逍遙の殺人鬼

こあら

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ベッドに浅く沈む身体の背部には柔らかい掛け布団の感覚
その周りをさらに沈めるように臼田うすたさんの手が私の顔のすぐ横にあった
下から見慣れた彼の顔は、部屋の証明を私から隠すみたいに逆光により違って見えている

「…ちさちゃん…」

「っ…、いっ、1回て…言ったじゃ無いですか……」

「唇離して無いから、1回だよ」

確かに何度も向きを変えては口付けしてきたが、その唇は離れてはいなかった
だけど、それはずるいのでは?と思い、顔を背けそれはずるいですと言ってやる
少し怒っているのに「うん、でも許してね」と優しく言ってくるから、またずる

「っ!?」

「ここで止めたんだから、怒らないで」

そう言いながら頬にちゅっとキスをした
それに過剰反応し、んなっ!と頬を抑える









頬を抑えながら起き上がる
ッムっとしていると気分でもいいのか私の髪の毛で遊び始める臼田うすたさん
「ちさちゃん」そう言ってまた抱きしめてくる

「何かあったら、言ってね」

「…はい。……、そういえばお二人の仕事ってなんですか?」

医学書を読んでいたジャンさんは医療関係の仕事、臼田うすたさんは……コンピューター関係の仕事かな?
この家に来て4日
まだ知らないことの方が多い

「うーーんと、主にコンピューターアシストってところかな?」

「アシスト?それじゃジャンさんは?」

「ジャンは、…便利屋?かな?」

”便利屋”?弁理士や弁護士でもなく便……?
なんとも納得できない回答に、本当ですか?と聞き返す
「大まかに言ったらね」とあやふやにされ、寝よーと強制的に話を終了させる

暗くなった部屋に川の字でベッドに横になる
それも可笑しな話だが仕方ない
この前よりも距離は近かったが彼に背を向けているのでどれくらい離れているのかは分からない

「明日、朝ごはん食べたら僕仕事で家を出るからね。」

「わかりました。間に合うように朝食、作りますね」

そんな私に「ありがと」と言うと少しベッドが揺れ、背を向ける私の肩に掛け布団をかけてくれる
パサッと軽い音を鳴る掛け布団は暖かく、心の芯までもが温まりそう
その暖かさに眠気を誘われ、まぶたが重くなる

だんだん眠りへと導くそれに逆らえずに、まぶたを閉じる
スー、スーと寝息をたてて熟睡する

そんな様子を優しく見守る臼田うすたさんは、乱れた髪を整えるように耳にかける
それに気づきことはなく夢の中へと歩いて行く

見慣れた景色、そう施設だ
枯れ葉の季節
すこいし肌寒い中、少年児と遊ぶ私の後ろから見慣れた女の子、花穂カホと呼ばれる子が私に言付けを渡してくれる
中身は場所だけが書かれていて、その子にありがとうと伝えその場所に向かう

ついた場所は人通りの少ない場所で寒さが倍増している所だった
キョロキョロとも周りを見渡し誰もいないことを確認し、その場を立ち去ろうとする
それを邪魔するように後ろに立っていた事務長により硬い土の上に押し倒される

鈍い音と肌に感じるチクチクと痛い髭の感触が私をゾッとさせる
荒々しく乱暴に扱われ、涙が滲むその行為に憎悪の感情が喉をつっかえて苦しませてくる

それが終わり、思わず走り出すと見慣れない扉を開け中に入る
そこは何故かジャンさんの家でっほ、と安堵あんどした

廊下を歩く臼田うすたさんに「ジャンならまだお風呂だよ」とすれ違い様言われる
時計を見ると9時7分を示していた
夜か……ともう一度時計を見ると、時計の針は倍速再生したみたいにグルグルと秒針が動き出し、15分…25分……40分…と時間が早まる

それに何故か焦りお風呂場へと向かった
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