逍遙の殺人鬼

こあら

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ジャンさんと2人っきりになった私は近寄りがたい雰囲気を放つ彼に物怖じしていた

遅れたこと、まだ怒っているだろうか……

無言のまま時間だけが過ぎていき、何を思ったのか「はぁ…」とため息を吐くと歩き出した
特に何も言わずに行ってしまいそうで少し焦った

「っ!ジャンさん、…どこに…行くんですか?……」

「あんたに関係ねぇだろ」

突き放されるように放つその言葉は氷のように冷たかった
私を置いてどこかへ行ってしまう彼の背中をただただ見ることしかできなかった

私も行きます、なんて言ったらまた怒られそうで、その場に立っていることしかできなかった
1人車の前で佇む私は文字通り………"1人ぼっち"になった


臼田うすたさんかジャンさん、どちらか帰ってこないかな…と空を見ながら物思いにふけっていると、ジャリっと砂を踏む音が聞こえ誰かが近づいてくることに気がついた

買い物から帰ってきた臼田うすたさんだろうか?

それともどこかに行っていたジャンさんだろうか?

その答えはすぐに分かった









足音のする方に振り向く
そこには2人の男性が歩いていた
全く知らない人で視線を男性2人から外す

まだ帰ってこないか…
そう思い、自分の足の方へと視線を移す

しかし、足音はだんだん近づいてきて、何やら話し声が聞こえてくる
何かを相談するような感じの小声でひそひそ話していた

(何だかやだな…)

これと言うのはないが、何だか嫌な予感がしていた
直感…と言った感じ
それが、何だか居心地悪いと告げていた


2人は確実に私の方へと歩いてきていた
それに、ゴクリと唾を飲み込み、うるさい心を落ち着かせるように深呼吸をする

勘違い、勘違い、勘違い……………

だが、勘違いで終わらなかった
視界に入った2人の足は私を囲う様に止まった

「ねぇねぇお嬢ちゃん、1人?」

「こんな所で何してるの?」

ニヤニヤと下品に笑う2人に吐きそうになるが、グッと堪える

「…知り合いを、待ってるんです……………………」

「へぇー、それって女の子?」

「俺ら暇なんだけど、今から遊ばない?」

2人は距離をつめて来て、片方が車に座り始めた
なんて厚かましい人なのだろう

例え私の知らない人の車でも勝手に座るのは、人としてどうなのだろうか…
こういう人は好きじゃない
周りのことなんか考えずに、身勝手な行動ばかりする


「私、用事があるので…」

「いいじゃーん」

「そそっ、すぐ済むよ」

「っ!?」


急に手首を掴まれた体が強ばる

何するんだこの人…

男の手から離れたくって抵抗するも、私の非力な努力は男の力に勝つことはできなかった
離してください…そう言っても一向に離してくれる気配はなく、むしろ外されないように掴む力を強めた

(痛っ!……)

何なんだ!?諦めて早くどっかに行ってほしい
男の卑劣な笑みに息が苦しくなり、不覚にも体は震えていた
「っさ、行こ行こ。」と手首を無理やり引く男に、やめてくださいと抵抗する
そんな男の動きを「おい」と一言で止めたのはジャンさんだった

(ジャンさんっ……!)

彼が居てこんなに嬉しく思う日が来るなんて思ってもなかった
眉をひそめてこちらに向かってくるジャンさんは、私というより男たちを見ていた

「んー?何あんた。この子の彼氏?」

「ざけんな。そんなやつ知らねぇよ」

「じゃあ、邪魔しないでもらえるかなー」

ジャンさんに背を向ける男たちは、やめることなく私の手首を強く握っていた
ジャンさん助けてくれないの…?
必死に彼に目を向けるが合わせてはくれず、無言でこちらに近づいてくる

「誰だか知らねぇが、俺の車から汚いケツ退けろ」

「何?ああ、これ君の車?」

ジャンさんの睨みにも負けず、ヘラヘラ笑い続ける男達
恐怖という言葉を知らないのか、ただの馬鹿なのか…
車に座る男に近づくと、ガッと男の首を片手で掴む

「聞こえねぇのかよ、死にてぇの?」

「ひっ!」

淡々と言う言葉には殺意が込められていて、流石にやばいと感じたのか男たちは逃げて行った
男が座ったところを手で払うジャンさんに、助けてもらったお礼を言う

「勘違いするな。あんたなんか別にどうなったっていいんだよ」

ジャンさんの中では私は車以下の存在らしく冷たくあしらわれる
先程買ったと思われるコーラを開けるとゴクゴクと飲み干した
もちろん私の飲み物なんてなかった
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