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ジャンさんの口から出た”おとり”と言う単語が、どうも解せない
瑞貴さんが私をおとりにさせようとする理由も不確かだ
私じゃない誰かにおとりにさせれば良いと、反論するジャンさんに瑞貴さんは全く折れない
「どうして彼女はダメなの?なんか不都合があるのか、それともその気になってるのか?」
「わざわざちさちゃんを危険な目に合わせるなんて、僕は反対だ」
「亀の意見は求めてない。オレはジャンに聞いてるんだ、さあどうする?彼女が大切なら情報を諦めるか?」
静かに私に視線を移すジャンさんと目が合った
無言で見続けるジャンさんに、「ジャン」と臼田さんが答えを求めた
私から視線を離すと、「分かった」と返事をするジャンさん
それに猛反対する臼田さんを無視して、瑞貴さんは嬉しそうだった
私は何がなんだか分からず、ジャンさんをただ見ていることしかできなかった
「ミズキ、ウレシイ?」
「ああ、この上なくね。」
彼女の拙い日本語に笑顔で答える瑞貴さんは少し恐ろしかった
アイドルとは思えないその交渉
この人は、ただのアイドルではないと告げていた
あのジャンさんを恐れない瑞貴さんは、一体何者なのか?
「これ」と臼田さんにUSBを手渡すと、情報は依頼が成功してからとだけ言ってその場から離れて、行ってしまう
その姿を見て「帰るぞ」とジャンさんに手を引かれる
「え、もう帰るんですか?」
「もう用はない」
「でも…」(途中で帰って良いのかな?…)
「残ってたいなら構わない、置いて帰るから」
そんな風に言われたら一緒に帰るしかないじゃん
有無を言わせないジャンさんは何を思ったのか、お姫様抱っこをしはじめた
軽々と抱える彼は、仮面のせいなのか表情を全く変えずに出口に向かう
「黙ってろ」としか言わないジャンさんに、とりあえず従ってみる
でもやはり羞恥心がのしかかり、顔を隠すように彼の身体に埋もれた
「レイモンドだ。連れの体調が芳しくない、帰らせてもらう。」
「”レイモンド”…、取り調べはすんでいるな。どうぞ、ご帰宅ください。」
そう言うとすんなり通してくれた
私の体調は絶好調、元気なのに…
帰りたいからってこの人は……
そのまま車へと向かう間ずっとジャンさんに抱えられている
それがどれほど恥ずかしいか…
いっそ本当に体調が悪かったら良かったのに、そうすればこれは介抱のためと思えたのに
残念ながら真実とは違うため、どうにもできない
車について抱える手を緩めると、ゆっくり地に足を着かせる
輝き続ける会場は、少し離れた駐車場まで明るく照らしている
シートベルトを締めて、仮面を外すと無駄に開放感があった
(そう言えば、パフェ…食べれなかったな)
今日初めって会ったご令嬢が、今日亡くなった
そんな非日常がまだ受け入れられない
誰が殺したのか、私はどっちと踊ったのか…
真相はまだ分かっていない
それに、私のことも…自分のことなのに知らなかった……
窓を見れば、先程の明るさは消えざわめきも無くなった景色が取り残されている
それは空っぽで、まるで私のようだった
瑞貴さんが私をおとりにさせようとする理由も不確かだ
私じゃない誰かにおとりにさせれば良いと、反論するジャンさんに瑞貴さんは全く折れない
「どうして彼女はダメなの?なんか不都合があるのか、それともその気になってるのか?」
「わざわざちさちゃんを危険な目に合わせるなんて、僕は反対だ」
「亀の意見は求めてない。オレはジャンに聞いてるんだ、さあどうする?彼女が大切なら情報を諦めるか?」
静かに私に視線を移すジャンさんと目が合った
無言で見続けるジャンさんに、「ジャン」と臼田さんが答えを求めた
私から視線を離すと、「分かった」と返事をするジャンさん
それに猛反対する臼田さんを無視して、瑞貴さんは嬉しそうだった
私は何がなんだか分からず、ジャンさんをただ見ていることしかできなかった
「ミズキ、ウレシイ?」
「ああ、この上なくね。」
彼女の拙い日本語に笑顔で答える瑞貴さんは少し恐ろしかった
アイドルとは思えないその交渉
この人は、ただのアイドルではないと告げていた
あのジャンさんを恐れない瑞貴さんは、一体何者なのか?
「これ」と臼田さんにUSBを手渡すと、情報は依頼が成功してからとだけ言ってその場から離れて、行ってしまう
その姿を見て「帰るぞ」とジャンさんに手を引かれる
「え、もう帰るんですか?」
「もう用はない」
「でも…」(途中で帰って良いのかな?…)
「残ってたいなら構わない、置いて帰るから」
そんな風に言われたら一緒に帰るしかないじゃん
有無を言わせないジャンさんは何を思ったのか、お姫様抱っこをしはじめた
軽々と抱える彼は、仮面のせいなのか表情を全く変えずに出口に向かう
「黙ってろ」としか言わないジャンさんに、とりあえず従ってみる
でもやはり羞恥心がのしかかり、顔を隠すように彼の身体に埋もれた
「レイモンドだ。連れの体調が芳しくない、帰らせてもらう。」
「”レイモンド”…、取り調べはすんでいるな。どうぞ、ご帰宅ください。」
そう言うとすんなり通してくれた
私の体調は絶好調、元気なのに…
帰りたいからってこの人は……
そのまま車へと向かう間ずっとジャンさんに抱えられている
それがどれほど恥ずかしいか…
いっそ本当に体調が悪かったら良かったのに、そうすればこれは介抱のためと思えたのに
残念ながら真実とは違うため、どうにもできない
車について抱える手を緩めると、ゆっくり地に足を着かせる
輝き続ける会場は、少し離れた駐車場まで明るく照らしている
シートベルトを締めて、仮面を外すと無駄に開放感があった
(そう言えば、パフェ…食べれなかったな)
今日初めって会ったご令嬢が、今日亡くなった
そんな非日常がまだ受け入れられない
誰が殺したのか、私はどっちと踊ったのか…
真相はまだ分かっていない
それに、私のことも…自分のことなのに知らなかった……
窓を見れば、先程の明るさは消えざわめきも無くなった景色が取り残されている
それは空っぽで、まるで私のようだった
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