10歳差の王子様

めぇ

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第2章 碧斗、中学1年生。あさひ、社会人3年目。

2.

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「碧斗ー!碧斗ー!!」

階段の下から大声で兄貴が呼んでいる。ゴリゴリの筋肉から出される声は野太くて力強い、口元の冷たい違和感と共にハッと目を覚ました。

うわっ、やべ!超寝てた!!

「昼飯だぞーーー!」

そんな大声で言わなくても聞こえてるっつの、あさひん家まで聞こえるじゃねか!

「すぐ、行くからっ」

ぐしゃぐしゃと口元を拭いて階段を駆け下りた。

すでにいい匂いがしてる、寝てただけなのにお腹は空いていい匂いだけでちょっとテンションが上がった。

わくわくしながら下りていくとすでにテーブルには昼ご飯の準備がされていた。焼きそばだ。これは好きなやつだ。

匂いにそそられ、すぐに席に着いて手を合わせた。

今日の昼は父さんに母さん、それと帰って来た兄貴と、2年ぶりの家族全員が揃った。みんなで囲う昼ご飯はなんだか…もぞってするけど。

「拓海、急に帰って来てどうした?」

「いや、別に何もないけど…やっと休みが取れたからなんとなく」

「仕事忙しいのか?」

「あぁ、結構ね。毎日ぼちぼち」

父さんと兄貴が話してる。

兄貴の仕事は…なんだっけ?お年寄りとなんか、お世話するんだっけ?まぁたぶんそんな感じだったと思うけど詳しく聞いたことないからよくわからないな。とりあえず毎日大変らしい。社会人ってやつはみんな忙しいのかな。

「碧斗は最近何してんの?」

特に会話に参加してなかったオレはもくもくと焼きそばを頬張っていた。目の前に座る兄貴がざっくりした質問をしてくるからざっくりした答えで返した。

「別に、何もしてないけど」

「なんだよ、それ。なんかないのか?今ハマってるものとか」

「ないよ、特に」

ただひたすらに焼きそばを食べる、食べるしかないって感じで。

兄貴と話すのは嫌いじゃないけど、イマイチどんな会話をしたらいいかわからない。13歳も離れてると趣味も好みも全然違うし、オレが小学校に上がる頃には社会人だった兄貴はもうこの家を出て行ってたし。

「…じゃあ兄ちゃんに聞きたい事とかないの?」

「…なんで帰って来たの?」

「実家に帰ってきたらダメなのか!」

精一杯ひねり出した質問だったのに、母さんにもそうゆうこと言わない!って怒られた。そんなつもりで言ったんじゃないのに。

やっぱり焼きそばを食べるしかなかった。

「そーいえば拓海、お隣のあさひちゃんには会った?」

その言葉にちょっとドキッとした。口いっぱいに入れた焼きそばが喉に詰まるかと思った。

「さっき行ったら今日仕事だっていなかったんだよ」

「あら、そう。すっかり大人になってね、キレイになったのよ」

…そんなのわざわざ言わなくてもオレだって知ってるっつの!

余計なこと言わなくていいのにと思いながら母さんから麦茶の入ったコップを受け取った。

「今日の夜、また行ってみるよ。久しぶりにに会いたいし」
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