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赤く光る信号機を見ながら早く青信号になれと心で思う
時刻は10時23分
まだ目的地には着かないのか…
隣で運転する臼田さんは、ふんふんふーん♪っと鼻歌を歌っていて全く焦っているようには見えなかった
「あの……、あとどれくらいで着きますか?」
「うーーん、15分くらい?」
まだまだ着かないのか…
げんなりとしていると横から「大丈夫大丈夫」と言葉を交わしてくる
その”大丈夫”はどこから来るものなのか
すでに遅刻というのにジャンさんが怖くないのか?
なんだか機嫌が良さそうにニコニコしながら運転する彼は、以前の姿なら不審者に間違えられるだろと思っていると赤信号で一時停止しこちらに顔を向ける
「ご機嫌ですね?」
「うん!」
どうしてか聞いていいですか?と聞くと緩んだ頬のまま私から前方に視線を戻し、青信号になったことを確認すると車を発進させる
「僕女の子と一緒に寝たの久方ぶりだよ~。しかもこんな可愛い子に起こしてもらえるなんてねー」
「最高最高」と言う彼の機嫌のいい理由はそういう事だったのか
可愛い子、これ程私に似合わない言葉はないだろう
自分を可愛いと思ったことはない
小さい頃あったかも知れないが、覚えている中では一度もない
私よりも彼のほうが可愛いが似合うだろう
「可愛いなんて……そんなこと…」
そううつむきながら呟くと、いつの間にか強く握りしめていた私の手を優しく触る臼田さん
それ片手運転ですよ
不必要な片手運転は、安全運転義務違反に該当する可能性があることを知らないのだろうか
「ちさちゃんは可愛い。可愛いよ」
何故……2回…言ったの?
その気になれば振り払えるその添えられた手は暖かく、思わず泣きそうになる
それを見られたくなくて、彼とは反対側に顔を向け窓の外を見る
下を向いたままだと、溜まった涙が重力で落ちてしまいそうだったから
「…臼田さんは……優しいです………」
「そぉお?」
「優しすぎて…どうしていいか、わかりません……。」
未だ窓の外を見る私の手に添えられた手は掴むような形に変わり、少し強く、でも痛くない強さで握ってくる
本当に優しい
今も私が取乱さないように手を握ってくれている
どうしていいか…わからない
「片手運転……駄目ですよ…」
「うん。でも握りたいから」
だから仕方ないでしょう。とでも言いたいように握り続ける
"握りたいから"その言葉は一方的なはずなのに、離さないでほしいと密かに思う自分がいた
「もっと甘えてくれていいんだよ」
「……。それは、恐れ多いかと…」
『こんな世の中だ。誰かに甘えるなんて、そんな甘ったるい考えは持たないことだ。』
以前そんなことを言われた
それからなのか覚えてはいないが、甘えることをやめた
自分にはそれは回ってこない
だから最初から期待するな
そう言い聞かせる、自分に……
「僕は年上だし、頼ってくれていいんだよ」
「頼りにはしてます」
「でも?」
「……でも、私っ、…私は……」
言いどもる私は呼吸の仕方でも忘れてしまったのだろうか?
ちゃんと喋れるはずなのに
どうして、こうもスムーズに言うことができないのだろう
「気長に待ってるよ」と頭をポンポン叩く
15分…
こんなにも長く感じたのははじめてだ
時刻は10時23分
まだ目的地には着かないのか…
隣で運転する臼田さんは、ふんふんふーん♪っと鼻歌を歌っていて全く焦っているようには見えなかった
「あの……、あとどれくらいで着きますか?」
「うーーん、15分くらい?」
まだまだ着かないのか…
げんなりとしていると横から「大丈夫大丈夫」と言葉を交わしてくる
その”大丈夫”はどこから来るものなのか
すでに遅刻というのにジャンさんが怖くないのか?
なんだか機嫌が良さそうにニコニコしながら運転する彼は、以前の姿なら不審者に間違えられるだろと思っていると赤信号で一時停止しこちらに顔を向ける
「ご機嫌ですね?」
「うん!」
どうしてか聞いていいですか?と聞くと緩んだ頬のまま私から前方に視線を戻し、青信号になったことを確認すると車を発進させる
「僕女の子と一緒に寝たの久方ぶりだよ~。しかもこんな可愛い子に起こしてもらえるなんてねー」
「最高最高」と言う彼の機嫌のいい理由はそういう事だったのか
可愛い子、これ程私に似合わない言葉はないだろう
自分を可愛いと思ったことはない
小さい頃あったかも知れないが、覚えている中では一度もない
私よりも彼のほうが可愛いが似合うだろう
「可愛いなんて……そんなこと…」
そううつむきながら呟くと、いつの間にか強く握りしめていた私の手を優しく触る臼田さん
それ片手運転ですよ
不必要な片手運転は、安全運転義務違反に該当する可能性があることを知らないのだろうか
「ちさちゃんは可愛い。可愛いよ」
何故……2回…言ったの?
その気になれば振り払えるその添えられた手は暖かく、思わず泣きそうになる
それを見られたくなくて、彼とは反対側に顔を向け窓の外を見る
下を向いたままだと、溜まった涙が重力で落ちてしまいそうだったから
「…臼田さんは……優しいです………」
「そぉお?」
「優しすぎて…どうしていいか、わかりません……。」
未だ窓の外を見る私の手に添えられた手は掴むような形に変わり、少し強く、でも痛くない強さで握ってくる
本当に優しい
今も私が取乱さないように手を握ってくれている
どうしていいか…わからない
「片手運転……駄目ですよ…」
「うん。でも握りたいから」
だから仕方ないでしょう。とでも言いたいように握り続ける
"握りたいから"その言葉は一方的なはずなのに、離さないでほしいと密かに思う自分がいた
「もっと甘えてくれていいんだよ」
「……。それは、恐れ多いかと…」
『こんな世の中だ。誰かに甘えるなんて、そんな甘ったるい考えは持たないことだ。』
以前そんなことを言われた
それからなのか覚えてはいないが、甘えることをやめた
自分にはそれは回ってこない
だから最初から期待するな
そう言い聞かせる、自分に……
「僕は年上だし、頼ってくれていいんだよ」
「頼りにはしてます」
「でも?」
「……でも、私っ、…私は……」
言いどもる私は呼吸の仕方でも忘れてしまったのだろうか?
ちゃんと喋れるはずなのに
どうして、こうもスムーズに言うことができないのだろう
「気長に待ってるよ」と頭をポンポン叩く
15分…
こんなにも長く感じたのははじめてだ
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