逍遙の殺人鬼

こあら

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揺れ動く車内で、臼田うすたさんは「明日なんだけど…」と言った

「実は仮面舞踏会があってね、ちさちゃんに出てもらいたいんだ。」

「舞踏会だなんて、私踊れませんよ…。それにそんな所に行けるほどの存在じゃ……」

「そんなことないよ。それに舞踏会だなんて名ばかりで、ほとんど食べて飲んでるだけだし」

でも……、とどもる私に彼は続けて説明してくる
今日のは明日の舞踏会のためのもので、このネイルもそうだと
ドレスなんかはもう臼田うすたさんが用意してくれたらしく、準備は整っているとのこと
果たして、私は行く必要があるのでしょうか?
その旨を彼に聞いた









「えっとね……難しいんだけど。会わなきゃ行けない人がいるんだけど、その人が会いたいなら”舞踏会に来い”って。を連れて」

「どうしてですか?なんで相手は私のこと知ってるんです?」

「えっと………それも難しいんだけどー。その人は会う人のことを徹底的に調べるんだ。もちろん周りに居る人、つまり君のことも」

え……と硬直する私に、焦る感じで「相手はジャンの困った反応を見たいだけだから」となんのフォローになっていない言葉をくれた
その人絶対やばい人でしょ……
あのジャンさんをあえて困らせる人がいるなんて………

その人多分、動物園のゴリラとかをガラス越しに威嚇して、向こうが怒ってる姿を楽しむタイプだ
きっとそうだ………コワイ……

走行していると、時間が過ぎていたらしく家に到着した
家に入るとコーラを持ったジャンさんが居て「頼もしいかめのお出ましだ」と、まだ根に持っている
子どもか………

「”頼もしい”?なんのこと?」

「いえ!なんでもありません。ほっときましょう」

そう言って強引に強制終了させる
その説明をするとなると、春さに話したジャンさんと臼田うすたさんの会話も言わなくてはいけないから
それは流石にできないことだ

洗濯と夕食作りしないと、と私は手を洗って家事を始めた
そんな私を見てくる臼田うすたさんは、何が嬉しいのかニコニコしている
洗い終えた洗濯物を干している姿さえ、縁側から微笑んで見ている

「どうしたんですか」

「これがジャケットバージョンの彼シャツだなーって」

「”これ”?」

うんと言いながら私の方を指さし、彼のジャケットを示した
それはずっと着っぱなしだった臼田うすたさんのジャケットだった
存在すら忘れ、ぶかぶかなものの暖かく自分の物のように着ていた

「早く言ってくださいよ!」

「良いよ、着たままで。ジャケットもちさちゃんに着てもらった方が嬉しいよ」

いや、それはない
こんな芋女に着られるよりスタイルのいい臼田うすたさんが着こなした方が、ジャケットも本望だろう
「萌え袖みたい」とか、絶対に似合っていないだろうワードを出してくる

庭から台所に移動すると彼もついてくる
何の用なのか?逆に言ってくれた方がこのモヤモヤを消し去れるのに…

「なんでしょうか?……」

「僕、仕事頑張った。」

(何したか知らないけど、)「はい……」

「ちさちゃんをチャージしたいです。」

そう言うと、両手を広げてくる
え?どゆこと?
「おいで、おいで」と赤ちゃんでも呼ぶように言ってく

んーーぅー……、と行こうか迷っていると、時間切れと言うかのように彼から抱きしめてくる
ふわっと巻きつく物は何度目かの彼の優しい腕で、肩には顎を置いてくる
萌え袖状態の手元を前にしていたため、自分のドクドクという心臓の音をよく感じ取ることができる

「ちさちゃん」と呼ぶもんだから、身長差のある臼田うすたさんの顔を見るべく、上を見上げる
顔を傾けては近づけ、そっと触れてくる
その優しい唇から、ちゅっと魅惑的なリップ音を鳴らせては潔く離れて行く
赤くなった顔を見ては「可愛い」だなんて言って、そっと髪の毛を耳にかけた

「っ、不意打ちは……ずるいです…」

「我慢できなかった」

だか仕方ないでしょ。とでも言いたいのか、それに反論することができなかった
ッムとむくれてみれば、追加でちゅっと頬にキスをしてくる
もう!と怒ってみてもはははと笑っていて、全然悪びれていない
困ったもんだ、本当に…困った…………
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