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第3章 碧斗、高校2年生。あさひ、社会人7年目。
6.
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焼き上がりに20分以上かかるふわふわのパンケーキは届くまでまだ時間がかかった。
結構あるなと思っていると、急にあさひが背筋を伸ばしてキリっとした瞳で話し出した。
その表情に、緊張が走る。
ドキ、ドキ、ドキと心臓の音が大きくなって…
「パンケーキとホットケーキの違いって知ってる?」
「………。」
予想外の話だった。
大きくなりかけた心臓の音もすーっと消えていった。
真剣な顔で始まった突然のあさひのパンケーキトーク、知らないと言って首を振る。
「じゃあ、なんだと思う?」
やたら得意げに聞いて来たってことは、確かな情報があるんだな。パンケーキとホットケーキの違い、なんとなーく聞いたことがあるような気がするけど…
「なんだろ…、全然わかんない。何?」
「実は…」
ゴクリと息を飲む。じっと見合って、謎にドキドキした。さっきの心臓の音とは違うドキドキ感。
間の取り方、クイズの司会者みたいなんだけど。
「どっちも同じなの!」
「マジでっ!?厚さじゃないの!?」
「私もそうだと思ってたー!ただ日本がホットケーキって呼んでるだけで同じなんだって!」
「そーなんだ、すげぇ!それは知らなかったー!!」
答えは絶対厚さの違いだから、わざと知らないって答えたのに同じだとは思わなかった。
なるほど、じゃあ昔よく焼いてたのもホットケーキでありパンケーキなのか…!
すごい、新発見だ…!!
わーっと高まる感情にパァッと目が開く。
「碧斗はそうゆう反応してくれると思ったんだ~!」
ふふふっと口を押えて笑った。
「え?」
「私も同じ反応したの!」
俺の反応がよっぽどよかったのか、そこからずっとくすくす笑っていた。
まぁ俺もだいぶテンション上げて身乗り出しちゃったけど、そんな笑わなくても…くすくすから声出せないぐらい笑っちゃってるじゃん。
息も上手く出来てないぐらい笑っちゃってんじゃん。
もうパンケーキも届いてんのに…
「笑いすぎだろ!」
「だって想像通りだったんだもん~!」
「悪かったな、想像通りで」
「違うよ、期待通りだよ!」
親指をグッと立てて前に出す。
なんだよ、そのポーズは。その可愛い爪に合わないんだよ。
でもそれはすごくあさひらしい。
だから俺までおかしくなっちゃって、つられて笑った。
もう何がおもしろかったのかもよくわかんないくらい、ただ笑ってそれが楽しくて。
楽しいんだ、どうしてもこの瞬間が。
愛しくて、何より大事な時間。
“なんか欲しいものないの?何でもいいよ!好きなもの買ってあげる!”
買ってほしいものなんかないよ。
俺はあさひが欲しい。
今、目の前にいるあさひが欲しい。
結構あるなと思っていると、急にあさひが背筋を伸ばしてキリっとした瞳で話し出した。
その表情に、緊張が走る。
ドキ、ドキ、ドキと心臓の音が大きくなって…
「パンケーキとホットケーキの違いって知ってる?」
「………。」
予想外の話だった。
大きくなりかけた心臓の音もすーっと消えていった。
真剣な顔で始まった突然のあさひのパンケーキトーク、知らないと言って首を振る。
「じゃあ、なんだと思う?」
やたら得意げに聞いて来たってことは、確かな情報があるんだな。パンケーキとホットケーキの違い、なんとなーく聞いたことがあるような気がするけど…
「なんだろ…、全然わかんない。何?」
「実は…」
ゴクリと息を飲む。じっと見合って、謎にドキドキした。さっきの心臓の音とは違うドキドキ感。
間の取り方、クイズの司会者みたいなんだけど。
「どっちも同じなの!」
「マジでっ!?厚さじゃないの!?」
「私もそうだと思ってたー!ただ日本がホットケーキって呼んでるだけで同じなんだって!」
「そーなんだ、すげぇ!それは知らなかったー!!」
答えは絶対厚さの違いだから、わざと知らないって答えたのに同じだとは思わなかった。
なるほど、じゃあ昔よく焼いてたのもホットケーキでありパンケーキなのか…!
すごい、新発見だ…!!
わーっと高まる感情にパァッと目が開く。
「碧斗はそうゆう反応してくれると思ったんだ~!」
ふふふっと口を押えて笑った。
「え?」
「私も同じ反応したの!」
俺の反応がよっぽどよかったのか、そこからずっとくすくす笑っていた。
まぁ俺もだいぶテンション上げて身乗り出しちゃったけど、そんな笑わなくても…くすくすから声出せないぐらい笑っちゃってるじゃん。
息も上手く出来てないぐらい笑っちゃってんじゃん。
もうパンケーキも届いてんのに…
「笑いすぎだろ!」
「だって想像通りだったんだもん~!」
「悪かったな、想像通りで」
「違うよ、期待通りだよ!」
親指をグッと立てて前に出す。
なんだよ、そのポーズは。その可愛い爪に合わないんだよ。
でもそれはすごくあさひらしい。
だから俺までおかしくなっちゃって、つられて笑った。
もう何がおもしろかったのかもよくわかんないくらい、ただ笑ってそれが楽しくて。
楽しいんだ、どうしてもこの瞬間が。
愛しくて、何より大事な時間。
“なんか欲しいものないの?何でもいいよ!好きなもの買ってあげる!”
買ってほしいものなんかないよ。
俺はあさひが欲しい。
今、目の前にいるあさひが欲しい。
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