上 下
2 / 36
1章 噂の悪女が妻になりました

2

しおりを挟む
 

 扉が壊れた事で引き篭もれなくなり、マリアも甲斐甲斐しく世話をするからか、彼女は大人しく食事を摂ってくれる様になった。

 それでも会話をしてくれる素振りはなく、一応毎日部屋に通ってはいるが何を話しかけてもどこか一点を見つめて返事はない。俺もそれ以上は踏み込めなかった。

 それが1週間続き、彼女に会いに行くことが憂鬱になって重いため息を吐きながら彼女の部屋の前に着くと扉が開いていた。窓を開けているのだろうか、風がさらりと頬を撫でる。

「失礼ね。入室の許可も取らずに入ってくるなんて」

 窓の前で凛とした姿勢の彼女が立っていた。髪は結い上げられ、ずっと寝衣だった服は今日はドレスだ。さすが都会の令嬢だ。男でも分かる見事な代物である。

「…失礼、しました」

 何故か目のやり場に困って視線を落としながら入室して扉を閉める。と言ってもまだ修復出来ていないので閉まりきらないが。

「もう起き上がっても平気なのですか」
「ええ、まあ」

 何とも無愛想な返しだった。普通、それに続く言葉といえばご心配おかけして申し訳ございませんでした、とかだろうがそんなものはない。むしろこうして初めてに近い会話が出来ている事に今は満足するしかないらしい。

「これからどうされるおつもりですか」
「………」

 さて、ここからが本題だ。両親は彼女が危うく自死を選ぼうとしていた事に心を痛めいていて、ここにくる前も何とかしてやってくれと言われた。だが彼女が俺の事を拒否する以上、何もしてやれない。最初に彼女は言った。結婚なんてしない、と。

「結婚はしません」

 やはり意志は固い様だ。これからの生活よりも誇りを守りたいらしい。馬鹿げてる、そう言いたい気持ちをぐっと堪える。しょうがないのだ。文字通り死ぬ程・・・嫌なのだろうから。

「それは困ります。君と結婚する様国から言われているのです。背けば何をされるか分からない。
 見ての通り、うちは貧乏です。この領地はあまり作物が育たず、昔から苦行を強いられてきました。色々な事業にも手を出してきましたがそれも上手くいかず徐々に領地は削られて、領民もこの地を愛してくれる村の人達と我々だけになってしまいました」

 何とか取られないでいるのは、先述の通りウィリアムズ家の始まりが元々王家の血筋と関係していたからだ。王家を守る法律と、何とか毎年国から要求されるノルマをこなしているおかげで何とか現状維持してきた。

「不服だとは思いますが、どうかお願い出来ませんか」

 そう言った瞬間彼女が俯いた。そこからまた無言になってしまった彼女に俺は頭を掻いてため息を吐く。全く、こんな少女に運命を握らされている自分が情けない。そこまで嫌だと言うのならこうするしかない。

「…分かった」

 我儘を通す相手に丁寧な言葉など必要ない。俺は砕けた喋り方をする事にした。

「別に強制はしない。ただし、この屋敷にはしばらく居てもらう。ここを守る為にも君と結婚したというポーズは必要だからね。あっちから何も音沙汰がなくなったら、君の好きな様にしたら良い。後は何とか適当に理由を付けるよ」
「…いいの?」

 きょとんとした表情を浮かべる。初めて年相応の幼い顔を見た気がした。

「高貴な方達は飽きやすいからな。そう時間はかからないだろう。それに俺の両親が君の事を大変心配してる。そんな中出て行けとも言えないし、そもそもどこか頼る所はあるのか?」

 彼女がまた目を逸らした。

「…全く君は。どうするつもりだったんだ?」

 俺はとうとう耐えられなくなって思わず嫌味をこぼすが返事は返ってこなかった。お得意のだんまりらしい。

「まあ、いい。ここで生活するにあたって伝えておきたい事がある。今君に専属のメイドをお願いしているが、ここは基本的に自分の事は自分でするのがルールだ。それにさっき言った通り貴族とは名ばかりでお金はない。前と同じ様な生活を求められても叶えてやれないので、そのつもりで」
「…分かってるわ」

 意外にもこれには返事が返ってきて、拍子抜けする。贅沢を好み、使用人にも独裁に近い状態の扱いだったと聞いていたがやけに理解も良い。それでも先が思いやられるのには変わりはないのだが。

 結局また無言になってしまった彼女から逃げる様に、その部屋を後にした。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「それで?いつ見せてくれんだい」
「え?」

 久々の村に降りての作業。来年の種まきに向けて乾燥させる作業を行っていると、村長のレイスさんに話しかけられた。今年で65歳になる、俺にとって第二の父親の様な人だ。

「え?じゃねえよおめえ。嫁さんだよ。ようやくこっちに顔出したかと思ったら、何も言わずに作業し始めやがって」

 そう小突かれてようやく合点がいった。しまった、何も考えずに降りてきてしまった。

「あ、ええと…」
「やっと俺たちの領主様が所帯を持ったんだ。なのにお相手の素性を聞いても教えてくれねえし、知ってるのは都会からきたお嬢様ってだけ。あんな立派な馬車で来たんだ。ありゃあ城が所有してる馬車だろう?かなりの家柄だとみんな噂してるぞ」

 さすがに結婚する事は隠せない為事前にみんなに伝えたが、相手は誰であるのかという事は言えなかった。何せ突然決まった話であったし、彼らですら知っている程の噂を持った人物なのだ。受け入れる準備を理由にはぐらかしている内に、彼女がやって来て、そして今日になってしまった。

「それが環境が変わったからか、体調を崩してしまってね。それで俺も看病してたんだよ」
「ああ?大丈夫か。お前こんな所で作業してる場合じゃねえだろ」
「もう大分回復したから。もっと元気になってから、皆んなにお披露目するよ」
「…そうか?本当は綺麗な嫁さんだから、独り占めしたいだなんて理由じゃねえだろうな」

 レイスさんのまさかの発言に思わず手が止まる。まさか他の人達にももそう思われているのだろうか。

「違うよ。ほら、俺も早く奥さんの所に行きたいから、さっさと終わらせよう」
「へえ、奥さんねえ。はいはい」

 にやにやしながらレイスさんが作業に戻る。きっとこの場を離れたらまた別の人に捕まってしまうだろう。

 俺たちは領主領民一丸となってこの土地を守ってきた。その為、もうみんな家族の様なものだ。彼らにはいつかは本当に彼女を紹介しなければならないだろう。建前上、妻なのだから。それまでに、あの頑なな性格を少しでも軟化させておかなければ。

 結局場所を移動しても色々な人に揶揄われたり、せっつかれたりと散々な目にあい、これは早く会わせなければ仕事も出来ないと知った俺は、げっそりとした面持ちで屋敷へと帰った。

「あら、お帰り。坊ちゃん。随分とお疲れの様ですね」

 マリアが大量の洗濯物を入れた籠を持って現れる。

「…まあね。それにしてもなんだよこれ。屋敷中のシーツを洗ったのか?」
「ああ、お嬢様がシーツが毎日替わらないのが気になると言われるので、もうまとめて洗っちゃおうかと」
「…何だって?」

 顔色が変わった俺にマリアがハッとする。しかしもう遅い。慌てて何かを言うマリアを置いて、俺はすぐに彼女の部屋へ向かった。

 あの事件からもう二週間が経った。壊した扉も直ったし、彼女が再びおかしな行動に出るような事もない。ただ。

「ミラ嬢、話がある」
「どうぞ」

 了承を得て部屋に入る。3日前彼女専属のメイドを雇った。名前はニイナで、マリアの息子から紹介してもらった彼女と同じくらいの歳の子だ。そのニイナの給仕で、彼女は優雅にお茶を嗜んでいた。

 やはり俺の言った事を全く分かってくれていない様だ。結局この一週間、彼女はこの部屋から一歩も出ていなかった。

「何の用かしら」
「前と同じ様な生活はできないと言った時に君は分かっていると言ったね」
「ええ。だから持ってきた物でやりくりしているわよ」
「じゃあ、自分でシーツを洗えばいいじゃないか。お茶を飲みたいなら、自分で淹れればいいじゃないか」

 俺の言いたい事が分かったのか、彼女の表情が変わった。

「マリアとかいうメイドに何か気になる事はないかと聞かれたから、シーツの事を答えただけよ。このお茶だってニイナが欲しいか聞いてきたから、了承しただけ。してくれなんて頼んでいないわ」
「あくまでも彼女たちが勝手にしている事だと?」

 彼女の手が止まる。明らかに怪訝そうにこちらを見た。

「…あなた本当に領主?随分と偏った思考をしているのね。何もそこまで言ってないじゃない」
「ただ世話をされてきただけの人間に言われたくない。君が何もしないからだよ。彼女達が気遣うのは」

 恐らくうちの事情は理解してくれているのだろう。だが今まで世話をされるのが当たり前すぎて、彼女には自主性がないのだ。しかもここの屋敷の人達は優しいからすぐにやってあげてしまう。自分の大切な人達を今までの使用人の様に扱って欲しくなかった。

「何も全てしろとは言わない。俺だってやってもらっている事は山ほどある。給仕するのが彼らの仕事だからね。でも最初から何もせずに彼らを当てにするのはやめてくれ」
「当てになんてしてないわ!」
「してるんだよ。今までやってもらうのが当たり前だったから分からないんだ。分からなければ、聞けばいい。俺達はそうやって助け合ってきた。これ以上人員を増やす事は出来ないんだ。彼らの仕事を増やさないで欲しい」
「………」

 彼女が無言で立ち上がった。

「多分、マリアはリネン室にいると思う」

 俺の言葉を聞いた後、彼女はそのまま部屋を後にした。てっきりもっと反抗されるかと思った。表情は随分と反抗的だったが。

「ロ、ローガン様…私…何か余計な事を」

 いつの間にかニイナが蒼い顔をしていた。

「違うよニイナ。君はメイドとして当たり前の事をしただけだ」

 ニイナはここに来る前は彼女の様なお金持ちの屋敷で働いていたらしい。ここに来てまだ3日だが、何度もカルチャーショックを受けている様だ。それくらい、ここは異例づくしなのだ。

「でも彼女はいずれここを出るんだ。その大変さを分かってもらわないと」

 そうだ、彼女は何も分かっていない。こんな何も出来ない状態で頼れる所もないのに一人で生きて行けるわけがない。その為に厳しくしているのに。

「…………」

 そこまで考えて、俺は小さくため息を吐いた。この間まで彼女の自殺未遂に責任を感じていたというのに。もっと冷静になれ、いい大人が。

「…ローガン様?」
「…あ、すまない。ニイナ。君を雇ったのは、彼女と歳の近い子が近くにいる方がいいと思ったからなんだ。今まで通り世話をしてくれていい。ただ、全てをやるのではなく教えてあげて欲しい。彼女は1人で生きていく力が必要なんだ。君とはまだ短い間柄だけど本当に良くやってくれている。あのマリアが褒めるほどにね」

 ニイナが複雑そうに微笑む。後は、彼女次第だ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家出した伯爵令嬢【完結済】

弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。 番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています 6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

愛する貴方の愛する彼女の愛する人から愛されています

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「ユスティーナ様、ごめんなさい。今日はレナードとお茶をしたい気分だからお借りしますね」 先に彼とお茶の約束していたのは私なのに……。 「ジュディットがどうしても二人きりが良いと聞かなくてな」「すまない」貴方はそう言って、婚約者の私ではなく、何時も彼女を優先させる。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 公爵令嬢のユスティーナには愛する婚約者の第二王子であるレナードがいる。 だがレナードには、恋慕する女性がいた。その女性は侯爵令嬢のジュディット。絶世の美女と呼ばれている彼女は、彼の兄である王太子のヴォルフラムの婚約者だった。 そんなジュディットは、事ある事にレナードの元を訪れてはユスティーナとレナードとの仲を邪魔してくる。だがレナードは彼女を諌めるどころか、彼女を庇い彼女を何時も優先させる。例えユスティーナがレナードと先に約束をしていたとしても、ジュディットが一言言えば彼は彼女の言いなりだ。だがそんなジュディットは、実は自分の婚約者のヴォルフラムにぞっこんだった。だがしかし、ヴォルフラムはジュディットに全く関心がないようで、相手にされていない。どうやらヴォルフラムにも別に想う女性がいるようで……。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】公女が死んだ、その後のこと

杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】 「お母様……」 冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。 古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。 「言いつけを、守ります」 最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。 こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。 そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。 「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」 「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」 「くっ……、な、ならば蘇生させ」 「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」 「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」 「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」 「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」 「まっ、待て!話を」 「嫌ぁ〜!」 「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」 「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」 「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」 「くっ……!」 「なっ、譲位せよだと!?」 「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」 「おのれ、謀りおったか!」 「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」 ◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。 ◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。 ◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった? ◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。 ◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。 ◆この作品は小説家になろうでも公開します。 ◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

今さら後悔しても知りません 婚約者は浮気相手に夢中なようなので消えてさしあげます

神崎 ルナ
恋愛
旧題:長年の婚約者は政略結婚の私より、恋愛結婚をしたい相手がいるようなので、消えてあげようと思います。 【奨励賞頂きましたっ( ゚Д゚) ありがとうございます(人''▽`)】 コッペリア・マドルーク公爵令嬢は、王太子アレンの婚約者として良好な関係を維持してきたと思っていた。  だが、ある時アレンとマリアの会話を聞いてしまう。 「あんな堅苦しい女性は苦手だ。もし許されるのであれば、君を王太子妃にしたかった」  マリア・ダグラス男爵令嬢は下級貴族であり、王太子と婚約などできるはずもない。 (そう。そんなに彼女が良かったの)  長年に渡る王太子妃教育を耐えてきた彼女がそう決意を固めるのも早かった。  何故なら、彼らは将来自分達の子を王に据え、更にはコッペリアに公務を押し付け、自分達だけ遊び惚けていようとしているようだったから。 (私は都合のいい道具なの?)  絶望したコッペリアは毒薬を入手しようと、お忍びでとある店を探す。  侍女達が話していたのはここだろうか?  店に入ると老婆が迎えてくれ、コッペリアに何が入用か、と尋ねてきた。  コッペリアが正直に全て話すと、 「今のあんたにぴったりの物がある」  渡されたのは、小瓶に入った液状の薬。 「体を休める薬だよ。ん? 毒じゃないのかって? まあ、似たようなものだね。これを飲んだらあんたは眠る。ただし」  そこで老婆は言葉を切った。 「目覚めるには条件がある。それを満たすのは並大抵のことじゃ出来ないよ。下手をすれば永遠に眠ることになる。それでもいいのかい?」  コッペリアは深く頷いた。  薬を飲んだコッペリアは眠りについた。  そして――。  アレン王子と向かい合うコッペリア(?)がいた。 「は? 書類の整理を手伝え? お断り致しますわ」 ※お読み頂きありがとうございます(人''▽`) hotランキング、全ての小説、恋愛小説ランキングにて1位をいただきました( ゚Д゚)  (2023.2.3)  ありがとうございますっm(__)m ジャンピング土下座×1000000 ※お読みくださり有難うございました(人''▽`) 完結しました(^▽^)

今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~

コトミ
恋愛
 結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。  そしてその飛び出した先で出会った人とは? (できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです) hotランキング1位入りしました。ありがとうございます

処理中です...