24 / 333
24
しおりを挟む
赤く光る信号機を見ながら早く青信号になれと心で思う
時刻は10時23分
まだ目的地には着かないのか…
隣で運転する臼田さんは、ふんふんふーん♪っと鼻歌を歌っていて全く焦っているようには見えなかった
「あの……、あとどれくらいで着きますか?」
「うーーん、15分くらい?」
まだまだ着かないのか…
げんなりとしていると横から「大丈夫大丈夫」と言葉を交わしてくる
その”大丈夫”はどこから来るものなのか
すでに遅刻というのにジャンさんが怖くないのか?
なんだか機嫌が良さそうにニコニコしながら運転する彼は、以前の姿なら不審者に間違えられるだろと思っていると赤信号で一時停止しこちらに顔を向ける
「ご機嫌ですね?」
「うん!」
どうしてか聞いていいですか?と聞くと緩んだ頬のまま私から前方に視線を戻し、青信号になったことを確認すると車を発進させる
「僕女の子と一緒に寝たの久方ぶりだよ~。しかもこんな可愛い子に起こしてもらえるなんてねー」
「最高最高」と言う彼の機嫌のいい理由はそういう事だったのか
可愛い子、これ程私に似合わない言葉はないだろう
自分を可愛いと思ったことはない
小さい頃あったかも知れないが、覚えている中では一度もない
私よりも彼のほうが可愛いが似合うだろう
「可愛いなんて……そんなこと…」
そううつむきながら呟くと、いつの間にか強く握りしめていた私の手を優しく触る臼田さん
それ片手運転ですよ
不必要な片手運転は、安全運転義務違反に該当する可能性があることを知らないのだろうか
「ちさちゃんは可愛い。可愛いよ」
何故……2回…言ったの?
その気になれば振り払えるその添えられた手は暖かく、思わず泣きそうになる
それを見られたくなくて、彼とは反対側に顔を向け窓の外を見る
下を向いたままだと、溜まった涙が重力で落ちてしまいそうだったから
「…臼田さんは……優しいです………」
「そぉお?」
「優しすぎて…どうしていいか、わかりません……。」
未だ窓の外を見る私の手に添えられた手は掴むような形に変わり、少し強く、でも痛くない強さで握ってくる
本当に優しい
今も私が取乱さないように手を握ってくれている
どうしていいか…わからない
「片手運転……駄目ですよ…」
「うん。でも握りたいから」
だから仕方ないでしょう。とでも言いたいように握り続ける
"握りたいから"その言葉は一方的なはずなのに、離さないでほしいと密かに思う自分がいた
「もっと甘えてくれていいんだよ」
「……。それは、恐れ多いかと…」
『こんな世の中だ。誰かに甘えるなんて、そんな甘ったるい考えは持たないことだ。』
以前そんなことを言われた
それからなのか覚えてはいないが、甘えることをやめた
自分にはそれは回ってこない
だから最初から期待するな
そう言い聞かせる、自分に……
「僕は年上だし、頼ってくれていいんだよ」
「頼りにはしてます」
「でも?」
「……でも、私っ、…私は……」
言いどもる私は呼吸の仕方でも忘れてしまったのだろうか?
ちゃんと喋れるはずなのに
どうして、こうもスムーズに言うことができないのだろう
「気長に待ってるよ」と頭をポンポン叩く
15分…
こんなにも長く感じたのははじめてだ
時刻は10時23分
まだ目的地には着かないのか…
隣で運転する臼田さんは、ふんふんふーん♪っと鼻歌を歌っていて全く焦っているようには見えなかった
「あの……、あとどれくらいで着きますか?」
「うーーん、15分くらい?」
まだまだ着かないのか…
げんなりとしていると横から「大丈夫大丈夫」と言葉を交わしてくる
その”大丈夫”はどこから来るものなのか
すでに遅刻というのにジャンさんが怖くないのか?
なんだか機嫌が良さそうにニコニコしながら運転する彼は、以前の姿なら不審者に間違えられるだろと思っていると赤信号で一時停止しこちらに顔を向ける
「ご機嫌ですね?」
「うん!」
どうしてか聞いていいですか?と聞くと緩んだ頬のまま私から前方に視線を戻し、青信号になったことを確認すると車を発進させる
「僕女の子と一緒に寝たの久方ぶりだよ~。しかもこんな可愛い子に起こしてもらえるなんてねー」
「最高最高」と言う彼の機嫌のいい理由はそういう事だったのか
可愛い子、これ程私に似合わない言葉はないだろう
自分を可愛いと思ったことはない
小さい頃あったかも知れないが、覚えている中では一度もない
私よりも彼のほうが可愛いが似合うだろう
「可愛いなんて……そんなこと…」
そううつむきながら呟くと、いつの間にか強く握りしめていた私の手を優しく触る臼田さん
それ片手運転ですよ
不必要な片手運転は、安全運転義務違反に該当する可能性があることを知らないのだろうか
「ちさちゃんは可愛い。可愛いよ」
何故……2回…言ったの?
その気になれば振り払えるその添えられた手は暖かく、思わず泣きそうになる
それを見られたくなくて、彼とは反対側に顔を向け窓の外を見る
下を向いたままだと、溜まった涙が重力で落ちてしまいそうだったから
「…臼田さんは……優しいです………」
「そぉお?」
「優しすぎて…どうしていいか、わかりません……。」
未だ窓の外を見る私の手に添えられた手は掴むような形に変わり、少し強く、でも痛くない強さで握ってくる
本当に優しい
今も私が取乱さないように手を握ってくれている
どうしていいか…わからない
「片手運転……駄目ですよ…」
「うん。でも握りたいから」
だから仕方ないでしょう。とでも言いたいように握り続ける
"握りたいから"その言葉は一方的なはずなのに、離さないでほしいと密かに思う自分がいた
「もっと甘えてくれていいんだよ」
「……。それは、恐れ多いかと…」
『こんな世の中だ。誰かに甘えるなんて、そんな甘ったるい考えは持たないことだ。』
以前そんなことを言われた
それからなのか覚えてはいないが、甘えることをやめた
自分にはそれは回ってこない
だから最初から期待するな
そう言い聞かせる、自分に……
「僕は年上だし、頼ってくれていいんだよ」
「頼りにはしてます」
「でも?」
「……でも、私っ、…私は……」
言いどもる私は呼吸の仕方でも忘れてしまったのだろうか?
ちゃんと喋れるはずなのに
どうして、こうもスムーズに言うことができないのだろう
「気長に待ってるよ」と頭をポンポン叩く
15分…
こんなにも長く感じたのははじめてだ
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる