逍遙の殺人鬼

こあら

文字の大きさ
上 下
97 / 333

97

しおりを挟む
人混みの山々をかき分けて現れたのは、私のボロボロにされたドレスの代わりを貸してくれた人だ、ピエロの仮面を着けた男性だ
この冷めきった空気を変えた彼は、真っ直ぐ私の方に歩いてくると、見えにくい仮面の奥底からアイコンタクトしてくる

私も覚えているし
相手も覚えていた

彼が警備兵にその旨を伝えると、先程の勢いは無くなり焦っているようにも見える
横から「でもっ、」と殺されたご令嬢の取り巻きが、口をはさもうとしてくるが、彼がそうさせない

「失礼ながらレディ、貴方は私が嘘を付いていると言いたいのですか?」

「っそ、そんな!滅相もない…」

彼のその言葉に取り巻きはもちろん、警備兵も迂闊に動けないといった状況になってしまう
そんな風にさせてしまう彼は、一体誰なのか……









「彼女は私と居たんだ。他を調べてくれるかな?」

「っも、もちろんです!!お手間をおかけしました!」

そそくさと警備兵さん達はその場から立ち去る
それを確認すると、彼は私の方に身体を向けて「また会ったね」と言い、私の肩を掴むと自分の方に引き寄せる
そんな彼に、恥ずかしながらも助けてもらったことに感謝し、ありがとうございました。とお礼を言う

仮面からでも分かる私の赤くなった顔に「お嬢さん律儀だね」と、どこか意地悪な感じで言ってくる
助けてもらったんだ、あのままだったら本当に逮捕されてたかもしれない……
だけれど…一体いつまで肩を掴んだままなのか……

そんな何もできない私に助太刀してくれたのは、臼田うすたさんで「あなたは?」と私を彼から引き離す

「先程言った通り、彼女にドレスを貸したただの通りすがりですよ。」

臼田うすたさん、本当です。この人は助けてくれたんです」

「ちさちゃんが、そう言うなら…」

若干敵意を見せている臼田うすたさんに、ドードーと落ち着くように言い聞かせる
相変わらず優しく手に触れてくる臼田うすたは、私を心配してくれている
こんな人が人を殺すなんて、あるわけない

「それじゃ、私は失礼するよ。またね、お嬢さん」

「……ッ!?」

彼はそう言うと、余った私の手を取って甲に軽く口づけをしてくる
まさかの出来事に私は固まり、隣に居る臼田うすたさんは若干の驚きを見せている
掴む手を離しては「じゃあね」と人混みの中へと消えてしまう

彼の姿が消えたほうを見続ける私の前に移動した臼田うすたさんは、胸ポケットからハンカチを取り出すと、ゴシゴシと手の甲を拭き始める

その手の衝撃により我に返った私は、無言で拭き続ける臼田うすたさんに、なにしてるんですか?と馬鹿みたいな質問をした
そんなアホな質問に、重たそうな口を開いては「虫がついた…」とボソッと言い放つ
そんな彼は…少し、いつもと違ってみてた

臼田うすた……さん…?」

「ちさちゃん可愛いから、変な男が寄ってくるだ」

「…あの人は、親切にしてくれた…だけで……」

まるでジャンさんみたいな強い雰囲気を出す臼田うすたさん
ゴシゴシと、汚れを拭き取るかのように強く動かすそれは、痛かった……
そんな彼が何だか怖く感じ、拭いている最中だったが手を離させ、一歩遠のく

「……お手洗い…行ってきます…」

それは、逃げだった
だって、状況が、臼田うすたさんが分からなくなったから
理解するためにその場から離れたかった
いや、彼から……離れたかった
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

【R18】短編集【更新中】調教無理矢理監禁etc...【女性向け】

笹野葉
恋愛
1.負債を抱えたメイドはご主人様と契約を (借金処女メイド×ご主人様×無理矢理) 2.異世界転移したら、身体の隅々までチェックされちゃいました (異世界転移×王子×縛り×媚薬×無理矢理)

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

処理中です...