逍遙の殺人鬼

こあら

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歩き進んでいると、出店がいっぱい連なっていた
服やお菓子・雑貨と色とりどりで、私ははしゃいでしまう

今までお祭りに参加したことなんてなくって、いつも歴史書の写真なんかでそれを見ていた
18になってようやくそれを体験するとは思ってなかったものだから、せっかくの機会、堪能する

「これは何ですか?」

「射的」

「射的?どうやるんですか?」

「はぁ、おばさん射的1回分。」

面倒くさそうにしながらも、実践してくれるジャンさん
銃にコルク弾を詰めて、少し離れた向かいに構える
奥には景品と思われるものが並んでいて、どうやらそれを狙っている様だ

引き金を引くと弾け飛ぶ音が耳に響く
それに少し驚いた









「兄ちゃんすごいね。一発で2個取るなんて、ウチは赤字じゃよ。」

「普通は取れないんですか?」

「まぁ、何回か当てて落とすものだからな。あんたもやってみるかい?あと2回残ってるよ。」

「いいんですか?是非!」

(えっと…景品を狙って…)

ジャンさんの様に構えて、見様見真似で射ってみるが外れてしまった
意外と難しい
「あと一回」とおばあちゃんに言われ、今度こそと意気込む
狙いを定めて、コルク弾を当てる

「嬢ちゃん下手くそじゃのぉ。彼氏さんに景品分けてもらうんじゃな。」

「取れませんでした…」

「下手くそ」

そう言って歩き出してしまう
っえ、景品くれないの?
おこがましいがそう思ってしまう
彼もその考えが分かったのか、私を見て言った

「やらねぇぞ」

「クマのぬいぐるみなんてジャンさんいらないでしょ。私にくださいよ」

「やだ」

「…、意地悪」

「下手くそ」

それはさっきも聞きました
まぁ、取れなかった私が悪いんだし、仕方ないか…

あれ?2個取ったんじゃ?
そう思ってジャンさんを見るが、が見当たらない
あれ?と不思議に思うが、それが何か分かったとて私には関係無かった

「んあー、うぜぇ…」

「どうしたんですか?いきなり」

「”もっと恋人らしくしろ”って」

そう言いながら、耳元を示してくる
確か、臼田うすたさんや瑞貴さんに繋がってるんだっけ?イヤホンで

恋人らしくと言われてもねぇ…恋人じゃないし
それに、恋人って何するのかも分からない
私の18ページの物語は薄っぺらで、退屈で読み応えのないものだ
その中に恋人のページは無かった
いや、ある訳ない
そもそも誰も関心のない物語だから、内容なんてものはめちゃくちゃだ

「はぁー、しゃーねぇ」

「っえ!?な、何ですか?」

「じっとしてろ。動くな」

その言葉に従うも、何故だか身体が強張る
後ろで何かをしているジャンさんは、私の三つ編みを解いた
そのせいで、うねる髪は広がる感覚か伝わってくる

それを整える様にサイドの髪を持った時、彼の冷たい指が耳に触れた
それにドキッと胸が高鳴った気がして、動揺してしまう

パチッと鉄の音を響かせると、終わったのかジャンさんは移動した
それを確かめる様に、手で触れて確認した
感触はプラスチックの様な硬いもので、おそらくリボンの形をしている
もしかして、さっき射的で取ったもう一つの景品って…

「バレッタ…?」

「、やる」

「っえ…あ、ありがとうございます」

クマのぬいぐるみの代わりなのか、リボンのバレッタをくれた
それが妙にこっ恥ずかしくて、頬が熱くなる

ジャンさんは私から視線を離すと、何故か電信柱の方に中指を立てた
あなたは何をしてるんですか?
誰もいないのに…いてもしちゃ駄目だけど
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