終生飼育は原則ですから

乃浦

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被保護編 339年

339年11月4-2

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 食べ終えて食器がなくなると、ソウシュウが私を膝の上に乗せた。
 この人が私にさわるのは初めてだ。ダンスのあのときだけ近かった。
 キスか。抑制されている。印象通り。

「具合が悪いならまだ待つ」
 思いやり深いけど、数日延びたところで変わらないか。
「いえ。大丈夫です」
 立ち上がって自分でベッドに行った。いやだ。けれどこれは仕事だ。
 なんで私はこの世界に来ちゃったんだろう。

 夜着にガウンなのですぐ脱げる。脱ぐ前に蝋燭を消したい。
 ソウシュウが上を脱いで上がった。中年太りとは無縁だ。馬車じゃなく馬を使えば体形は保てるのか。
 蝋燭に伸ばしている私の手をつかんで蝋燭から離す。
「消してください」
 それだけは頼みたい。
 少し笑って消してくれた。

 首筋に触れる髪の毛の感触、さわり方、におい、違う。やることは同じなのに違う。そういうものなのか。
 暗い中、さらに目を閉じて考える。なぜ感じ方が違うのか。誰かは、こんな暗闇じゃ見えない。
 何が違う? 特別何も。
 レイサスじゃないと思うからじゃないか。レイサスだと思い込めばもっと違うはず。それも失礼な話だ。

 ソウシュウはとりあえずは満足できたみたい。
 今朝からまたお茶を飲んでいるけど、六日間空いている。大丈夫だろうか。

 私の頭を撫で、背中を撫で、子供を寝かしつけるように私の背中を叩いて、自分が眠った。私は寝ていたから眠くない。
 優しい人だと思う。今は。
 けれど人の本質なんてわからない。

 ベッドから抜けてガウンを着て、ソウシュウの部屋に行く。ドアで繋がっている。まさに正室のための部屋から出た。
 火を落とした暖炉の前に座って膝を抱えた。

 私はレイサスが好きだったんだ。だから抱いてもらってうれしくて拒否できなかった。だからいつもあんなに申し訳なかった。好きだったから幸せになってもらいたかった。

 私の病理だな。好きな人にはいいところを見せたいし、申し訳なくてさらけ出せない。
 失ってから気づくってかっこつけすぎか。自分で壊してから後悔する。
 もう戻らない。

 振られるより振る方がダメージが少ないし、いいんじゃない。
 だけどそれなら振られた方がよかった。レイサスには仕事と立場がある。振られるまでいればよかった。

 やめよう。考えても無駄だ。レイサスには自分の国があり、私はここで生きていかなくてはいけない。
 前より条件はいい。十年たったら引退できる。
 十年か。耐えられるかな。いや、その前に向こうが飽きる。

 どうしても戻る気になれなかったので、ソウシュウのベッドから毛布を借りて、暖炉前で寝た。床が固い。
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