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被保護編 339年
339年11月6
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耐えられない。無理だ。本当に無理だ。
あの時を幾度繰り返したか。何度繰り返しても彼女を説得できない。
「大丈夫。ひとりで生きられる。あなたのおかげで」
あなたを一人にするつもりはなかった。何があっても離さないし、ついて行くつもりだった。
あなたに私が必要ないのはわかっている。だが必要だと言えば私の側にいてくれると思っていた。
「私は迷った子猫を飼ったんじゃなくて、野生動物を保護した。本来の環境に戻さないと。馴れ合ってはいけない。私は構いすぎた。反省している」
ともやらしい。育てはするが甘やかさない。私は安心していた。拾われて、面倒を見てもらい、守られ、そして彼女には珍しく甘やかされた。私が幾度となく約束を破っても許してくれた。受け入れてくれた。一人で眠る方法さえ忘れるほど。
「私は元々いなかったはずの人間だから、前に戻っただけだよ。レイサス、あなたのことは信頼している。これからをよろしくね」
本当にともやは。事実を伝え信頼を伝え励ます。ともやの想定に達しなければ自分の責任。必死でやるしかない。ともやのいない世界で。ともやが他の男のものになっているのに。
腹の内から狼にでも齧られている気がする。今この瞬間、あるいは次の瞬間。特に夜は辛い。
耐え難い。
ともやが一度だけ着たドレスを握る。あの時は幸せだった。あの時は私のものだった。
ともやは病床に伏してるという。いつもの頭痛と、そして今までの疲れだろう。
ゆっくり休めているのだろうか。ともやは体調が悪いときは一人になりたがる。それを理解してくれるだろうか。
たとえ戦争が起こっても、ともやを取り戻したい。
だがそこで取り戻したともやは、決して私を許さない。
どうやっても元には戻らない。何をやっても。
元のともやでなくともいい。私を見なくてもいいから側に。
ともやの望み通り一人にさせてもいい。他の男が側にいなければ。
幾度となく同じ事を考え続ける。眠れない。
酒を飲んでも酔えず、眠れば悪夢を見る。
立てなくなるほど剣を振っても、横になると眠れない。
シルヴィオは女を勧めた。あれは本当に即物的だ。ともやと似ている。
無理だ。暴力的な空しさに襲われるだけだ。破壊的な。自分とこの国と、ソファリスを壊してしまいたい。国の為にともやを失った。
壊す事はできない。彼女が一番避けようとした事態だ。その為にソファリスに残った。
レンツォーリは、彼が望んだようにソファリスに遣った。彼女の近辺に潜り込むだろう。
羨んでいる。私もそうしたい。せめて見ていたい。だが見ているだけでは無理だ。特に他の男といるのなら。
結婚しているはずだった。なぜ私は彼女の服だけを握り締めているのだろう。
あの時を幾度繰り返したか。何度繰り返しても彼女を説得できない。
「大丈夫。ひとりで生きられる。あなたのおかげで」
あなたを一人にするつもりはなかった。何があっても離さないし、ついて行くつもりだった。
あなたに私が必要ないのはわかっている。だが必要だと言えば私の側にいてくれると思っていた。
「私は迷った子猫を飼ったんじゃなくて、野生動物を保護した。本来の環境に戻さないと。馴れ合ってはいけない。私は構いすぎた。反省している」
ともやらしい。育てはするが甘やかさない。私は安心していた。拾われて、面倒を見てもらい、守られ、そして彼女には珍しく甘やかされた。私が幾度となく約束を破っても許してくれた。受け入れてくれた。一人で眠る方法さえ忘れるほど。
「私は元々いなかったはずの人間だから、前に戻っただけだよ。レイサス、あなたのことは信頼している。これからをよろしくね」
本当にともやは。事実を伝え信頼を伝え励ます。ともやの想定に達しなければ自分の責任。必死でやるしかない。ともやのいない世界で。ともやが他の男のものになっているのに。
腹の内から狼にでも齧られている気がする。今この瞬間、あるいは次の瞬間。特に夜は辛い。
耐え難い。
ともやが一度だけ着たドレスを握る。あの時は幸せだった。あの時は私のものだった。
ともやは病床に伏してるという。いつもの頭痛と、そして今までの疲れだろう。
ゆっくり休めているのだろうか。ともやは体調が悪いときは一人になりたがる。それを理解してくれるだろうか。
たとえ戦争が起こっても、ともやを取り戻したい。
だがそこで取り戻したともやは、決して私を許さない。
どうやっても元には戻らない。何をやっても。
元のともやでなくともいい。私を見なくてもいいから側に。
ともやの望み通り一人にさせてもいい。他の男が側にいなければ。
幾度となく同じ事を考え続ける。眠れない。
酒を飲んでも酔えず、眠れば悪夢を見る。
立てなくなるほど剣を振っても、横になると眠れない。
シルヴィオは女を勧めた。あれは本当に即物的だ。ともやと似ている。
無理だ。暴力的な空しさに襲われるだけだ。破壊的な。自分とこの国と、ソファリスを壊してしまいたい。国の為にともやを失った。
壊す事はできない。彼女が一番避けようとした事態だ。その為にソファリスに残った。
レンツォーリは、彼が望んだようにソファリスに遣った。彼女の近辺に潜り込むだろう。
羨んでいる。私もそうしたい。せめて見ていたい。だが見ているだけでは無理だ。特に他の男といるのなら。
結婚しているはずだった。なぜ私は彼女の服だけを握り締めているのだろう。
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