終生飼育は原則ですから

被保護編 343年

343年8月2

　来たな。待っていたのは俺だけかもしれないけどな。
　姫さんは態度に出さない。
　戻りたいとも考えないようにしてるんだろ。自分が始めたことだ。
　来るなんて考えもしていない。

　あんたが考えるよりも大事なんだ。
　人の一生、国の行く先を変える人間なんだよ、姫さんは。

　だけどこういう暮らしをしたかったんだろうな。ドレスとかパーティとか、金とか、本当はどうでもいい。こうやって田舎で落ち着いて暮らしたかったんだろう。ずっと言っていた。

　今はまだ体が治っていないから何もできないが、秋か、来年になったら庭や畑を始めるんだろう。
　それは俺も手伝うが、まだ人手は増えそうだ。

　姫さんはどんな反応をするのか。追い返すかもしれない。王子様はどう説得するのか。
　会った瞬間抱き合うくらいなら楽なのにな。それは想像できない。
　いやあるかな。
　姫さんも必要性だけで男を替えることはできないとわかっただろう。

　うまくいってほしいと思っている。
　このまま二人で生きていくのもいいが。
　俺も幸せだった。こんなにのんびり過ごせたことはない。
　姫さんの作った飯を食べ、掃除や洗濯を手伝い、家畜の世話をする。短い間だけだとはわかっていたが、幸せだった。

　これから、もっと姫さんの笑顔を見られるなら、もっといい。