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奴隷となった勇者の末路
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エリーが光の勇者の資格を剥奪されたことは、あっという間に知れ渡った。
なにしろ傲岸不遜で知られるエリーが、涙を浮かべながら俺に抱きついている姿が多くの人に目撃されたんだからな。
これで騒ぎにならない方がおかしい。
冒険者ギルドが販売する帰還アイテムは、帰還場所がその冒険者ギルドに設定されている。
だから、その衝撃的なシーンは多くの冒険者に目撃されてしまったんだ。
しかもそれだけじゃない。
一体エリーになにがあったのかと、その場にいた人が「ステータス」を使ったんだ。
たぶん混乱か何かにかかっていると思ったんだろう。
ダメージや状態異常なんかも確認できるのがステータスの便利なところだ。
何かあった場合、とりあえずステータスで確認するのが一般的である。
だから今回もそうしたのだろうが、その結果とんでもないものを見てしまったのだ。
「職業、奴隷? しかも主人がイクスだと?」
ステータス画面は偽れない。
いやもしかしたら神聖魔法を極めていた頃ならステータス画面を変える魔法もあったのかもしれないが、今のエリーにはなんのスキルもない。
そのため俺の奴隷となったことが、あっさりとバレてしまったのだ。
「あのエリーが奴隷ってどういうことだ?」
「しかも光の勇者も消えているらしいぞ」
ざわめきがギルド内に広がっていく。
噂は本当なのか確認しようと誰もがエリーに向かってステータスを使い、そのたびに「うわっ、まじで奴隷になってる!」などと声を上げていた。
その間、エリーは顔を隠す様にうつむいていた。
全身がブルブルと震え、耳も赤く染まっている。
悔しさと恥ずかしさが混ざり合っているのだろう。
俺なんかの奴隷になるなんて、彼女にとっては絶対にありないことのはずだった。
しかも周りは無遠慮にステータスを使いまくっている。
ある意味他人の秘密をのぞき見るような行為なのだが、プライバシーに配慮するという考えはまるで感じられない。
まるで見せ物みたいに扱われている。
これまでのエリーなら、神聖魔法の一つでもぶっ放して、群がる奴らを建物ごと更地に変えていただろう。
だけど今はなにもいえず、ただ黙ってうつむくだけ。
いや、よく見たら隠した顔で小さく何かをつぶやいていた。
「殺してやる……殺してやる……殺してやる……」
怖っ。
まあ、こんな見せ物みたいな扱いをされたら、そう思う気持ちもわからないわけではない。
なので俺はさっさとその場を離れることにした。
「エリー、行くぞ」
「……はい、ご主人様。……っ!」
そう答えてしまったのは奴隷だからだろう。
エリーは自分で自分の言った言葉が信じられないといった表情だったが、足は自然と俺の後をついてくる。
やはり奴隷は主人に絶対服従のようだ。
冒険者ギルドを出て行く俺たちを見ながら、背後でざわめきが大きくなっていく。
これでエリーが俺の奴隷となったことは確定だ。
噂は瞬く間に広がっていくだろう。
そういえば自分の装備の重さで動けないはずだったんだけど、今はなんとか動けているみたいだ。
まあ最初は全ステータスが0だったからな。
そんなの生まれる前の胎児と変わらない。動けないのも当然か。
でも今は俺の奴隷となったことで、ステータスが+1されている。
そのおかげでなんとか歩けるようだった。
みんなが色々なことを口勝手に話すなかで、一つの言葉が妙に耳に残った。
「何があったのか知らないけど、あのエリーが奴隷なんて、いい気味だよな」
その言葉が、これまでエリーが街の人にどう思われていたのかを端的に示しているだろう。
◇
ギルドを出た俺たちは拠点となっていた宿屋へ戻ってきた。
もちろん最上階の、一番高級な部屋だ。
俺たちが姿を現すと、従業員が恭しく頭を下げた。
「お帰りなさいませエリーさ、ま……!?」
全員が驚いたように俺たちをみた。
なにしろ俺が前を歩き、その後ろをエリーがついてくるという、いつもの逆の態度だったからな。
ここに来る途中、すれ違った人たちもみんな同じ反応だった。
やはりどこに行っても奇異の目で見られてしまうな。
仕方がないのだが、やはりどうも疲れてしまう。
部屋に入り人々の視線がなくなったことで、ようやく解放された気持ちになれた。
変に注目を集めてしまったおかげで俺まで疲れてしまったよ。
「アンタのせいですっごい恥をかいたじゃないの!」
エリーがさっそく怒鳴りつけてきた。
「イクスのくせに何様のつもり──」
「エリー、少し黙って」
「はい、ご主人様。……っ!!」
従順に答えた後、何かを言いたそうに睨みつけてきた。けど何も言えないようだ。
黙って、という命令だから、何も言わずにこうして黙っているのだろう。
奴隷って随分便利だな。
エリーの再教育にぴったりだ。
もっとも、何も言わないだけで、相変わらずこっちには憎悪の視線を向けてきているんだから、まだまだと言えるかもしれないけど。
「さて、これからどうしようか」
やるべきことはたくさんある。
なにしろエリーは光の勇者の資格を失ってしまった。
しかもレベルは1だ。
冒険者としてやっていくのはもう無理だろう。
とはいえ生きていくには稼ぐしかない。
俺はエリーの主人なのだから、エリーの面倒を見るのは俺、ということになるのかもしれないけど。
働かざる者食うべからず、が俺の信条だ。
「エリーって何ができるの」
「はあ? どういう意味よ? 喧嘩売ってるの?」
「言葉使いも悪いな。もっと丁寧に話して」
「はい、ご主人様」
「それで、エリーは冒険者以外に何ができるの」
「なんでアンタなんかに……冒険者としてしか生きてきませんでしたので、それ以外のことは何一つできません」
「なるほど」
予想通りの答えだった。
ま、そりゃそうだ。
実際エリーは光の勇者としての将来を望まれていた。
それ以外の雑務は全部周りがやっていたからな。
他のことはできなくても当然だ。
俺だって冒険者以外になにが出来るのかと聞かれたら、ちょっとすぐには答えられない。
となると……。
「とりあえず、今着ているそれは脱いでくれ」
「……っ!」
エリーの顔色が変わった。
なにしろ傲岸不遜で知られるエリーが、涙を浮かべながら俺に抱きついている姿が多くの人に目撃されたんだからな。
これで騒ぎにならない方がおかしい。
冒険者ギルドが販売する帰還アイテムは、帰還場所がその冒険者ギルドに設定されている。
だから、その衝撃的なシーンは多くの冒険者に目撃されてしまったんだ。
しかもそれだけじゃない。
一体エリーになにがあったのかと、その場にいた人が「ステータス」を使ったんだ。
たぶん混乱か何かにかかっていると思ったんだろう。
ダメージや状態異常なんかも確認できるのがステータスの便利なところだ。
何かあった場合、とりあえずステータスで確認するのが一般的である。
だから今回もそうしたのだろうが、その結果とんでもないものを見てしまったのだ。
「職業、奴隷? しかも主人がイクスだと?」
ステータス画面は偽れない。
いやもしかしたら神聖魔法を極めていた頃ならステータス画面を変える魔法もあったのかもしれないが、今のエリーにはなんのスキルもない。
そのため俺の奴隷となったことが、あっさりとバレてしまったのだ。
「あのエリーが奴隷ってどういうことだ?」
「しかも光の勇者も消えているらしいぞ」
ざわめきがギルド内に広がっていく。
噂は本当なのか確認しようと誰もがエリーに向かってステータスを使い、そのたびに「うわっ、まじで奴隷になってる!」などと声を上げていた。
その間、エリーは顔を隠す様にうつむいていた。
全身がブルブルと震え、耳も赤く染まっている。
悔しさと恥ずかしさが混ざり合っているのだろう。
俺なんかの奴隷になるなんて、彼女にとっては絶対にありないことのはずだった。
しかも周りは無遠慮にステータスを使いまくっている。
ある意味他人の秘密をのぞき見るような行為なのだが、プライバシーに配慮するという考えはまるで感じられない。
まるで見せ物みたいに扱われている。
これまでのエリーなら、神聖魔法の一つでもぶっ放して、群がる奴らを建物ごと更地に変えていただろう。
だけど今はなにもいえず、ただ黙ってうつむくだけ。
いや、よく見たら隠した顔で小さく何かをつぶやいていた。
「殺してやる……殺してやる……殺してやる……」
怖っ。
まあ、こんな見せ物みたいな扱いをされたら、そう思う気持ちもわからないわけではない。
なので俺はさっさとその場を離れることにした。
「エリー、行くぞ」
「……はい、ご主人様。……っ!」
そう答えてしまったのは奴隷だからだろう。
エリーは自分で自分の言った言葉が信じられないといった表情だったが、足は自然と俺の後をついてくる。
やはり奴隷は主人に絶対服従のようだ。
冒険者ギルドを出て行く俺たちを見ながら、背後でざわめきが大きくなっていく。
これでエリーが俺の奴隷となったことは確定だ。
噂は瞬く間に広がっていくだろう。
そういえば自分の装備の重さで動けないはずだったんだけど、今はなんとか動けているみたいだ。
まあ最初は全ステータスが0だったからな。
そんなの生まれる前の胎児と変わらない。動けないのも当然か。
でも今は俺の奴隷となったことで、ステータスが+1されている。
そのおかげでなんとか歩けるようだった。
みんなが色々なことを口勝手に話すなかで、一つの言葉が妙に耳に残った。
「何があったのか知らないけど、あのエリーが奴隷なんて、いい気味だよな」
その言葉が、これまでエリーが街の人にどう思われていたのかを端的に示しているだろう。
◇
ギルドを出た俺たちは拠点となっていた宿屋へ戻ってきた。
もちろん最上階の、一番高級な部屋だ。
俺たちが姿を現すと、従業員が恭しく頭を下げた。
「お帰りなさいませエリーさ、ま……!?」
全員が驚いたように俺たちをみた。
なにしろ俺が前を歩き、その後ろをエリーがついてくるという、いつもの逆の態度だったからな。
ここに来る途中、すれ違った人たちもみんな同じ反応だった。
やはりどこに行っても奇異の目で見られてしまうな。
仕方がないのだが、やはりどうも疲れてしまう。
部屋に入り人々の視線がなくなったことで、ようやく解放された気持ちになれた。
変に注目を集めてしまったおかげで俺まで疲れてしまったよ。
「アンタのせいですっごい恥をかいたじゃないの!」
エリーがさっそく怒鳴りつけてきた。
「イクスのくせに何様のつもり──」
「エリー、少し黙って」
「はい、ご主人様。……っ!!」
従順に答えた後、何かを言いたそうに睨みつけてきた。けど何も言えないようだ。
黙って、という命令だから、何も言わずにこうして黙っているのだろう。
奴隷って随分便利だな。
エリーの再教育にぴったりだ。
もっとも、何も言わないだけで、相変わらずこっちには憎悪の視線を向けてきているんだから、まだまだと言えるかもしれないけど。
「さて、これからどうしようか」
やるべきことはたくさんある。
なにしろエリーは光の勇者の資格を失ってしまった。
しかもレベルは1だ。
冒険者としてやっていくのはもう無理だろう。
とはいえ生きていくには稼ぐしかない。
俺はエリーの主人なのだから、エリーの面倒を見るのは俺、ということになるのかもしれないけど。
働かざる者食うべからず、が俺の信条だ。
「エリーって何ができるの」
「はあ? どういう意味よ? 喧嘩売ってるの?」
「言葉使いも悪いな。もっと丁寧に話して」
「はい、ご主人様」
「それで、エリーは冒険者以外に何ができるの」
「なんでアンタなんかに……冒険者としてしか生きてきませんでしたので、それ以外のことは何一つできません」
「なるほど」
予想通りの答えだった。
ま、そりゃそうだ。
実際エリーは光の勇者としての将来を望まれていた。
それ以外の雑務は全部周りがやっていたからな。
他のことはできなくても当然だ。
俺だって冒険者以外になにが出来るのかと聞かれたら、ちょっとすぐには答えられない。
となると……。
「とりあえず、今着ているそれは脱いでくれ」
「……っ!」
エリーの顔色が変わった。
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