逍遙の殺人鬼

こあら

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試着室のドアを開けて渡された服を2人に見せる
少しこっ恥ずかしいさが抜けないまま試着室を出る

2人は見たまま何も発しない
やはり、似合って……いないのだろうか…
自分的には、そこそこ似合っていると思ってたんだけど…


「ちさちゃん…すっっごい、可愛いよ!」

「ふんっ」

臼田うすたさんは笑顔で私に駆け寄ってくる
この時ばかりは、可愛いのかもと図々しいながらも思ってしまった

「お客様素晴らしいです。とてもセンスがいいです!」

「いえ、適当に選んだだけです」


このワンピース、ジャンさんが選んだものなのだったの!?
確かに、店員さんが選んでくれたものは新作の物ばかりで、私というよりお店側の方を考えているように感じた
けど、この服は…
私に合ったものを渡してくれたように思える









「これ着ていきます」

「っえ!?」

かしこまりましたっとテンポよい返事返ってくる
いくらか確認する

_____850000円+税…

(85万!!??)

ワンピース一着にそんな価値が!?
予想以上の高さに驚愕きょうがくする私を置いて、レジでお会計をする臼田うすたさん

こんなに高いのに素知らぬ顔でサラッと支払う姿を見て、脚が産まれたての子鹿のように震えた

こんな大金悩みもせずに使うなんて………やはりブルジョワお金持ちだわ………
呆気にとられている私の手を引きながら、次行くよと店を後にする

ひらりひらりと風に遊ばれるワンピースの裾が私の膝をくすぐる
それは、妙に気分を上げ今まで感じたことのないもので、何から開放された感覚がした
横に連なるお店のガラスに写る自分は、毎朝見ていたはずの自分とはどこか違って見えて少し面白い

こんな自分は……嫌いじゃないかも…

そんな風に自分を受け入れていると次の場所に着いたようだ
その場所また、ハイブランド
今日はブランド巡りでもしてるんでしょうか…?

中に入り靴の所に向う
「足のサイズは?」と聞かれ23です、と答えると店員に言って23cmの靴が目の前にズラッと並ぶ

私は夢でも見てるんでしょうか?
どこぞのお嬢様みたいなむず痒い感じに違和感を覚える中、並ぶ靴たちから「どれにする?」と聞いてくる臼田うすたさん

「っえ、この中から選ぶんですか?…」

「気に入るものがなければもっと持ってきてもらおうか?」

違う違う!そういう意味じゃない!!
高級ブランドから選ばなければならないのか?って意味なんですけど…

ピカピカ光るお高そうな靴にオロオロしてると、奥からオカマ口調の男性がやってくる

「あーらー、山本ちゃんじゃないのー。」

(や、山本…さん?誰?)

その山本さんとやらに向って小指を立てながら内股で小走りしてくるその人がジャンさんへと突進して行く

っえ、ジャンさんって苗字山本なの?
山本ジャン?

「もぉー、山本ちゃん全然会いに来てくれないから寂しかったわよ!」

「サーセン、忙しくって」

「もぉぉー、その素敵な顔に免じて許してあ・げ・る♪」


わぉ………
男性の投げキス、初めて見た……………………
ジャンさんはこの店の常連なのかな?

「今日はどんなようなのぉ?」とオカマさんはジャンさんにベッタリな様子で、その光景を座りながらパチパチと眺めている
一通り話をしたらしく、オカマさんは体をこちらに向けると私を上から下まで見てくる

「おこちゃまじゃないの!」と何とも失礼極まりない言葉を放たれ、ははは…と苦笑いで返す
と、隣にいた臼田うすたさんに気づくと一気に乙女の顔になる

「あらやだー、イケメンが増えちゃってぇー」

「はじめまして」

「もぉーー、大歓迎よぉー」

私は歓迎してくれないのね………
私を放ったらかしにして、今度は臼田うすたさんと盛り上がる
話を終えるとジャンさんの方に戻り「今晩どぉ?」と聞く

「今夜は難しいっすね、来週でもいっすか?」

「もぉーー、山本ちゃんにお願いされちゃ断れないじゃないのぉー。わかったわぁ!」

「あざっす」

そう言うと奥へと戻ってしまうオカマさん
今の時間何だったんだろう…

ポカンとしていると「この靴どお?」っとしゃがんだ臼田うすたさんが私の足に靴を履かせてくれる


「…っ、自分で!履けます!」

いーのいーの、と止めることなく動く手によって結局両足に履かせてもらってしまった
臼田うすたさんが選んだ靴はローヒールの足首に紐の金具がついた白色のサンダルのような靴だった
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