28 / 37
第3章 碧斗、高校2年生。あさひ、社会人7年目。
5.
しおりを挟む
「ねぇねぇ碧斗、何か欲しいものないの?」
「ないよ、最近コート買っちゃったし」
「じゃあ靴は!あ、帽子とか財布とか!」
「え、急に何?どした?」
行き先は駅前のショッピングモール、昔あさひとヒーローショーを見に来たところ。だいぶお店は変わっちゃったけど今でもデートで人気の遊びスポットなのは健在でいつ来ても人はたくさんいる。
「碧斗に何かプレゼントしたいなって、思って。今日までのお礼に…みたいな」
………。
それか目的は、それで誘われたのか、わざわざ。
てゆーかそれじゃあ俺の方がお母さんじゃないか。
「…何もいらないよ」
「なんか欲しいものないの?何でもいいよ!好きなもの買ってあげる!」
「急に言われてもないよ」
「じゃあ、あれは!?ヒロのグッズ!」
「もういらないよ、小学生の頃好きだったアニメのグッズとかもう欲しくないよ」
そんなのいつの話だよ、って言いたくなる。あさひにとって俺はそんなイメージなのかって。
「…欲しいもの、ないの?」
「ないから、大丈夫だよ」
むぅ~と口を尖らせる。そんな顔されても俺だって困るんだけど、いきなり誘われて欲しいもの催促されてあさひの方がそんな顔するのかよ。
「あ!」
「?」
パンッと両手を合わせて、何かいいこと思いついた風に明るい表情を見せた。マジでこんなとこも変わってない、百面相のあさひも健在で。
「じゃあパンケーキ食べよう!碧斗好きでしょ?」
そして、それはきっとあさひの好きなものだけど…
「うん、好き」
一緒に作るホットケーキが好きだった。
ショッピングモールの中に入っているパンケーキ屋はそこそこ混んでいて、数人いた行列に並んでお店に入った。
並んでいる間、最近見たおもしろかったテレビの話とかおいしかったお菓子の話とかどーでもいい話題で、だけどそんな話をしていたらあっという間に順番が来た。
案内された隅っこの席であさひと向き合って、何のパンケーキにするかメニューを見る。ん~っと声を出しながら少し悩んだあさひと顔を見合わせてお互い食べたいものをあげた。
「「チョコバナナパンケーキ!」」
悩んだ間も5秒くらい、最初から決まってたように話し合う間もなくメニューが決まった。
「毎回そうだよね、碧斗と行くと好きなもの同じだから半分コ出来ないんだよね!」
「いつもチョコレートアイスだったからな、2人して」
「ホットケーキには絶対バナナだし」
「それはあさひが俺にバナナあげとけばいいみたいに言ったから!」
「え、そーだっけ?」
そんな話をしながら注文したパンケーキが届くのを待った。パンケーキより先にフォークやナイフの入ったケースが届いた。
「あさひ、その爪でパンケーキ食べれるの?フォークとナイフ使える?」
「たぶん食べれる!」
「たぶんって」
根拠のない自信につい笑っちゃって。
あさひの白くて細い指にパステルピンクがよく似合っていた。
「その爪、可愛いね」
「本当?」
「うん、可愛い」
可愛いよ、誰より可愛い。
褒めたら頬を緩めて笑う姿も何もかも。
その手にもう触れられなくて。
「ないよ、最近コート買っちゃったし」
「じゃあ靴は!あ、帽子とか財布とか!」
「え、急に何?どした?」
行き先は駅前のショッピングモール、昔あさひとヒーローショーを見に来たところ。だいぶお店は変わっちゃったけど今でもデートで人気の遊びスポットなのは健在でいつ来ても人はたくさんいる。
「碧斗に何かプレゼントしたいなって、思って。今日までのお礼に…みたいな」
………。
それか目的は、それで誘われたのか、わざわざ。
てゆーかそれじゃあ俺の方がお母さんじゃないか。
「…何もいらないよ」
「なんか欲しいものないの?何でもいいよ!好きなもの買ってあげる!」
「急に言われてもないよ」
「じゃあ、あれは!?ヒロのグッズ!」
「もういらないよ、小学生の頃好きだったアニメのグッズとかもう欲しくないよ」
そんなのいつの話だよ、って言いたくなる。あさひにとって俺はそんなイメージなのかって。
「…欲しいもの、ないの?」
「ないから、大丈夫だよ」
むぅ~と口を尖らせる。そんな顔されても俺だって困るんだけど、いきなり誘われて欲しいもの催促されてあさひの方がそんな顔するのかよ。
「あ!」
「?」
パンッと両手を合わせて、何かいいこと思いついた風に明るい表情を見せた。マジでこんなとこも変わってない、百面相のあさひも健在で。
「じゃあパンケーキ食べよう!碧斗好きでしょ?」
そして、それはきっとあさひの好きなものだけど…
「うん、好き」
一緒に作るホットケーキが好きだった。
ショッピングモールの中に入っているパンケーキ屋はそこそこ混んでいて、数人いた行列に並んでお店に入った。
並んでいる間、最近見たおもしろかったテレビの話とかおいしかったお菓子の話とかどーでもいい話題で、だけどそんな話をしていたらあっという間に順番が来た。
案内された隅っこの席であさひと向き合って、何のパンケーキにするかメニューを見る。ん~っと声を出しながら少し悩んだあさひと顔を見合わせてお互い食べたいものをあげた。
「「チョコバナナパンケーキ!」」
悩んだ間も5秒くらい、最初から決まってたように話し合う間もなくメニューが決まった。
「毎回そうだよね、碧斗と行くと好きなもの同じだから半分コ出来ないんだよね!」
「いつもチョコレートアイスだったからな、2人して」
「ホットケーキには絶対バナナだし」
「それはあさひが俺にバナナあげとけばいいみたいに言ったから!」
「え、そーだっけ?」
そんな話をしながら注文したパンケーキが届くのを待った。パンケーキより先にフォークやナイフの入ったケースが届いた。
「あさひ、その爪でパンケーキ食べれるの?フォークとナイフ使える?」
「たぶん食べれる!」
「たぶんって」
根拠のない自信につい笑っちゃって。
あさひの白くて細い指にパステルピンクがよく似合っていた。
「その爪、可愛いね」
「本当?」
「うん、可愛い」
可愛いよ、誰より可愛い。
褒めたら頬を緩めて笑う姿も何もかも。
その手にもう触れられなくて。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
児童絵本館のオオカミ
火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
幼なじみの告白。
藤永ゆいか
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞エントリー作品】
中学2年生の千紗は、幼なじみの朔のことが好き。だけど、朔は中学生になってからなぜか千紗に冷たくなってしまった。
朔が自分のことをどう思っているのか気になった千紗は、ある日マーガレットで花占いをしてみることに。しかし、その結果はまさかの “嫌い” で……。
そんななか、千紗は久しぶりに朔と一緒に帰ることになるが……?
*「野いちご」にも掲載しています。
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる