生まれたて魔王とサイコパス勇者

２話 ステータスオープン

「 転生か。いやー、漫画とかで読んだことあるけど本当に自分が経験することになるとは。
後悔がないかと言われれば無いわけではない……まあ、あっちの世界だと天涯孤独だったし、いっか。
 さすがにうっかりで殺されたのにはキレたけど、今世での成功はもはや約束されたも同然だもんな」

 彼は、死後の世界にて神に殺された詫びにこの世界最強の存在にすることを約束させた。
 そんな力が手に入れば人生に失敗などそんなに起こらない。神も絶対はないと言っていたため、そんなに、としておこう。
 まあ、この世界は力こそ全て……とまでは言わないが、力があれば大抵の事はできてしまうのだ。

「んふふ、はっはっは、はぁーはっはっはっは！　素晴らしきかな今、世、は！」


 この時まで、魔王？は浮かれており辺りを見ていなかった。

 だが、ひんやりとした空気に体が震え、思考が現実に戻る。
 そして、彼は恐ろしい事に気付いたのだ。自分がいる場所に……

「 なんだこの薄気味悪い所。たしか神様は泉の近くの村に転生させるって……また、ミスしたのかって……あれ！？」

 ここでやっと彼は自分が言葉を話し、立っていることを異常だと理解することができた。

「おいおい、待ってくれ。何で俺はもう話せて立てるんだ？ 今さっき産まれたばっかのはずだぞ」


　嫌な予感が魔王の頭を占める。

「まさか、まさかな。神様もさっきミスしたばっかでうっかりはやらないだろ……」

 そして、冷や汗を流しながら、彼は自分の今思い浮かべた可能性を否定するために、そして自身の状況を確認すべく、呟いた。

「ステータスオープン」

 透明なウィンドウが現れた。普段の彼ならばそれに大変喜び、躍り狂ったことだろう。

 しかし、彼の目はウィンドウのある一点で止まり、顔から血の気が引いていく。
 そこに書かれているのは

　職業『魔王』

「…………………は？」

　彼の頭は真っ白になった。