終生飼育は原則ですから

被保護編 339年

339年10月9-2

　叔兄は女に冷たい。
　姻戚関係を作るため、子を作るため、欲望を発散するためのただの道具だと思っている。
　妾の事もコウセンの為、姻戚関係の為の道具で、たまたま思ったより賢そうだと教える気になった。
　失敗をしたり、期待外れであれば簡単に見捨てられる。叔兄にはそれでも寄ってくる者はいる。その中から必要な者を選び、必要無くなれば捨てればいい。

　叔兄が目を掛けた者はいる。だがあんな風には見ないはずだ。
　オーサーはいつものように話しているだけだ。謙ったり持ち上げたりせず、丁寧な言葉遣いだが可能な限り簡潔に。
　オーサーはいつもそれで人を引き入れる。魅了すると言った方がいいかもしれない。
　叔兄を魅了することは止めた方がいい。火種を生む。

　レイサス様は叔兄を警戒している。無論するべきだ。
　だが肝心のオーサーは、この国の権力者としての、自分のやりたい事を阻むかもしれない相手としての警戒しかしていない。なぜオーサーはこんなに男を警戒しないのだろう。

　すまないけれど、妾には何も言えない。
　忠告した事が漏れればこの立場を失う。それにオーサーがこの国に残ってくれれば・・・。

　来訪の目的であるヘラート村について話していない二人は、まだ出発できない。
　レイサス様はもうご自分の部屋を使っていない。
　限界が近い。

　叔兄は、どうされるのだろうか。