逍遙の殺人鬼

こあら

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髪もそうだが、服装もより老けて見させるのだろう
グレーのスエット
しかも、食べカス&シミつき………
老けて見られて当然だと言える


スエット以外も洋服は持っているみたいだけど、動きやすさや汚れてもいいとなると、結局スエットを選んでしまうらしい

汚れは食べるときにうっかりしなければこぼさない
そう言ってるそばから肉じゃがをスエットに落とす

あーごめんごめん、頭をかきながら笑っている

うっかりというより距離感が掴めていないように見えた
もしかして、眼鏡の度数があっていないのでは?と思い、臼田うすたさんの前に指を出す
これ何本ですか?と聞く私に眉を下げて笑う臼田うすたさん

「2本」


じゃあこれは?と指の数を変えてもう1度、今度は少し離れて出す
9本と見事に当てられ、度数があってない訳じゃない無かったみたいだ









「ふぅ~、ごちそうさまー」

綺麗に完食した臼田うすたさんはじっと私を見つめたまま動こうとしい
なんだろう…、言いたいことがあるなら言えばいいのに

目を逸らしても、視線の矢が飛んでくる
視線の圧というものはこうもチクチク痛いものなのか…
いたたまれなくなり、どうしたんですか?っと圧の理由を聞く


「待ってるの」

いったい何を待っているんだろう?


「ちさちゃんが食べ終わるのを。」

「ごめんなさいっ、私食べるの遅くて…」

急いで食べます、そう急ぐ私に”待て”をかけた
「焦らなくていいよ、見てるだけだから。」そう言うとニコニコしながら両手に頬を乗っけてルンルンになる

何がそんなに楽しいんだか…


「私が食べてる姿、面白い…ですか?」

「うん、とっても。」とまるで頭にお花が咲きそうなくらい能天気な声色で返事される
太陽みたいな微笑みにこっちは溶けちゃいそうで、箸の動きが遅くなる


(こうも見られると、ちょっと………)

その視線に耐えられなくなり衝動的に彼の眼鏡を奪った
これで見えないだろいと思い、食事を続け
が………………………
視線はまだ感じられた


チラッと確認すると、彼はこちらを見たままだった

眼鏡がないため、何も邪魔されるものがなくなり無装備の瞳が私を見つめている

見えていないと分かっていても、あまりに綺麗なその瞳に、惹き込まれてしまいそうになる
ニコッと首を傾け笑いかけるその仕草さえ甘く痺れそで……
この人は見えていない、見えていない…と呪文のごとく心に唱える
見えていない…はずなのに彼の瞳は今も私を見つめ、捕えていた

駄目だ駄目だ、惑わされるな
気合を入れなおし、くっと、眉に力を入れる



「そんなに睨まないでよ~」

「……………………。」

え、見えてんじゃん!!??


「それ、ブルーライトカットメガネだよ~」と私の心を見透かしてくる
これ度ありじゃない、と手に持っている眼鏡を確認し今までの顔がガッツリ見られていた事に気づき、紅潮こうちょうする顔で目的を失った口はパクパクと鯉の様に動いていた


「1日中パソコンイジってるから着けてるのが日常化してたの。ブルーライト、目に悪いってよく聞くでしょ?」

人差し指で目元をトントンと示し私に笑ってみせる
その笑みは少し意地悪で優しかった


(もう………お腹いっぱいです…。)
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