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337年4月4-2

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 この世界に無理矢理合わせる必要はないが、夜着は駄目だ。
 マクシミリアンに服を用意するように言うと困っている。
「クリスティアナの物では小さいだろう。メイドから借りるしかないが」
「男性の使用人の服をお借りできますか?」

「なぜそんなにスカートが嫌いなんだ」
「短時間ならいいけれど、長いスカートは動きにくいし短いのは寒い。私はパンツの方が慣れているので」
「イユリスでは、女性は滅多にパンツをはかないんだ」
「そうですか・・・じゃあ、私は男性ということにしましょう」

「は?」
「対外的に、女性が側をうろつくというのはよくないでしょう。女はパンツをはかないという常識があるなら、私が男性の服を着ていれば男に見られると思います」
 髪はちょうど切ろうと思っていたし、いつもよりもっと短く切った方がいいですかねなどと言う。何て事を。

「あと、髪の色も抜いた方がいいのではないかと思うのですが。黒髪というのは珍しいようだし、『王弟疑惑』で黒髪がかなり悪印象だから、無駄に注目を浴びたくない。眼の色までは変えられないけれど、髪は脱色する方法はありますよね?」
「しなくていい。してはいけない。美しい髪なんだ」
「うつくしい」
 なぜ彼女は自分の事となると鼻で笑うのだろう。とにかくともやは理屈で納得させないといけない。

「髪の色だけを変えても無駄だ。顔立ちが違うし、私の周囲に人が増えればそれだけで注目はされる。そうであれば人と違う所があった方が、人は勝手に納得するものだ。髪はそのまま触るな。むしろ伸ばした方がいい」
「伸ばすんですか」
「・・・伸ばして結んだ方が目立たないのではないか」
「そうかもしれませんね。髪が長い男性もいるみたいだし、そうします」
 シルヴィオを見て言った。

「それで問題の服ですが、あなたのは無理か・・・シルヴィオさんの少年期の服は残っていませんか?」
「あると思いますよ」
 シルヴィオは笑いを堪えている。そして彼女は満面の笑みを浮かべた。
「貸してください。できれば手を加えることを許して下さい」
「差し上げます」
「ありがとうございます」

 どうしてそんな嬉しそうな顔をシルヴィオに向けるのか。私は滅多に見たことがない。
 ともやが私を見る目は、何というか、もっと母性的というか成長を見守る視線で、もっと単純な、強い気持ちは向けてくれない。

 ともやは考えすぎる。対外的に女ではない方がいいだと? 女であってくれなければ困るのだ。
 あのまま日本にいれば、ケーキバイキングに行っていたら。
 靴を脱がし素足を握り・・・止めよう。実際には起こらない妄想だ。
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