求不得苦 -ぐふとくく-

こあら

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9.労して功なし

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茶色ががったくるくるとした髪の毛に青白い肌、整った顔立ちの少女がベットに横たわっている

現実世界に戻ってきたのだ



どうしてあんな怖い物語を見せたのかまだ分からないけどはじめに見た物語と違いが大きすぎる




いったい何を伝えたいんだろう




























まるでホラーとか、そっち系の映画をVR見たいにリアルで体験してきた気分






「ねぇ、大丈夫?顔真っ青だよ。」



同僚が心配して声をかけてきた

今にも倒れちゃいそうと言い更衣室に連れていかれる








「今日はもう帰ったら?今のところ忙しくないし。それに、こんな体調悪そうな看護師に見てもらいたいって患者はいないと思うよ。」



 

チームリーダーには私から伝えとくと着替えを出してくれてた





「歩くのキツそうだったら連絡して。タクシーでも何でも呼ぶから。」








彼女の優しさに触れ、先程見ていた母親と比べてしまう




「ありがとう、大丈夫。少し休んだら…歩いて帰るね。」







気を付けてねと別れを告げる


血の繋がっていない人でさえこんなに心配してくれるのに…





考えるだけで吐きそう…



 


(あんなの毎日って…)



   

絶対耐えられない、と私は頭を抱える










少し時間がたち、私は着替えて早退した
















家について、人をダメにするクッションにダイブする





(もしかしたら…現実世界でもあんな風な環境で育ってきた子がいるのかな…。)






また涙か出てきそうになった


それをふりきろうと、からだ全体を使い全力でのびる







「んんーー…」









「ん!?」







(やばい、やばい、やばい。脚つった…。)








私も年なのかとなげいていると、気がつけば真っ黒な場所に居た


つった脚ももとに戻っていた


どういうこと?と立つ

前に進もうとすると何かにぶつかる






まわりが全て黒いから何があるのかまったく分からなかった



手を当ててなにがあるのか手探りしていく






そこには使い慣れた感触のモノを確認し意を決してしたに下げ押す

するとそれはドアだったらしく開き光が一気に視界に入ってくる




(まぶしい…)













目が光に慣れだんだんとまわりが見えるようになってきた








まさかのクローゼットとから私は出てきた


(何でここが出入り口なのかしら)




 
あら不思議とクローゼットを上から下まで流れるように見ていると少女の声が聞こえた











『ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああっ』






(何事…?)




私は少女の声がする方へ走る
すぐ近くの部屋に床にへたりこんでいる後ろ姿が見えた




何があったのか確認すべく回り込んで少女の正面へ







「!?」






『やだっ、やだやだ…』






床にしゃがみこんで泣きながら抱えていたのは呼吸をしていない血の気が引いた少女の妹だった

その姿は痩せていて決して健康状態が良いとは言えない見た目だった







『いつまで泣いてんのよ。死んじゃったもんは仕方ないでしょ。』






『お母さんがっ、ちゃんとご飯をあげてたら…、死んだりしなかった…。暴力なんかふるわなきゃこんなことには…』








『なに言ってるの。実際あげなかったのはあんたでしょ。私が殴っても止めに入らなかったじゃない。あんたも同罪よ。』








『っう、ううっ…。』




何も言い返さない少女


何事もなかったのように表情1つ変えずに部屋を出ていく母親












御葬式おそうしきの準備をし埋葬する














『どうやら、娘さんが誤って妹さんを殺しちゃったみたいよ。』




『あらやだ、怖いわね。』





『自分の妹に手を掛けるなんて…恐ろしいわぁ。』








また真実とは掛け離れた噂が流れる


今まで耐えて我慢してきた分の涙が溢れ出て大粒の涙があらわになる


声を押さえて、震えながら妹の墓地を見ながら少女は1人でたたずんでいる








まさか…この物語に〈死〉が出ると思わなかった

だんだんシリアスになっていく物語に今までどれだけ軽く考えていたのかが重くのしかかってくる








これは本当にただの物語なのだろうか…







807号室の少女が見せた今までの映像はなにかに関連していている気がしてきた






そうであってほしくない








幼い妹の死を悲しんでいる少女に誰も声をかけない


少女は1人で苦しみを抱えて、誰にも言えない想いをあの小さな体で押さえている





大人たちのうわべだけの言葉が家の中を駆け巡っていた



会ったこともない人達




[今回は残念な出来事でしたね]



[あまり気を落とさないでください]



[悲しんでたら亡くなった娘さんも悲しみますよ]










『…っ、』




少女は両手で耳をふさいだ

飛び交う声がなぐさめの言葉ではなく笑い声に聞こえて少女の心をさらに苦しめる





『もう…、っ、やめて…。』



『お父さん…、どうして来ないの…。姉さん兄さん…。』















『…っ、誰か…助けてよ。お願い…。』












廃人のように毎日毎日妹の墓地を訪れ、墓地と向き合い1日を過ごす







少女は意味を失って魂が抜けてしまったようにやつれていく










(最後まで見るんだ。少女と…約束、したから。)








目を背けずに目をしっかりと開き脳裏に焼き付ける



























少女の妹が亡くなってほどなくした頃少女宛に一通の手紙が届く



手紙は少女の父親からだった













妹が亡くなったと連絡を受けたのは葬儀そうぎが終った後だった


すまなかった



お前たち2人のためにたくさん金を稼いで引き取るつもりだったんだ



そのために出稼ぎに出ていたんだ



謝っても許してもらえるとは思っていない



今まで毎日の苦痛に耐えてきて辛かっただろう



本当にすまなかった



何をしても償いにはならないだろう



もっと早くにお前の母親をお前から離すべきだった



こんな状況で伝えるべきじゃないかもしれないが、誕生日おめでとう



今日中にお前を迎えに行くから





父より








開封後の封筒と父親が書きつづった手紙が風にくすぐられなびく







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