組はそんなことを言って盛り上がっている
私はそれをトイレの中で聞いていた
確かに私に近い年齢の子は、もうお化粧なんて当たり前のようにしてる子が多い
話し声が遠ざかり、私は恐る恐る扉を開いて確認した
2人組はもう居ない
流し台で手を洗って、鏡で自分を見た
「お化粧か…」
ワンピースのポケットに手を突っ込んで、ジャンさんに貰ったリップを取り出してみる
パーティーの時につけたリップは、透さんが勧めてくれた物
このリップを塗れば、芋女を脱却できるかな?
でも、私なんかが着けて良いのかな…
(あいつリップ着けてやがる、とか思われないかな…)
震える手でそれを塗ってみた
薄く塗っても、地の唇の色とは違っていて見慣れない
妙に鼓動が早くなる
悪いことなんて一切していないはずなのに、私がするのは間違ってるとでも言いたいのか、私の心臓はドクドクとうるさい
「お待たせしました、行きましょう。」
「…あ、あぁ」
ジャンさんの顔なんて見れなくて、半ば強引に進んだ
だって見てしまえば、こちらの顔だって見える
(そんなの恥ずかしすぎる!!…)
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